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思考の違い

男の人と女の人では、
脳の働きがちがうのだと感じた出来事。

とある会社で働いていた時、
上司がトランスジェンダーの人だった。
LGBTで言うと、Tです。

いわゆる見た目は女性だけれど、
体は男性なのである。

そんな上司に、
今度、
行われる説明会の原稿を、
書いて欲しいと頼まれたのです。

私なりに、頭をフル回転して、
私なりに、頑張って作った原稿。

その上司に、
書いた原稿を添削して、
もらったのだが、
どうもしっくりこない。

言いたい事は、わかるのだが、
なんか違和感があったのだ。

ちょうど、
かあちゃんに仕送りと一緒に、
実家のアパートに帰る時期だった。

かあちゃんはすごい賢い人だ。

かあちゃんに、
一度見てもらおうと、
その原稿を持って行った。

もちろん上司の事は詳しくなんて、
言ってなかった。

かあちゃんは、
一通り原稿を読んで、一言。

この添削した人は女の人だろ?

この直し方は、女のやり方だ。

だから、お前は理解できないんだよ。

私は上司は実は男性で、
見た目は女性なのだと、
初めて説明した。

ほらな、やっぱりそうだろ?

男と女じゃ、頭の使い方が違うんだ。
その上司とやらは、完全に女だね。

びっくりした。

その当時は、まだそう言うたぐいは、
ご法度のような物でちゃんと知らなかった。

男性として産まれたから、
いくら心が女性でも、
男性の思考になると思ってた。

けど、やっぱり違うのだ。
体が男性なだけで、
心も脳も女性そのものなのだ。

自分の理解力のなさに落ち込んだ。

でも、かあちゃんは、

この上司はできた人だね。
頭がいい人だよ。
女性の知性が表れている。

この言い回しとか、
ここの文章の付け足しなんか、
よく出来てるよ。

かあちゃんが女だから、
そう思うのかもしれないね…。

しかし…まぁお前の文章力のなさ!
ホント…呆れてちまうよ…。

この添削された文章、
お前の言いたい事や必要な部分を、
うまく表現してくれてるよ。

かあちゃんは、感心しちまったよ。

そうなのか…?
確かにうまくまとめてもらっていたが、
私だったら、こんな言い回しなんか、
使わないし、付け足された文章に、
そこまでこだわる意味がわからなかった。

男の思考と女の思考は、
やはり違うんだな…。

だが、会社関係のほとんどは、
男の人である。

この文章を、説明会で読んで、
うまく伝わるのか…。

女性の知性の文章を発表して、
私と同じく、なんかしっくりこない。
なんて、事にはならないのか…。

そんな考えを、
かあちゃんは見抜き通すのだ。

かあちゃんは、

この上司を信じた方がいい。

ちゃんとお前の言葉を尊重しながら、
もっと効率よく添削してくれた文章だよ。

男には出来ない、
女の男を立てるって事、
この上司はわかってるんだ。

体が男性だからって、
そんな偏見持つんじゃないよ!

その上司は、立派な女性だよ!

この世の中で、普通の女性だって、
なかなか上にはいけないよ!

だけど、この上司の人は、
人一倍努力したんだろうね…。

女として生きる事すら、
躊躇するもんだろ?

だけど、堂々と女性として、
生きて、頑張って這い上がって、
今があるんだ。

かあちゃんは尊敬するよ。

かあちゃんは、人の事に対して、
本当の事しか言わない。

思った事をすぐ口に出して、
喧嘩ばかりする人だ。

かあちゃんは嘘やお世辞は言わない。

だからこそ、

かあちゃんの言葉は私の心に響いた。

まだ、偏見ばかりの世の中に、
かあちゃんは見た事もない上司を、
決してそんな思いで見てないのだ。

多分、女性として生きると言う事は、
かなりの苦労と挫折とまわりの理解が、
ないと、出来ない事である。

その、結果
いまの上司として会社にいるのだ。

いま一度、原稿に目を通す。

確かに、私の意見や言葉を尊重して、
それをうまく引き立ててくれている。

オレの目はふしあなか?

多分、心のどこかで偏見をもった目で、
添削された文章を見てたんだろう…。

添削された文字は、男にはない知性が、
ちりばめられていた。

改めて、その添削された文章をもとに、
原稿を書いて、上司に確認してもらう。

目を通す、その上司は、
立派なキャリアウーマンであった。

その上司が、


私の意見に反発してこないんだね。


と突然、私に言う。

たいていの人は、私の事を、
バカにした感じで反発して、
私の添削した文章を理解出来ないって、
私の添削は間違ってるって言われる。

その度に、辛くて、悲しかった…。

だから、すごく今、
私の考えはこれでいいんだって、
そう、思えて嬉しかったわ。

すかさず、言い返す。

違うんです。正直…
私も心のどこかで、添削の意味が、
わからなくて…反発してました。

本当にすみません…。

だから、母にこの原稿見せたんです。
そしたら、諭されたんです。

それで、
ようやく気付かされたんです。

この添削には、私の言葉をより良く、
そして伝えたい事をわかりやすく、
簡潔に書かれてると、気づけたんです。

私こそ、お礼を言わして下さい。

本当にありがとうございます。

その上司は、

お母様に感謝しなきゃいけないわね…。
いつもね、認められるってすごい、
大変な事だったの…だから…、
私は私でいいんだって思えて、
すごく楽になったわ…。

でも、あなたの原稿もよく出来てたわよ。
私はただ、それに付け加えただけ。

あなたの力になれて、よかった。

すごく嬉しいわ…。

ねぇ…この後…飲みに行かない?

あっ!すみません…。
それは…ちょっと…公私混同は、
良くないので…すみません…。
と言うと、

上司は、可愛らしく笑って、

冗談だって、安心して、
あなたは全然タイプではないから。

じゃぁ、この原稿で進めていくわね。
頑張りましょう。

そう言って、
上司は、ヒールの靴を鳴らして、
行ってしまった。

私はもうその上司が周りの女の人と、
なんの変わりのない女性として見えていた。


今は少しトランスジェンダーにも
人権があると言う意見が通ってきてる、
のかもしれません。

でも、
まだまだ、偏見や差別は
存在しているのだと思います。

色んな所で、色んな理由で、
それは潜在意識の中で作られてしまう。

そんな世の中で、
今も苦しんでいる人がいる。

いつか、そんな人達が、
生きやすい世の中になれます様に…。

あの上司の様な、
自分を偽らない生き方ができる、
そんな社会にもっと、
進んで、いかないといけないよな…。

うむ…社会的に植え付けられてた概念…。
かなり手強いだろうな…。

今の若者の方が柔軟に対応出来るかもしれない。

日本の未来は、明るいかもしれないな。

少子化問題も大事だか、それ以前に、
一人の人間として、それを尊重した、
方が何倍も大事ではないか。

そう思うが、
私には、なすすべがない…。
情けない…。

いつか、若い人に明るい未来を託します。

ごめんなさい…若者達よ…お願いします…。

あなた方の新しい概念が、
いつか、みを結びますように…。



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