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【1期生最終発表会を終えて】ピアサポートでは得られないもの

プログラムリーダー:佐藤絵理

シングルマザーズデジタルキャンプ最終発表会を開催しました

シングルマザーズシスターフッドでは、今年の5月から、デジタルスキルを活用して「自分らしくはたらく」を目指す、10~30代の若年層シングルマザーを対象とした支援プログラム「シングルマザーズデジタルキャンプ」に取り組んできました。(本事業は2022年に一般社団法人グラミン日本が休眠預金等活用法に基づく資金分配団体として採択を受けて実施する「シングルマザーのデジタル就労支援」事業の一環です)

先日、インテンシブコースの1期生が終了し、10月7日に最終発表会がおこなわれました。

私は普段は大学院で研究に取り組んでいますが、今回は、プログラムリーダーとして発表者のみなさんに伴走をする機会をいただきました。

当日は7名のプログラム受講生が5〜9月までのプログラムで得たことや自分のこれからについて発表しました。

受講生の中には、パソコンやオンライン会議システムに触れたことのなかったメンバーもいましたが、シングルマザーズデジタルキャンプを通じて、あっという間に使いこなせるようになっていきました。

この半年で、仲間と一緒に様々な課題に取り組む中で、それぞれが叶えたい「自分らしくはたらく」を実現し、これからのキャリアを堂々と発表する姿に胸が熱くなると同時に、発表者の皆さんを誇らしく思いました。

また、オンライン発表会の場に早朝から集まってくださったみなさまの温かいコメントに、発表者もスタッフも大変励まされました。

あらためてこの場に集い、門出を祝福してくださったことにとても感謝いたします。

3年前の発表会の思い出

みなさんの発表を聞き、わたしも3年前、同様のプログラムで発表を経験したことを思い出しました。

当時、私はシングルマザーでありながらも大学院に進学することを決めており、仲間にも「がんばって!」と応援してもらい、その挑戦を認められていましたが、心のどこかでは、社会通念上では、シングルマザーという立場で、大学院に進学することは許されないことなのではないだろうかといつも思っていました。

発表を終えた直後も、自分は「随分と今後の人生について大それたことを言ってしまった」と思っていましたが、その後にいただいたコメントは、「大学院なんてそんなの無理だ」「現実を見ろ」などといった心無い言葉ではなく、「あなたならきっとできる」といった、決して冷やかしではない言葉と温かなまなざしでした。

それらの温かい経験によって、自分自身の選択を肯定してもらえたような感覚を抱き、社会に私自身が認められた経験になったことを思い出します。

ピアサポートでは得られないもの

最後に、この最終発表会の意義として、「ピアサポートでは得られないもの」についてお伝えさせてください。

シングルマザー同士の励ましは大切です。

シングルマザーズシスターフッドで積極的に取り組んでいるグループリフレクションなどのピアサポート活動の前後に実施した調査では、活動後に自尊感情の得点の上昇がみられるなどとてもポジティブな効果が得られています。

しかし、シングルマザーだけに閉じられたつながりには限界があることも、わかってきています。

私たちが取り組んだ『ひとり親けんこう白書』の調査の一環でおこなわれたシングルマザーへのインタビュー調査では、社会への信頼を取り戻したきっかけとして、「シングルマザー当事者以外の他者」をあげていました。シングルマザーのピア同士の関わりだけでは、失った社会への信頼感を取り戻すことはできないことを示唆しています。

社会への信頼感をとりもどす

一方で、シングルマザーに対する差別や偏見を受けた経験から、社会や人に対する抵抗感や拒否感を抱く方も多く、社会への信頼感を取り戻すことは非常に大きなハードルとなっています。

そのため、最終発表会はこれまで仲間同士で切磋琢磨してきた内容を「シングルマザー当事者以外の他者」とはじめて共有する大切な機会となっています。

シングルマザー以外の他者に自分の人生やビジョンを肯定され、温かな声援を得たという記憶は、彼女たちが困難として抱えている人や社会と関わることの抵抗感や恐怖感を和らげるものとなったでしょう。

これからも彼女たちを温かなまなざしと言葉で励まし続けていただければ幸いです。それが、彼女たちの明日を生きる力になっています。

日頃からシングルマザーを応援してくださっている皆様に心から感謝いたします。

佐藤絵理

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