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歌詞で同じ言葉を使い回す手法フェチ村の暫定村長やります。【andymori】【ナンバガ】【キリンジ】👌 

タイトルそのまま

皆さんも是非こういうの発見して興奮しましょう。

例1: andymoriのアルバム「ファンファーレと熱狂」の作詞


さっそく実例を出してみます。

andymoriというバンドの2ndアルバム「ファンファーレと熱狂」(2010)はご存知でしょうか。結構な数の音楽好きはチェックしてそう。Apple Musicでの説明はこんな感じ。

“和製リバティーンズ” との呼び名も高い、3人組ガレージ・ロック・バンド、andymori。「iTunes Japan Sound of 2010」にも選出された彼らの2ndアルバムは、前作同様に超ハイテンションで振り切れたエネルギーを放出する速攻ロックンロール・ナンバーの連発だ。ミディアム・テンポのアコースティック・ナンバー “1984” でしっとりかつ荘厳にアルバムの幕を開けると、機関銃のようなライミングでたたみかける “CITY LIGHTS”、ファンキーなベース・ラインに切れ味の鋭いギターが交錯する “ビューティフルセレブリティー” など、怒濤のバンド・アンサンブルで聴き手のテンションを一気にかっさらっていく。ギター&ボーカル小山田が手がける、森羅万象とともに世界各地を旅していくような独特の詩世界も、サウンドのドライブ感を一層かき立てていて痛快。牧歌的で郷愁的なクロージング・ナンバー “グロリアス軽トラ” まで一気に疾走していく全13曲は、ジェットコースターのような勢いに満ちている。

アルバム中2曲目の「CITY LIGHTS」にこんな歌詞が出てくる。


人身事故が起こったよ、迷惑そうな女の子
テレビのスクランブル大画面、元気を出せっていってるじゃないか

次に9曲目の「ナツメグ」の歌詞

胸が痛んで思い出した
夏草を探していた渋谷スクランブル
どこにもないどこにもない夏は巡っていく
人身事故で遅れそうだよ

「人身事故」と「スクランブル」が被ってる。
さらに11曲目の「オレンジトレイン」の歌詞はこうだ。

人身事故で君に会えない
乾いた空に響くアナウンス

同じアルバム内だけで、13曲中3曲に「人身事故」という単語が含まれている。人身事故って単語が入ってる曲ってそうそう存在しないのですが。こういうのってアルバム内の世界観を作り上げる上でとても効果的なんだと思います。

このアルバム内で使われがちなフレーズはまだある。ラス前の12曲目「SAWADEECLAP YOUR HANDS」という曲は何度もこのタイトルを歌う。ていうかそもそも「サワディークラップユアハンズ」ってなんなのか分からず最初はひたすら意味不明だった。タイ語の挨拶と「Clap your hands」を組み合わせた造語なんだろうと思うが、こんな意味不明な言葉が、7曲目の「Transit In Thailand」に登場している。しかもこっちの方が、サビで連呼しているので、アルバムを聴き始めた頃は、こっちが「SAWADEECLAP YOUR HANDS」だと思ってた。

アルバムタイトルの単語2つもそうだ。ファンファーレは2つの曲で登場する。1曲目の「1984」はアルバムタイトルそのままがサビで歌われる。そして10曲目の「バグダッドのボディーカウント」でも登場する。

「熱狂」は3つの曲で登場する。「1984」と3曲目の「ずっとグルーピー」と「Transit In Thailand」だ。

目立つのはこの辺り。他にも「豚」「猿」「太陽」「空」「風」とか。ここら辺までくるとだんだんとこのアルバム特有とまでは言えなくなってくるが。

こんな感じで紹介した言葉は、他のandymoriのアルバムには全然出てきていない。同じ言葉をアルバム内にちりばめることに意識的なんだと思う。

例2: 向井秀徳の作詞


向井秀徳は別のアルバムにまたがっても同じ言葉をぶち込んでくる。これに関しては向井秀徳を知っている人ならかなり思い当たる節があるだろう。

向井秀徳というのは90年代後半から活動し、2002年にあっさり解散してしまった伝説的バンドNUMBER GIRLのフロントマンであり、その後ZAZEN BOYSを率いて今でも活動中だ。

