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2020年読んだ・観た作品ベスト5

 私事だが、井の中の蛙状態で就活を始め、突然天変地異パンデミックが起こり、とても痛い目にあった。大海にもほどがあるだろうと声を大にして言いたい。それでもなんとか就活を終えることができたが、コロナは一向に収まらず、むしろ手を緩めてくれない次第だ。海外旅行も国内旅行もままならず、卒論とネットサーフィンの日々だった。

 その結果、どうなったのか。馬車馬のように小説をあさり、映画を立て続けにみて、アニメを大量に借り、案の定、体調を崩した。バーカ。就活を終え、私はこれまでの学生生活で色んな人に支えられてきたことをしみじみ実感するのとともに、たくさんの後悔がうまれた。その一つが、「自称映画・漫画・アニメ好き」だったことだ。さすがに小説はたくさん読んでいたが、それでも超絶小説だいちゅきを名乗るには、あまりに無知だった。そんな思いを巡らせているときにおとずれたのが「海外旅行に行けない分、余った時間と体力」だった。

 そうして、たくさんの作品に出会った。今回は、せっかくなので、2020年、私が読み、観た作品のなかで、「これはオススメだ!」と思う作品を紹介していく。

 なお、最初に述べておくが「鬼滅の刃」はリアタイ第一話で投げてしまったので読んでも観てもない。「ヴァイオレットエヴァーガーデン」については、永遠にゲオで借りパクされているので観れていない。悪しからず。



第5位 『ハチミツとクローバー』

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 これ語る必要あるのか? と思うぐらい、皆さんご存知の名作。現在は『三月のライオン』を連載中の羽海野チカ(先生)の記念すべき第一作だ。よく櫻井翔みたさに映画版を観て落胆する声を聞くので、原作版かアニメ版の方がいい。

 美大生たちの、等身大の葛藤、届かない恋心、持って生まれてしまった宿命のような才能ーーどれをとっても百点満点の面白さ。読み終わった後の清々しさ、そして彼らがどんな未来を歩んでいくのだろうと想像を膨らませていくうちに、ハチクロの偉大さを実感する。

 お気に入りのシーンは、竹本が自転車で最北端にたどり着くとき。

「雨の終わる場所をみた。地の果てというものは、もっと、さびしいところだと思ってた。こんな、明るくて、せいせいした所だとは、思ってなかった」

 一直線の道の先から、雨が晴れていく様を、漫画で表現しているところ、すごいです(語彙力)。

 この漫画を紹介してくれた、信頼する某友人には感謝しきれない。


第4位 『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語』

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 これも語る必要なくない??? と思うぐらい、これもまた名作。正直、『燃ゆる女の肖像』と『風と共に去りぬ』の三つの間で迷ったが、オススメできる作品となると、本作の方がいいだろうという判断に至った。ちなみに『燃ゆる女の肖像』は百合とフランス映画に耐性がある人にはものすごくオススメしたい。

 本作は言わずもがな、『若草物語(原題:Little women)』と『続若草物語』の話だ。私は『続若草物語』を読まないで映画を観てしまったので、ベスのところで大泣きしてしまった。

 南北戦争時代の北部アメリカに住む四姉妹、メグ・ジョー・ベス・エイミーが、貧乏な生活の中、隣人たちとの交流を経験して、成長していく物語だ。一見、ただのハッピーエンドものかと思われるかもしれないが、実はそうではない。とくに『続若草物語』では娘時代が終わった四姉妹が、男性主義の世の中の壁にぶち当たり「私たちの幸せってなんだ?」という問いを続けていく形になる。果たして四姉妹のそれぞれの答えとは?

 ちなみに原作者のオルコットは、ジョーのハッピーエンドを望んでいなかったという。それはなぜか? 答えは映画の中にあるので、ぜひ観てほしい。

 ところで南北戦争は北部の勝利で終わるのだが、そのとき、南部ではスカーレットという理不尽でたくましい女性が、歯を食いしばり、じっとまっすぐ燃えゆく世界を見つめ、拳を強く握りしめたとか、なんとか。詳しくは『風と共に去りぬ』で。


第3位 『劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明』

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『プルシュカがこぼれちゃう……』

 公開直前に映倫から『R15』指定された名作。絶対、こぼれちゃうシーンのせいだろう。見終わった人が「こんな地獄なら、深界にもぐるんじゃなかった」と泣き叫んだという伝説の名作。

 しかし、どんな残酷シーンも「未知への憧れ」という好奇心が勝ってしまう。だが、そのベクトルの方向がくるってしまえば、黎明卿のようになってしまう。好奇心と倫理観を考えさせられる物語だ。

 本作はアニメで放映された『メイドインアビス』の続編。あらゆるところが解明される中、唯一誰も全貌を明かせない大穴「アビス」に挑戦する、少年少女の、楽しい冒険ファンタジーだ。このあらすじを聞くだけでは、なんだ、ただの二次元に萌えるオタクの過剰な宣伝かと思うかもしれない。そう思った人にこそ、いやそう思った人はたぶん見れないと思う。

 『メイドインアビス』のグロさは、「人を想う」から現れる感情なのだと思う。ナナチとミーティ、プルシュカとボンドルド、ライザとリコ……大切な人と人(数名人間から脱していますが)の関係にのしかかる「アビスの呪い」。

