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小さきものは、みなうつくし(枕草子)

琉金は、尾ひれを優雅になびかせて泳ぐ。優雅であるが敵から逃げる速さはない。金魚は人間が手を加えないと、もとの鮒に先祖返りする。自然は機敏さと力強さを動物に求めるから流線型の体型に変化する。生存能力を高めるには必要なことだ。この琉金のように、人間は野性を失った無力な動物ほど愛おしく思うようだ。

飼い主に連れられて散歩している足の短い犬をよく見かける。このチョコチョコ歩きでは自然界で生きていくのが困難と思われる。この犬をアフリカのサバンナに置いたら瞬く間にライオンの餌食になるに違いない。それなのに短足がひとには可愛いらしい。

人為淘汰とは、生命を人間の好みに合わせて都合よく変えることに他ならない。鈍くて弱弱しいペットたちの運命は、人間の手に委ねられている。そんな無力な動物ほど、ひとは愛情を感じ、守ってあげたくなる。
小さきものは、みなうつくし(愛らしい)」(『枕草子』)とは、清少納言の言葉である。

2022.9.10

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