【映画】デーモン・インサイド

デーモンインサイド

2018年のカナダ発のスリラー映画。監督はまだ弱冠34歳のColin Minihan。映画自身も監督も、日本語版のWikipediaがまだ作成されておりません。そして劇場初公開は何故かブラジルで・・・という謎の多いこの映画ですが、配信サイトでは割と見かけます。若い監督にとっては良い環境ですね。

あらすじ:カナダ人の同性愛(女子)カップルが、新婚旅行先で見舞われる惨劇・・・もとい、惨劇に見舞われてしまうのは片割れのジュールズ。豹変した嫁に崖から突き落とされるところからスタートし、一命を取り留めたはいいがライフル片手に追いかけ回されるわ、ボートでも追い回されるわ、目の前で知人を惨殺されるわ・・・果たしてジュールズは嫁の魔の手を逃れることができるのか??

嫌な見方なんですが、設定としてはありそうな内容だし、登場人物もメインの2人に、殺され要員の友人夫婦2名だけ、場所は隔離された湖畔のロッジ・・・と、低予算映画の条件を存分に満たしています。

だがしかし! これが予想に反して面白かったのです。

愛する嫁がマジモンのサイコパスだったときあなたはどうする? というある意味究極の問いをこの映画は投げかけてくるわけですが、ひとつミソだなと思ったのは、設定がレズの夫婦であること。

もしこれが男と女のカップルで、女がサイコパスの設定だったとしましょう。その場合、絶対に男はすぐに「殺られるなら殺っちまえ!」とならないと思うんです。まず、めちゃくちゃ男泣きに泣いて悩んで頭抱えて苦しむフェーズがあります。で、しゃーない殺っちまうぞと決心がつきます。で、女を逆に罠にかけて捕まえるでしょう。しかし、いざ捕まえた瞬間に女がみせた、昔のような、か弱い子鹿のような表情・・・手を緩めて、ああダメだ、俺はこの子を一生守ってやるって決めたのに・・・みたいに感極まってしまう男。そのスキにザクッと頸動脈をやられて返り討ちに合う・・・そんな展開が目に見えます。

では男がサイコパスだったとしたら? まず勝負にならないのではないかと思います。対等に戦うためにはよほど嫁側に、生き残るための能力があることを裏付ける設定がないと難しい。ロッククライマーだとか、元海兵隊員だとか・・・その時点で旦那側も何かしらの対策をしそうではありますが。しかし設定次第ではギャグ映画になりかねません。(そういう映画はあってもいいと思います)あと、男のサイコパスには単純な猟奇性しか感じられないので、それだけで面白い題材になるかというと難しい気がします。もうひと工夫必要になるでしょう。女同士だから対等に弱く、条件次第で対等に戦えることに説得力が出ているなと思いました。

そして、やっぱりいちばん良かったのは殺人鬼ジャッキーの内面の描き方ですね。

ジャッキーの心の中にどうして悪魔が生まれてしまったのか。

その理由として、幼少期のある事件がきっかけだったことを示唆されているのですが、人がこんなふうに死に魅入られてしまう瞬間って、確かにあるかもしれないなと思わせられました。そして、その悪魔の存在は、舞台であるカナダの森の奥深くに潜む野生の獣の息遣いと、奇妙に、絶妙にシンクロしています。

低予算映画と侮るなかれ。

ちなみにこの映画をネタにした配信がありますので良ければお聞きください。

ではではまた。

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