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過去に戻る運命の物語とは

過去に戻ってやり直しても、運命は変わらないというのは、ドラマによくあるテーマである。この場合、運命というのは、生死や結婚など人生の重大事を指しているようで、日常生活のささいな事ではない。最近も一年前に戻ってやり直してしても、結局死が避けられなかったというドラマを見た。

実際に過去に戻ることができたとして、運命はどう変わるのだろうか。重大事だけが変わらないということをどう考えればよいのだろう。運命の神様は、人間と同じような価値観を持っていて、人間が重大視する出来事−生死、結婚、肉親との死別、就職転職、病気・事故・災害等を変えたい人間の意思に反して、意地悪く変えないということをどう考えればよいのだろう。運命は意思を持っていて、人間に対して悪意があるということになる。

運命は、ニュートラルだと思う。人生ばかりでなく、この世のあらゆる現象は、恣意的ではない。綾なす糸のように相互に無限の作用を繰り返している。運命は、人間の重大事だけを変えたり、変えなかったりするような選択はしない。

運命が意思を持たず、人間の価値観とは無関係であるので、過去に遡った場合、ささいな出来事を含め、あらゆることが変わってしまうはずである。例えば、肉親の誰かが過去に行った途端に、眼の前の世界は変化してしまうだろう。親が過去に行ったら、その瞬間に子どもはこの世界から消えてしまうかもしれない。誰が行っても影響は計り知れない。ささいな変化が綾なす糸のように相乗的に影響し、世界は大きく変わってしまうだろう。ドラマのような、ささいなことは変化しないで、重大事だけを変えていこうとするような運命的な話は、ありえないのだろう。そもそも、過去に戻るということも、恐ろしくて考えたくない。多分、こういうドラマは、聴衆は非現実な架空の話と分かっているから面白いと思うのだろう。

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