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あごひもをつけたハット
船旅に出る時に、ハットが風で飛ばされて、波間に漂うことを思い浮かべて、あごひもをつけた。「ひもをつけて」と娘に頼んだら、簡単につけてくれた。おかげでハットは風に飛ばされることもなく、無事に船旅を終えた。
ハットにも相性がある。旅立ちの直前にイオンで買ったリーズナブルなハットだが、被りやすく、カバンにしまいやすい。相性が合うものだった。そのハットを被り、いろいろな所に行った。スナップ写真を見ると、世界のあちこちでハットを被った自分が写っている。自分の分身のように愛着が湧いてくる。
グアム島の恋人岬がハットとの別れになった。
帰りのバスが来る前にトイレに入っていると、「バスが来たわよ」という妻の大きな声が聞こえて、慌ててトイレから出て、走った。バスに乗ったら、ハットをトイレのフックにかけたまま、忘れてきたことに気づいた。「帽子を忘れた」と言ったが、もう間に合わなかった。
船の甲板から風に飛ばされて大海に漂うことばかり心配をしていたのに、グアム島の恋人岬のトイレに置き忘れるなんて、人生とは皮肉なものだ。
数日前にグアム島で娘は結婚式を終えたばかりだった。ここで娘と彼氏は新たな人生の旅立ちをした。きっとハットもここから新たな旅立ちをしたのだろうな、そう思い慰めた。
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