見出し画像

一人百首

お鍋をつつきたい。

twitterに書いてたやつとここに一時期載せていた短歌をざっくばらんに纏めました。
順番は大体時系列順です、宜しければご拝見頂けたら幸いです。
自己紹介はいつになるのやら。
良い年の瀬をお過ごしください、よいお年を。
 
 

 

 

1 再び会いまみえるならば地平線から暁で白なる海


2 「暑いのは僕のせいだ」と白波は告げられ水面朱に染まりゆく


3 乾涸びた紫陽花横目に真っ直ぐな君へ続く線路を歩く


4 桃色の空に響いた試し撃ち袖掴みせかす幼き日々


5 超えると越えないを通り越した黄色い線から電車を見送る


6 「月が綺麗ですね」と言ってみたい空の360°(さんびゃくろくじゅうど)なぞり


7 ウツシヨを彼岸に去りゆくこの夏に赤き花をと鈴の音哭り


8 夏の終わりに鬼雨振りて抜けた先の秋茜の空紅々と


9 再び会い見えるならば地平線から暁で白なる海


10 気づくのはいつも後からだったのよ鼻先に残るキンモクセイ


11 頬の窪みに雨降り続き苔生した今笑み深め笑う月


12 もう駄目と三角ピザの切れ端は項垂れたままミシン目分かつ


13 丑三つ時電子の海を漂へば鳥共囀りゐと楽し


14 切れ味の悪い刃物で三千の僕を殺せば一人の朝を


15 白線の上をカラスが千鳥足でかき混ぜる道を歩く昼


16 ふと思い髪の分け目を変えてみるそんな軽さで夜になりたい


17 書き損じ跳ねたインクをそのままに吐き出したるは剥き出しの黒


18 朝も昼も夜もない頃ぼくは起きたよおはよう/おやすみなさい


19 テーブルの上のトークで欠かせない視線の交差キスより長く


20 右耳のピアスホールを感傷が吹き抜けてゆく秋の夜長に


21 木々達も血を滴らせ枯れてゆく死は形態の一つの形


22 半分の月の線上超えてゆけ地続きの裏脱兎の如く


23 慟哭を忘れるなかれ咎人の白き翼が生えてたことも 


24 この夜を抜けたら翼が欲しい、叶うならばと口ずさむ歌を


25 乳白色のミルクの中で目覚めたならばと毛布に包まる日


26 枯れ落ちる紅葉のような瞬間の分岐点探すメメント・モリ


27 終わらない歌を歌い続けたい/明けない夜がずっと来ればいい


28 雲間を抜けてお月さまに住む兎まで届け手紙の飛行機


29 屋上のトランポリンは二百円で宇宙を旅する無重力


30 うまい棒でお腹満たした駄菓子屋へ買いに走った幼い日々


31 カーテンの向こう側からお星さま白々と流れてくればいい


32 なんにだって違いはあるから朝と夜の境界に隠しきれず


33 一人の朝と孤独な夜/似てるようで違う真昼の星みたく


34 狙う的当たらないからいっそもう強張らず肩の力抜いて


35 ぼくの左心房から日が沈んだら世界はやっと色づき始めた


36 母ボタンぼくがアヤメとスミをいれなんだかんだと母子と思う


37 エーテルが至るところに満ちていてアカ抜けた木々春に蓄え


38 哀れなコギトは矛盾を孕んだ(いつも心は雨粒のように)


