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三方一両損と三方一両得

落とし主と拾い主がどちらも遺失物の三両を受け取らず、大岡越前が身銭を切って一両を出して、解決する話が有名な大岡政談の「三方一両損」である。

この裁判のポイントは、三両を基準とするところにある。

当事者は、本来三両を手にするはずのところを、二両しか手に入らず、越前守も一両の損という、めでたし、めでたしの名判決だ。

だが、これは判例にできない判決である。二人が談合して訴え出ると計四両の獲得で一両の儲けになってしまうからだ。

他に三方一両得という解決策もあるのではないか。両者が貰うことを固辞しているので、ゼロを基準にして、三方に一両ずつ分ける。皆一両の得、越前守も一両の得である。

その他に、両者の権利放棄として、三両すべてをお上が没収するという方法もある。

しかし、何故か江戸の庶民は三方一両損を選んだ。やはり、他人のお金を懐に入れる大岡越前より、身銭を切る名裁判官、大岡越前を好んだのである。没収など論外だった。                                                                         
2022.9.17



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