彼の作詞の場合は例が多すぎてそれだけで1つ記事をまとめるべきかもしれない。

向井秀徳みの強いフレーズをどんどん紹介していこう。

まず「冷凍都市」そんなの辞書に載ってる?とか聴くのは愚行だ。冷凍都市っていったら冷凍都市だ。たぶん初出はメジャー2ndアルバム「SAPPUKEI」(2000)の1曲目「Brutal Number Girl」だ。

我々は冷凍都市の
攻撃を酒飲んでかわす

冷凍都市除けにはアルコールが効くようだ。

さらにメジャー3rdアルバム「NUM-HEAVYMETALLIC」(2002)収録の先行シングル「NUM-AMI-DABUTZ」にも「冷凍都市」が出現する。

現代。冷凍都市に住む
妄想人類諸君に告ぐ

ちなみに「冷凍都市」だけでは無く、「焦燥都市」(Eight Beater)、「妄想都市」(裸足の季節など)と、都市バリエーションも豊富だ。

次は「6本の狂ったハガネの振動」。このフレーズは確かにカッコいい。使いまわしたくなりそう。「INAZAWA CHAINSAW」や「BRUTAL MAN」などで登場するし、ザゼンボーイズの方ではそのままタイトルに採用された曲がある。

「繰り返される諸行無常 蘇る性的衝動 冷凍都市の暮らし あいつ姿くらまし」
これもよく出てくる。ここまで来ると詠唱だ。

「ロックトランスフォームド状態におけるフラッシュバック現象」。これも使いまわされている。論文タイトルみたいだ。

例3: キリンジの作詞

最後は2021年度私が最も贔屓しているキリンジです。キリンジは堀込高樹・泰行兄弟でどちらもそれぞれ作詞作曲をするという体制でした。キリンジはちゃんと辞書に載っている難しい語彙を使いがちです。それでいて被ったりしてます。時には兄弟間の曲で。

まずは「誘蛾灯」。1stアルバムから「汗染みは淡いブルース」
中盤にこんな歌詞が

アルミニウムの顔色の女の肩はなだらか
誘蛾灯のようなその眼は
全裸のトロフィーをなだめる
気抜けの体でクロールをする

誘蛾灯とか単語以前に、何いってるか全然わかりません。

そして「3」からシングル曲の「君の胸に抱かれたい」

旅の途中で
僕らはみんな迷子になって
夢の島まであとどのくらい?
街はタールの闇におおわれて
誘蛾灯を頼りに

よくわかんないけどロマンチックさは感じます。分かんないけど!

上2つは兄高樹氏の作詞。さすが訳分からんわけですね。
でも弟泰行氏の作詞でも登場します。それはアルバム「3」で「君の胸に抱かれたい」に続く「あの世で罰を受けるほど」です。「兄貴が使ってる意味不な言葉使ったろ!」みたいなこと思ったのでしょうか。

それについてこの次の、高樹氏がメインボーカルを取っちゃってる兄ソン(俗に言う兄貴成分強め曲)である、「メスとコスメ」で言及されるわけです。

当てつけのつもりなのかい?

完璧な裏の流れがありました。また「3」が名盤である理由が補強されました。


さて、高樹氏が好きなフレーズは結構ありそうです。使い回しが確認できたのは、「タール」「甘やかな身体」「逃げ水」「小糠雨」「切り花」「逃げ水」「かりそめの(に)馴れ初め」「夕映え」「ギアをハイ」「玩具」「濃淡」「耳(を)うずめて」「美酒」など…

泰行氏の作詞では、「グラフィティ」「ハレルヤ」「感嘆符を放つ」「ハイディホー」「ホライゾン」「フリーウェイ」など…

最後に、兄弟揃って同じ言葉を使っているパターンをいくつか紹介します。

兄作「甘やかな身体」「Drive me crazy」と弟作「エイリアンズ」とで共通して使われているのが「パイパス」

弟作「銀砂子のピンボール」と兄作「悪玉」とで共通フレーズが「礫(つぶて)」。

弟作「むすんでひらいて」「Lullaby」と兄作「地を這う者に翼はいらぬ」の共通フレーズは「ララバイ」

兄作「汗染みは淡いブルース」と弟作「サイレンの歌」の共通フレーズは「電磁波」

兄作「まぶしがりや」と弟作「銅鉄の馬」の共通フレーズは「サーチライト」

最後はただのキリンジフリークでした。飽きたのでここら辺で村長辞任します。以上でーす。

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