 果たしてあなたは、どんな困難にあっても、好奇心をもとに深淵へと行けますか? ちなみに、深界6層へ「ラストダイブ」するための祭壇の機械、あれは大友克洋『AKIRA』でアキラの「本体」が眠っている球体とデザインが似ているので、そこらへんからグロさを察してほしい。


第2位 『ACCA13区監察課』

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 スタイリッシュ謎解き痛快ファンタジーを求める人は絶対に観るべきだ。それを求めていない人でも観るべきだ。原作はオノナツメの漫画。アニメは全12話。

 13の自治区に分かれたドーワ王国が舞台。王国の平和を担う巨大組織「ACCA(アッカ)」の監察課に勤める主人公ジーンが、クーデター計画とACCAを揺るがす事件に巻き込まれていく物語。なぜジーンばかりが巻き込まれるのか。誰がクーデターを画策しているのか。皇太子とACCAの対立、そしてタバコ……全ての謎が解けたとき、巨大な陰謀が姿を現すーー。

 イケメン勢ぞろいあたりからこれはもしかしてBL色が強いのかと一瞬警戒したが、おそらくジーンの妹ロッタちゃんの登場によって安心できるのではないだろうか。13の自治区にはそれぞれ特徴的な気候や風習、人々がおり、それぞれで独自の政治が行われている。政治の陰謀劇でもあるし、謎解きでもあるし、とにかく先の展開が読めない。魅力的な登場人物ばかりで、正直、どのキャラクターも好きだ。度し難い(あっ)。

「とにかく面白い物語を楽しみたい!」と飢えているのなら、真っ先にこの作品をオススメする。 



第1位 『革命前夜』

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 今年、読んだ・観た中で、最も最高で、最も面白かった作品は、須賀しのぶ『革命前夜』だ。これは面白い、本当に面白い。面白すぎて、周りの人に宣伝しまくっている。

 舞台は東西冷戦終戦間近の東ドイツ。音楽留学でやってきた日本人留学生眞山が音楽、仲間、ライバル、そして政治の間で大きく葛藤し、成長していく青春物語。

 どこから説明すればいいのか、困ってしまうぐらい、この作品には「絶品」が詰まっている。ただの王道音楽物語ではない。音楽と向き合い、ライバルと戦い、応援する人たちのために奏でる、そんな純粋な物語ではない。なんとその物語に、社会主義の国の「隣人は密告者」という要素が含まれてくるのだ。いつ、だれに、どこで、自分のなにげない行動が、「国を貶めるよう画策している」と密告され、拘束されるか分からないという恐怖と隣り合わせの中、見失った音楽と向き合わなければならないという特殊な状況なのだ。

 眞山は他の留学生たちの姿勢に翻弄される。たとえば北朝鮮から留学してきた李は、失敗したら国に帰ることができないという覚悟のもと音楽に取り組んでおり、「生ぬるい」日本という環境で育った眞山の音楽に、厳しく非難する。そしてハンガリーからの天才留学生、ラカトシュ、温厚なイェンツ、監視対象とされている美人オルガニストのクリスタ。

 彼らは音楽に、ひたむきに向き合っているだけだった、のに、時勢が彼らを許さなかったーー。ここから先はネタバレになってしまうので、読んでからのお楽しみだ。

 青春×音楽×政治×謎解き、そして眞山たちがたどり着く、未来とは。ぜひとも、騙されたと思って買って、読んでほしい。


番外編 『大きな鳥にさらわれないよう』


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 本当はオススメしたのだけど、本作に含まれる「毒」に耐性がある人ばかりではないので、番外編ということにした。はるか未来の世界で、人類存亡を巡る女性たちの物語、といえばいいのか、はたまた女性を「性の道具」としてしかみない男たちの末路ともいえばいいのか、はたまた純粋な衰退という生き物の宿命を直視できなかった科学者たちの最期の抗いといえばいいのか、とにかく文学的で、SFで、「毒」のある素晴らしい作品だ。

 バッドエンドかと思いきや、意外なラストに、思わず、なるほどとうなずいてしまう。ずっと人間のことをネガティブに捉えていたけど、最後の最後、いや最初になって、作者こと川上弘美の真っすぐで温かい目に救われる。




 以上が私が選ぶベスト5である。本当はもっとオススメしたい作品が山ほどあるのだが、ここまで読んできた人にはもうお腹いっぱいだと思うので、控えさせていただく。

 こうやって見返してみると、ベスト5となると、有名どころがずらりと並んでしまう。マイナーな作品も観ているのが、「マイナー」なりの宿命があるということだろうか。でも『革命前夜』のように、知る人ぞ知る作家さんがとんでもない傑作を生みだす例もあるので、やはり乱読はやめられない。

 それに、物語を読むと、また新しい創作意欲がかきたてられる。

 物語を楽しむ理由はひとそれぞれだろう。だとしても、今回紹介した作品が、誰かの背中をおしてくれるような、大切なものになってくれることを祈る。


 最後に、今年響いた言葉の一つと、心に残ったアニメのシーンから。

「本当の地獄というのは必ず孤独の中ではなく社会の中にある。人と関わった先にこそ地獄はあると思っている。だから人間が嫌いかというと全くそんなことは無い。むしろ自分は人間が大好きだ。僕が今まで好きになった人間は一人残らず人間だった」 又吉直樹『東京百景』

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アニメ『四月は君の嘘』より 



それでは、良いお年を~

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