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ついに見つけた先祖の墓 中山法華経寺

私の祖父母の墓は中山法華経寺の山内寺院である浄光院にある。それとは別に本家の墓が同じ法華経寺にある。子どもの頃にその本家の墓を一度父に連れて行ってもらった。現在では、本家分家ということの社会的な意味がなくなっているが、墓にだけは本家の意義が残っているようで、代々の先祖が葬られているということでそれは特別な存在である。

その後、本家の墓に訪れることもないままに、本堂近くの古びた墓石があるその間を通ったところにあったというかすかな記憶だけが残った。そして半世紀以上がたった。年を重ねるごとに本家の墓を再度訪ねたいという思いが強くなってきた。

一度は、法事のときに、境内の墓地内を探したが見つけることができなかった。父もなくなり、今では知っている親戚もいなくなっている。先祖の霊が暗闇のかなたへと隠れてしまったような感じがして、忘却がこんなにも心細いものかと怖くなった。その後何度も中山法華経寺に行く機会はあり、境内の墓地を探し歩いたが、先祖の墓はついに見つからなかった。

ある日、もう見つからないのかもしれないとあきらめかけた時、参道の田中家という茶店の前の狭い道を入って、古木の生える角を左に曲がって正面を見たら古ぼけた墓石に眼が留まった。何と墓石には本家の名前が書かれている。家紋も同じである。墓石の側面に刻まれた戒名を見ると向慧光院日松信士とある。曽祖父の名は松五郎という。となりに曽祖母の名前のしげが入った春光院妙繁信女の文字が刻まれている。さらに他の戒名によっても先祖の墓であることが確かめられた。この墓に違いない。ついに何年も見つからなかった先祖の墓がたくさんの墓石の中から見つかった。まるで雲が晴れたような気持ちだった。早速、浄光院の墓を守っている従兄弟たちに教えてあげた。





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