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創発的アーバニズム 高架下を探索する〜東京編〜

以前から気になっていた高架下の有効活用について研究してみたくなったので、フィールドワークを中心に調査してみた。


まず高架下の定義について整理したい。

高架下とは:高架橋の真下に位置する土地・空間を指す
高架橋は、独立した鉄道や道路の交通網を作るうえで建設されることが多く、特に高速鉄道や高速道路といった高い速度を求める場合に多く用いられる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%9E%B6%E6%A9%8B

つまり、高架下とは鉄道や道路の高架橋の下の空間のことを指し、特に都心部や駅周辺などの通行量が多い場所では高架下の有効活用として、店舗などに使われることが多い。倉庫や事務所として使われているところも多く、最近はあまり見ないが住宅が入っている例もよく見かけた記憶がある。

今も残る高架下住宅

こちらは神戸市灘区の阪急高架下。王子公園駅から西(三宮方面)にいったあたり。1階を事務所や工場、店舗などに活用していて2階を住居としている例。こんな風景がちょっと前までたくさん残っていた気がする。

灘区・阪急線高架下建築03

中央線東小金井駅の高架下には「中央ラインハウス小金井」という学生向け賃貸住宅がある。

同じくJR東日本では、秋葉原-御徒町駅間の高架下にある商業施設「SEEKBASE」にホテル「UNDER RAILWAY HOTEL AKIHABARAも併設されている。

広場としての利用

公園や空き地などが少ない都心では高架下空間を広場として活用する例も多い。京王電鉄井の頭線の下北沢駅近くの高架下再開発までの3年間限定のイベントパークとして活用されていたのが「下北沢ケージ」。フリーマーケットやライブイベントなどが行われていた。
今は「ミカン下北」という商業施設になっている。

高架下空間の有効活用は多くの事例がある。NHKでも特集番組が放送されるほど注目されている。

高架「上」の活用方法

高架下ではないが高架の上を利用した例では、高架線路跡地を空中庭園に再開発したニューヨークのハイラインの例がある。

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ちなみに銀座を走る東京高速道路(KK線)でも空中回廊「Tokyo Sky Corridor」に整備する予定があり、期間限定で「銀座スカイウォーク」というイベントが行われていた。

高架橋の構造について

次に高架橋の構造について。
多くは橋桁で橋面を支える桁橋の構造が多く、桁橋のことを英語でGirder bridgeということから日本語の「ガード」はこれに由来するらしい。
日本に最古の高架鉄道として現存するのは、東京駅から新橋駅まで続く高架下(1910年開通)。ここは煉瓦アーチ造(煉瓦造連続拱橋工法)になっている。

出典:鐵道院東京改良事務局「東京市街高架鉄道建築概要」, 鐵道院東京改良事務局,1914年

新橋から東京駅まで歩く

日比谷OKUROJI

新橋駅付近の新幸橋からまで帝国ホテルの裏あたりまで続くのは、全長300mの高架下空間「日比谷OKUROJI」。
煉瓦アーチ造の空間を活用した店舗が軒を連ねる。
よく見ると、煉瓦アーチ造の横に、コンクリート造の高架が並んでいる。明治時代以降線路が拡幅されたことによって高架が増設されたのがよくわかる。
ちなみに私は今から25年以上前の大学生時代にここの高架下にある弁当配達のお店でアルバイトしていた。

ガード下飲屋街

有楽町駅方面に北上するとここからはいわゆる「ガード下」の飲み屋街が連なる。
高架橋を突き抜けるトンネル上の通路を活用した居酒屋「もつやき登運とん」。通路にはみ出した座席がいかにも自然発生的な風景に一変する。

有楽町から東京駅の間には並木が連なる

有楽町駅を過ぎるとまた雰囲気が一変する。そして細かく分けると山手線の内側(丸の内側)と外側(銀座側)では雰囲気が全く違う。

丸の内側は旧東京都庁舎があった東京国際フォーラム沿いに並木がならんでおり、チェーン店系の飲食店が立ち並ぶ。
煉瓦アーチ造は現存しているが、道路にはみ出すように鉄とガラスの構造体が張り出しており、煉瓦風のファサードになっている。

よく見ると古い煉瓦造の構造体の隙間から植物が生えており、少しながらの自然を感じることができる。

銀座口はアーケード街

有楽町駅銀座口を出てすぐの高架下はお店はなく通路として使われている。
この高架橋は同じJRでも新幹線の高架橋。つまりJR東海の管轄になる。東海道新幹線が開通したのが1964年なので、高架橋が開通されたのに伴いこの辺りも一変したことが伺える。
新幹線線路と有楽町マリオン、丸井前広場にある三角地帯には古くからの中華料理店などが残っている。新幹線高架橋をアーケードのように活用している例と言える。

有楽町にコルビュジェ?

有楽町京橋口付近には、新幹線高架下に2階建の商店が連なる。これまでのような長屋建築ではなく、一体型の建築であるのが特徴。
白く突き出したキャノピー(上部は室外機置き場)がル・コルビュジェのサヴォア邸を彷彿させなくもない。

しかしなぜか途中にあるスターバックスだけが新築のガラス建築。

さらにディープな有楽町高架下

さらに東京駅方面に進むと「有楽町高架下センター商店会」の入り口へ。

とんかつ屋、カレー屋、ラーメン屋、食堂などサラリーマンのお腹を満たしそうなお店がたくさん。中には雀荘まで。

番外編:高速道路の高架下空間

ちなみに前述の東京高速道路(KK線)の下も商業施設になっている。
ただ、この道路は銀座周辺を流れる外堀、汐留川、京橋川を埋め立てて道路を作った際にその下を商業施設にしてテナント収入で道路の維持管理をしている。なので高架道路下の有効活用というよりは、商業施設と道路を一体的に整備したという点で他の高架下とは成り立ちが異なる。
銀座インズ、銀座ファイブ、銀座コリドー、銀座ナインなどの商業施設が連なる。

今回は、高架下の事例を中心に特に新橋〜東京駅までの高架下を調査した。
次回は神戸の高架下の中でも元町駅〜神戸駅につながる元町高架下(通称:モトコー)と三宮駅〜元町駅間の「ピアザ神戸」について調査をしたい。

以前書いた参考記事:高円寺駅高架下「高円寺駅西商店会」


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