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十七、八が二度候かよ

「十七、八が二度候かよ 枯木に花が咲き候かよ」

かつて小学館の『日本の旅』(四国/瀬戸内海)の記事を読み、倭寇に行こうとする若者が言った言葉だという記憶があった。あらためて、その本を開いてみると、この記事「島の旅情」の作者は、壺井繁治(妻は壺井栄)、小豆島出身の詩人である。若者が倭寇に船出するときの合言葉で、もともとは何かの古文書らしい。

壺井栄が好んだ言葉としても知られていて、色紙に「十七、八が二度候かよ 枯木に花が咲き候かよ」と書いたという。

いくら止めたって俺は行くぜ 若い時は二度と来ないんだ 枯木に花が咲くものか

海に育った中世の若者のエネルギーが感じられる。広く流布したものだったのだろう。

原文を知りたいと思った。明代(16世紀)に侯継高が表した『日本風土記』(平維章校、国立国会図書館所蔵)に載っていた。『日本風土記』の巻5に、当時の日本語を漢音で表記して掲載されていて、「二度」のところは「ふたたび」となっている。二度は、もともとは「ふたたび」と読んだのかも知れない。

 「青春嘆世 十七八はふたたび候か 枯木に花が咲き候かよの」

十七、八はふたたび来ない。その歳をはるかに超えている自分には、「今この歳はふたたび候か」と思いたい。生きている今は二度は来ぬ候。

2023.2.24             

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