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蕎麦屋にて しんこは出たか?

秋の季節を感じるようになった頃だった。そば屋で、もりそばをすすっていたら、向かいの客が「しんこは出たか」と店員に聞くのが聞こえてきた。店員はあわてて、厨房に入ったかと思うと、また出てきて、「すみません。おしんこはやっていません」と言う。

客は、驚いたふうに「しんこだよ。もう出たかと聞いてるんだよ」と言う。どうやら客は新そばが出たかをどうか聞いたのをお新香と勘違いしたようだ。
厨房から店主らしき人が出てきて、新そばは来週に入る予定ですと客に丁重に話していた。
ボタンの掛け違いで、笑い話ですんでよかったなと思う。

だが「しんこ」が気になる。しんこを調べると新粉(もともとは糝粉)がうるち米の粉とある。そのうち上等なのを上新粉という。要するに普段食べている米の粉である。
そばに関するのでは、芯粉があり、そばの中心部を製粉した上等のそば粉とある。
さらに漬け物の新香があり、言うまでもなく、野菜の漬け物である。
どうも、新そば粉をしんこという例は見つからない。米粉の新粉からの連想だったのか。

本当に言葉というのは困りものである。心に思うことをそのまま伝えてくれるようには言葉は上手くは働いてくれない。私も常日頃から言わなくては伝わらない現実と言わなくても伝わってほしい理想との間を揺れ動いている。

2023.2.23

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