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4年ぶりの江東の花火

今年は4年ぶりの花火ということで楽しみにしていた人が多いだろう。わが家でも隅田川花火(7/29)と江東の花火(8/11)を見ることができた。4年ぶり、われわれ高齢者にとっての4年と若者たちの4年では年齢からみた分数が違うだろう。4年は大学生活の年数でもある。4年ぶりと言ってもその感じ方が違うだろうな、そんな4年ぶりの花火だ。

近くの江東区の花火を歩いて見に行った。葛西橋と清砂大橋の間で打ち上げられるというので、夫婦で葛西橋に行ってみた。途中にあるコンビニは出店を出している。葛西橋に着くと交通規制がはられ、橋の北側から江東区に向う歩道が一方通行になっていた。警備員たちが「立ち止まらないでください」と大声で歩行者に呼びかけている。歩行者が立ち止まり渋滞して思わぬ事故が起きることを防ぐためだろう。行動の自由と安全保障の調整である。花火見物客は、花火をカメラで撮りながらゆっくりゆっくり歩いている。まるで牛歩戦術だ。おかけで安全にゆったりと花火を見ることができた。

外国人観光客らしき人の数が多い。江東の花火を何年も見ているが、次第に評判を聞きつけてか、電車に乗って見に来る人が急激に増えた。以前は住民だけの花火見物だったのだが、今年は特に4年ぶりの花火ということで、たくさんの見物客の数を見込んでなのか、警察官や警備員の数が多い。

中川・荒川にかかる葛西橋は、全長727.4メートルで、ゆっくりゆっくり歩いて、往復1時間のちょうどよい花火コースだった。折り返しでは、階段を降りて、自動車道を潜り、また階段を登らなくてはならないのだが、私たち夫婦を気づかって警備員が近道を通してくれたので階段を使わないで助かった。帰りは橋の南側を帰る。こちら側が打ち上げ場所に近く、見ごたえがある。

川面に屋形船が浮かび、水面から花火が打ち上げられて夜空に大輪の花を咲かす風景は、広重の両国の花火を思わせる。頭の中にある映像と現実が出会うときが一番たのしい。まるで◯◯のようだと思うときに、見物客は受け身から風景に働きかける能動者となる。広重の両国の花火が頭の中でよみがえる。

広重 両国花火
江東の花火 2023

「立ち止まらないでください」の声が仕切りなしに聞こえてくる。たくさんの警備員が老若男女であることに気づく。高齢の男性に混じり年配の女性も大きな声を上げて歩き回っている。若い女性警備員もいる。先程、私たちを通してくれた警備員は働きざかりの男性だった。私は仮面に隠れた素顔が好きだ。警備員という仮面の中に、ふとした人間の素顔が素直に現れ、本来の表情が浮かんでいた。そういうやさしさが好きだ。帰路、橋が荒川から中川に変わる辺りで、若い警備員が高齢者の私たちを見て「ゆっくり気をつけてお歩き下さい」と声をかけてくれた。今夜、外国人観光客を見て、老若男女の警備員が働く姿を見て、広重のような花火を見て、こうして私たちの4年ぶりの花火は終わった。


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