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社会人になる君へ

 最近、大学や高校が何年も前の出来事になっていることに、正直驚きを隠せない。7年前は高校1年生と思っていたが、よく考えたら大学を卒業して2年になる。
 嘘だろと高校・大学の友達と盛り上がって、みんなして悲しくなってしまった。同じ教室、サークル、部室でバカみたいな話をしていたのが少し前のように感じていたのに、実はもうずっと昔のことだった。
 同じ、ところで共に過ごした友達は、それぞれ違う道を歩んでいった。社会人になった人もいれば、夢に向かって努力を続ける人もいた。新天地を求めて新たな場所へと旅立った人も現れた。結婚した人もいた。
 テレビやSNS、新聞で知人・友人の名前を見かける機会も出てきた。大学を卒業してからまだそれほど経っていない気がする、と思っていたのは自分だけなのかもしれない。みんな、それぞれの人生を歩み始めていた。

 自分は、人生を歩み始めているだろうか。

 周りの活躍を見て、すごくモヤモヤするし、なんでこんなところにいるんだろう?と思ってしまう。「もっとできるのに!」と嘆くけど、思うように結果も出ず、ふてくされて、ただ流れに身を任せているときもあった。
 目の前にレールが引かれていたのに、社会に出た瞬間、深い霧に覆われていた。いくら進んでも霧は晴れてこないし、落とし穴にはまって、なかなか抜け出さない不運にも見舞われた。

 そうこうしているうちに君が社会人を迎える日がやってきた。
「え、もう?」というのが正直な感想だ。なにか先輩面してやろうと思ってこの記事を書いているわけだが、一週間経っても何を書けばいいのか分からなくなって今日に至ってしまった。たった数年の違いで、大声でアドバイスできることなんてほとんどない。書いても自分語りになってしまい、嫌気がさした。なんとなく形にしても、頭の中から知人の声をしたダメ出しが聞こえてきた。

 これから、君は数えきれないほど、ダメ出しされて、嫌なことを経験するだろう。色んな人の考えや行動に驚いて、ショックを受けるだろう。いつの間にかプライベートもぐっちゃぐちゃになって、大切な人への思いやりまで頭が回らなくなってしまうかもしれない。

 だけど、思い通りうまくいかなくても、大丈夫。
 自分は社会人になってみて、人生はまだまだ長くて、想像をはるかにこえるぐらい色んな人がいることに気がついた。当たり前かもしれないけど。でも自分は学生のときには全然気がつかなかった。
 大事なのはチャンスを逃さないこと、と若手社会人なりに思う。でもたった一回うまくいかなかったとしても、しっかりと種をまいて水を注げば、またいつかチャンスは巡ってくる。

 たしかに大学が終わって広がっていたのは、先の見えない曇った世界だった。歩いてもあるいても、ずっと霧に覆われていて、道しるべなんてすぐに見失った。身体も心もボロボロで、社会なんてもう嫌だとさえ思った。今も嫌になることがたくさんある。

 それでも、君も、そのうち、やってやろうと思うだろう。
 流れに身を任せているうちに、「本当にこれでいいのか?」と身体の内側から声が聞こえてくるに違いない。このまま用意されたものを淡々とこなしていくだけだと、何者にもなれないんじゃない?と。
 同じぐらい、ダメ出しと、逃避を促す声も聞こえてくる。それは知人・友人の姿をしていて、誰かが手を差し伸べてくれるのを待った方がいいんじゃない?って言ってくる。

 でも、諦めないで。

 学生のときとものの考え方も全然違って、最初は戸惑うかもしれない。思った通りにできなくて悩むかもしれない。本当はこんなはずではなかったのにと思うかもしれない。もうこのままでいいと思うかもしれない。それでも諦めきれないのが君であってほしいなと思う。
 いや、それが君だ。
 そんな君の姿を見て、何度、何度、助けられ、勇気づけられただろうか。もし君がいなかったら、とっくのとうに心は折れていた。

 だから、今度は、自分が君を社会に迎え入れる番だ。
 君は無茶な行動をするけど、それは実は社会人として大活躍する能力だ。ただ「無茶」と「仕事をこなす」はちょっと違うから気を付けてね。気を付けてほしいことといえば、体調。身体は一番の資本だ。自分は1年の間にぎっくり腰、コロナ、虫垂炎(手術)、原因不明の腸炎と高熱を患ったよ。少しでも体調がおかしいと思ったら休むこと。そうしないと入院することになるからね、マジで。

 そして、大切な人達を、これからもずっと大切にしてほしい。
 仕事で忙しくなって、周りが見えなくなることがあると思う。周りのわがままにイライラしてしまうかもしれないけど、少し我慢してあげて。時間がない中でも会ってくれる人達は、一生の宝物だから。

 学生が終わっていくことはとても寂しいと思う。
 自分も、まだ寂しい。
 それでも、これから大きな、大きな、自分の人生を歩むと思うと、少しワクワクしない? 君は社会人となって、どんな人と出会い、どんなことを経験して、どんな未来を手に入れるだろうか。
 君とともに社会を過ごすことが、とても楽しみだ。


 2年前、大学を卒業するのを機に、毎年(といっても今回でやっと3回目)卒業の日に日記を書いてきた。もう大学に、自分の見知った顔はいなくなった。いよいよ、本当に、自分の過ごした学生時代は、大学に残っていないんだなと、しみじみ思う。
 なので、学生の終わりに向けたメッセージは今年でおしまいにしようと思う。ここまで読んでくれたみなさま、本当にありがとうございます。

 来年からは、ともに戦う、みんなに向けたメッセージを書いていきたいと思います(書くんかーい)。

 それでは、今年の卒業のみなさま。

 ご卒業おめでとうございます。


 


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