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【カゲクマ店長の怪談】001_ゴボゴボ

アレは夏休みの事でした。

その日は朝から親父と一緒にキャンプに行こうという約束をしていました。

でも、その日は生憎の空模様で、
キャンプ場の方も雨が降っている様でした。

あーあ、雨かあ…て思って親父の方を見ると
親父は「雨か~ どうする?」って聞いてきました。

「せっかくだし行けるんなら行きたい」そう答えた俺に

親父は笑って「それなら雨の日のキャンプといくか」と言い俺達は車に乗って出発しました。

今思えば、行かない方が良かったかもな・・・と思いますけどね。

車中では親父といろいろな事を話して、
2時間くらい走って目的地のキャンプ場に着きました。

時刻はまだ13時くらいでしたけど、
この頃には雨脚は大分強まって、
川は流れも速くなって、ゴウゴウと音を立てていました。

こりゃ~河原にテントを張るのは危ないと思って、
川からは距離をとって、
少し高台になっている所にテントを張る事にしました。

大雨の中の作業で二人ともびしょ濡れで、
テントに入って最初にした事と言えばびしょびしょの服を絞る作業でした。

その後は、二人でお湯を沸かしてラーメンを食べたり、
お酒を飲みながらおっかなびっくり外の状況を覗いて
「うわ~雨すんげぇ」
なんて盛り上がってました。

それから夜も更けて午前0時に差し掛かる頃には大分眠気が強くなってきて二人で寝袋を出して横になりました。

雨が降っている中でのキャンプは新鮮で、
テントの天井を叩く雨音が心地良くて、俺は直ぐに眠ってしまいました。

コポ・・・ゴポゴポ・・・

奇妙な音でした。

まるで水が湧きだすかの様な音。

そんな音が聞こえてきて、目が覚めた俺は… 寝ぼけながらも、
テントに水が入って来てるのかと思って体を起こしてライトをつけ、
テントの中を確認してみましたが、全くそんな気配は有りませんでした。

ほっと胸をなでおろした直後に、
ゴポゴポゴポという音が後ろの方から聞こえてきました。

なんだろう?振り返って確かめようとしたのですが、身体が動きません…

ゴボォ~ゴボボボ~ ごぼぉ

何かの気配と音がゆっくりとこちらに近づいてきます・・・・

親父…

横に居るはずの親父に異変を伝えようとしますが、
やはり体はピクリとも動きません。

ゴボボボボ

音は俺の直ぐ横にまで迫って来ていました。

ごぼぉ~ごぼぉ~~

何だコレ?
まるで自分に語りかけてきているかの様に音と気配…
そして、なんとも言えない腐臭が俺にまとわりつくように迫ってきました。

ゴボボボボ

止めてくれ!俺に何か言っても何もしてやれないよ!!
俺にできる事は何も無い、帰ってくれ!!

俺は昔に祖母ちゃんから聞いた話を思い出していました。

幽霊とかよく分からない物に出会ったと思ったら、
とにかく自分では何もできないって事を伝えなさいと

その時の記憶が頭の中をグルグル巡って、
一生懸命に、何もできません、帰ってくださいと繰り返しました。

ゴボボボボ ごぼぉ~~

もう、やめてくれ!帰ってくれ!!

突然身体が動き、頭の中で思っていた言葉を口に出す事が出来ました。

ゴポポ

すると、今まで俺の隣に有った気配はすーっと去って行きました。

極度の緊張からの解放というか、
安心したのか、俺はそこで意識を失ってしまい、
翌日親父に揺り起こされて目を覚ますと、もう日はだいぶ高くなっていました。

昨日有った事をいろいろ伏せながら親父に聞いてみましたが、
水音も俺が騒いでいたのも知らないという事でした。

家に帰ってから、あのキャンプ場や川についてもいろいろ調べてもみましたが、
俺と同じ体験をした人間も、土地の曰くも全く見つかりませんでした…

アレは一体何だったのか?
未だに何も分かっていません・・・・

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