見出し画像

東川町で自営業の可能性〜1億総サラリーマン化時代の終わりを迎えて

<2019/06/23に書いたFacebook投稿記事の再掲です>

北海道東川町で「自然素材と手づくりのもの コヨミ舎」を開店して2週間。素人商売、かつ週末のみ営業ということで、売上はまだ微々たるものですが、手応えも感じています。旭川や札幌方面から東川町にやって来るお客さんが、ものすごく多いことです。


まだ6月なのに、想像以上の人出で驚いています。宣伝など何もしていないのに、ドライブの途中でコヨミ舎に立ち寄ってくれる人もほんの少しだけどいます。今後夏休みに入り9月か10月上旬まで、東川を訪れる人は今以上に期待できるでしょう。

もちろん冬場は人出が激減します。でも、あまりお金をかけずに開店し、例えば閑散期は夫婦のどちらかが給与収入を得るなどと工夫すれば、「東川で自営業」という起業形態は十分成り立つように感じています。

狙いはカフェやレストラン、セレクトショップなど、小さくておしゃれな店でしょう。内田樹さん、平田オリザさん、藻谷浩介さんらが指摘していますが、「女性を呼び込むことができる店」が強いと思います。

これ以外にも東川は泊まる場所が少ないので、民泊、ペンションなど宿泊系やアウトドア系もいいような気がします。実際、スノーボード専門店などの開店も相次いでいます。噂レベルも含めれば、町内では来年にかけて、これら以外にもおしゃれな店の開店情報がいろいろ聞こえてきます。

コヨミ舎はまだまだこれからですが、東川町が町全体として外から人を呼び込む力は相当ついてきているように思います。家具の町、写真の町だけに、木工や写真など特殊な技術を持っている人はもちろん、そうでない普通の人も工夫次第では暮らしていけるようになってきているのではないでしょうか。特に今年に入ってから、民間投資が小さいながらも活発になってきたと感じます。

注意が必要なのは、東川に移住して職探しをするのは、いささかスジが悪いように思えることです。東川や旭川で就職し、フルタイムで働いても手取り20万円未満が当たり前。これは政治の不作為で全国的に給与水準が落ちているため、どうしようもありません。東川町に可能性があるとすれば、サラリーマンではなく、自営業や農業でしょう。

ここから先はポエムがかった話になりますが、東川町の人口ピークは1950年(昭和25年)国勢調査で記録した1万700人あまり。この時、1次産業(農林業)従事者は全人口の8割に達しました。ところがこの後、農家の次男坊、三男坊が高度経済成長で沸き返る東京など都市に大挙して流出し、バブル崩壊直後の1994年(平成6年)3月末には6900人台まで減りました。今、1次産業従事者は3割に満たないと思います。地方都市はどこもそういう状況でした。

東川など地方から都市に出た農業や商店の後継者たちは、多くが都市で職を見つけ、サラリーマンになりました。思えば高度成長期からバブル経済までの日本は「1億総サラリーマン化」の時代でもありました。人口減少時代を迎え、これが逆回転しつつあることを、人口が増え、元気になってきた東川町にいると感じます。

東川町がさらに元気になっていくか、コヨミ舎がうまくいくかは、なんともいえません。ただ、これから20〜30年くらいは厳しい状況が続きそうなこの日本で、成長や効率を追い求めるのではなく、「つつましくも楽しく暮らす」といった価値観を提示し始めている東川町には可能性を感じています。

経団連や大企業から「終身雇用を続けるのは難しくなった」との声が聞こえてくるように、成長重視の高度経済成長モデルはとうに終わりました。私見ですがこの半世紀に渡って続き、行き過ぎた感がある都市への人口集中とホワイトカラー偏重の時代が、ようやく是正される時期に差し掛かっているような気がします。

そうした是正と調整の時代が始まっているとすれば、自営業や農林水産業などサラリーマン以外の選択肢がある地方都市の将来性に賭ける価値は、以前より高まっていると思います。そして将来、ある程度の人口を擁して小さいながらも自立する経済圏が全国のあちこちにできることが、これから縮んでいく日本に必要なことだとも思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?