ファイト!!
執筆者:さとじゅん
「今日お友達にうんこって呼ばれたよ。どうして私とママは違う肌の色なの?」
泣きながら話す娘を、私も泣きながら抱きしめることしか出来なかった。
選択的シングルマザー
娘の父親にあたる人は日本人ではない。妊娠が分かった時に出産を反対されてから数か月悩み、やっぱり私はこの子を産みたいと思った。
生まれてくる娘はミックスで、肌の色や髪の毛質も私と同じではないかもしれないことも想定の上で出産し、シングルマザーになることを選択したのだ。
出産直後から、娘の見た目に対する周囲の反応は私には経験がないようなものばかり。見知らぬ人からよく声をかけてもらい「可愛いですね」と言われることも多いが、同じミックスの子ども達が冷たく心ない言葉に合っているという現実を聞くたびに親としてはネガティブなほうが優先になり「娘が出来るだけ傷つかないように」との想いで環境選びは慎重に考えるようになった。
まずは保育園をどうするか。
可能性がある保育園は全て見学した。重要視したのは、娘の状況が事細かにわかるように保育士との対話が出来ることだった。
幸運にも第一希望の保育園に無事に入園し、安心して預けられることで仕事に邁進することが出来ていた。
やってきた試練
年齢が上がり自分の思っていることを言葉に出来るようになると、娘に対して心ない言葉をかけるお友達が増えてきた。次第に娘は、私やお友達と肌の色や髪の毛の質が違うことを気にしはじめるようになる。
私が使っている日焼け止めクリームを顔中に塗って真っ白な顔で保育園に行くようになったり、お風呂上がりにしきりに鏡をみて髪がまっすぐになるようにとかし続けたりしていたが、この時点では女の子の美意識くらいにしか思っていなかった。
娘の心の声を知ったのは、娘が大好きな私の姉と一緒にお風呂に入っていた時。お友達に「茶色い人は、い~れない」とか「髪がもじゃもじゃな人とは遊ばない」と言われていると話していたことを後で聞き、母親である私には本当の悩みが言えなかったことも知った。
その後も保育園からの帰り道に泣きながらお友達から言われたことを話すことが増えたが、私はただ話をじっくり聞き、娘のことを抱きしめることしか出来なかった。
年長に進級する頃、意を決して、お友達から心ない言葉を掛けられる度に娘が傷ついていることを保育園に相談に行ったが、「うちの保育園ではそのような事実はありません」という言葉で片付けられてしまった。
その後も娘への心ない言葉の回数は増え続け、泣きながら帰ることも増えていく。
私を救ってくれたアドバイス
途方にくれていた私は、シングルマザーズシスターフッドのキャンペーンで出会ったインターンの女の子に相談した。彼女はカナダで生活していたことがあり、日本よりは多様な人種に触れ合う経験をしていた。私達親子が直面している問題に対して、経験から違う視野で意見をしてくれるのではと直観で思ったのだ。私も藁をも掴む想いだった。
彼女からのアドバイスは二つあった。
①娘にとって居心地のいい環境を出来るだけ作ってあげること
②もう一つの国のルーツを知ること
この状況を変えたいと思っていた私の心にすっと入ってきて、早速一つ目の実践に移した。
すぐに始めたこと
身体を動かすことが好きな娘を地元のバスケットクラブに入団させることにした。未就学児はほとんどいないが、自分より年上の小学生と一緒に身体を動かし、目標に向かって練習するということが楽しいようだ。通いはじめて半年近くになるが、身体も心もほんの少し強くなったように思う。
もう一つは、週末を全力で遊ぶことだ。登山・キャンプ・サーフィン・公園でアスレチック…。時には周りのママ友と皆で遊びに行き、全力で楽しむ。去年までなら週末は疲れてだらだらしていることもあったが、今では平日と週末にメリハリをつけて、私もとにかく全力で遊び、一緒に楽しむ。「世の中に楽しいことが沢山ある」ことを感じて欲しいと今も思っている。
少しずつだが、保育園で心ない言葉に直面しても帰り道に泣く回数が減り、「茶色いゴミって言われたんだ」と平然とした顔で私に話してくれる。「言われた後どうしたの?」と私が聞くと、「別の楽しい遊びを考えて遊ぶの。そしたら別のお友達が沢山集まってきて一緒に遊ぶの」と気持ちを切り替えるコツを教えてくれる。
娘の本音は分からないが、その逞しさに私が毎回泣きそうになる。
そして、二つ目のもう一つの国のルーツを知ることは、私にとって難しい課題でまだ実践できていないが、周りの人にアドバイスをもらいながら親子で立ち向かっていきたい。
これから
娘への心ない言葉との闘いは、残念ながらこの先も続くだろう。
大丈夫。どんなことがあっても必ず居心地がいい場所はあって、心ない言葉に遭った時は、一緒に闘い続けるよ。娘の未来をずっと明るく照らし続けるのが私の一番のミッションだと思っている。
ふたりが大好きなこの曲を熱唱しながら、これからも闘い続けたい。