39 アンドロイドも夢を見るだろ/我々はそれをロマンと言うのだろ


40 どこまでも入れ替わりゆくこの体未来へ進む渡しの船よ


41 明確な殺意を持って冥王星デブリ蹴散らし身を隠した


42 空きっ腹に流し込んだブラックが朝の光みたく胃に沁みる


43 つららほど冷たく尖ってしまうから春が来るまで冬眠したい


44 月明かり雲間を覗く少しだけ微かに見えた確かな未来


45 野良猫に絡まれる道通いつめバイバイまたね少し寂しい


46 とくに花は好きじゃなかったけど花屋さんにはなりたかった子です


47 包丁を初めて握った時ぼくは料理するため握ってない


48 空見上げ月を見ている僕たちの口もぽっかり満月みたい


49 十六夜の月の光が染み込んだ夜風を吸って月になりけり


50 いつだってラストアルバム出すつもりで生きてる気持ちで息してる


51 書きはじめ「柿食えば」から考えてみたけれどぼく柿苦手です


52 朝焼けに身を焦がされ溶け出したのは凍傷の心への謝罪


53 刺さっていたつららは抜け落ちたような気がした朝焼けに抱かれて


54 終電逃した夜の街歩く僕の足音夜中のスキャット


55 香水の臭い高まる雨の中厚い化粧も流れてしまえ


56 笹の葉の切っ先に溜まる雨水が尖るように落ち目が覚める


57 青竹を割ったような空の青/蜘蛛の巣は風に揺れきらめき


58 雲ひとつない空だから蜘蛛の糸垂れたかのように延びる陽射し


59 日時計をいつも僕らは常備して/縛られている蜘蛛の巣の蝶


60 曖昧なものをそのまま受け入れた夕焼け見ると目に染みるんだ


61 傾いた夕焼けが影引き伸ばし未来も過去も薄れてゆくよ


62 日が沈み街灯ちらつきだす前に帰りたかったと鳴くカラス


63 まだ何も済んでないから澄み切れず踏み切れぬまま行ききれぬ性


64 冬に備えて柴犬もオナモミのようにモフモフとふくれている


65 飛ぶために力をつけたたんぽぽよ春へ飛べアワダチソウ越えて


66 秋風に寒さを感じ甘いラムをホットでいただく(レモン入り)


67 青空の下堂々と寝転がる猫になりたいなるんだ/みゃあお


68 丘山の緑は未だ萌えていて暮れる陽が朱に染めあげんとす


69 暮れなずむ街並みを背に生と死はどちらにするか今日も境目


70 悲しみが多すぎたから日が暮れる前におくる言葉を綴ろう


71 建付けの悪い扉を無理にとじ開け閉めも出来ぬ心みたい


72 朝焼けが明星空に射止めれば濃い夜の酔いいくらか醒める


73 君のその弱さは君の武器になるから扱い方を学んでおいて


74 葉脈に我が血一滴落としたら毛細血管見えるモーション


75 半分の月は半身追いかけて時計回りにくるくるくるり


76 まあるい目を丸洗いした眼窟には小さな海が波々と


77 陽炎口から吐き出せばモクモクモク僕も煙巻き溶けてゆく


78 一人でhide and seek 僕はどこここはどこ君は誰そ彼


79 sun set on the horizonはテトラポットを山吹に染め上げて


80 菜の花の絨毯の上に落ちるワイシャツのような気持ちなの


81 襟足を刈り上げる時の心情は桃の柔毛を意識して


82 小降りな天照雨が地を濡らし刹那に渇いた四月過ぎ行く情景


83 バスの中春の木漏れ日うつりこみ開いたページに虫食い穴


84 夢語る真剣な君の顔つきと曇らぬ眼に光見て


85 一文字初めて夢を語るには冷たき雨と美味しいご飯


86 一呼吸も置かずに無拍子で奏で続ける雨のオーケストラ


87 この雨を流した者が貴方なら私も雨を降らすから泣けよ


88 この雨が君が流した涙なら傘などいらず雨に唄えば


89 涙の代わりに降る雨は一体誰の代わりに泣くのだろうか


90 悲しげに降る雨の中向日葵は涙隠さず面と向かって


91 枯れ土に雨落ちて泥になるならばほどほどでいいほどほどで


92 月落ちた夜に兎は帰れずに泣いているから悪びれた風


93 誰だって優しい歌が好きなのさ山に登って魚が歌う


94 お使いを頼まれたから母親のゴム草履借り「おんなじサイズ」


95 1×1が1しかないように誰といようと凪いでいる帆か


96 髪を切るときの心情久々にスタジオ入る前の緊張


97 「夕焼けが綺麗だつたの」さふゐつて流した君の涙が綺麗


98 まだ開けぬ夜があるから星達は一際光り目標となり


99 寂しさはとうの昔に擦りきれて雨に流れた涙とともに


100 讃美歌が月向こうからふんわりと聞こえるような優しい夜を

 

ここまで拝見いただき誠にありがとうございます。
そのうち二回目やりますのでよろしくお願いいたします。
それでは、また。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?