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土曜日なのに仕事を頑張って帰宅したら塩釜のカナガシラと太刀魚のお刺身が待っていた

 いつもなら週末はドライブがてら夫婦で食材の買い出しに出かける我が家。しかし、先週は私が土曜日も出勤、日曜日は二カ月ぶりの美容室予約をいれていたので、一緒に買い出しに行く時間が取れそうに無かった。
 「大丈夫。たまには俺が一人で買い物しておくよ。」
 そんな夫の言葉に甘えて仕事に向かった土曜日の夕方。帰宅すると、夫が「ごめんなさい!」
という。
「何?何か壊した?怪我した?大丈夫?」
 慌てて聞くと、そうではないと言う。
「買い過ぎちゃった」
 夫の言葉にほっとした。
 私もそうなのだが、夫も日頃から贅沢なブランド品等には全く興味が無い人間である。性格的に散財出来ないタイプと言った方が正しいかもしれない。そんな夫なので、買い過ぎたと言っても生活に支障をきたすような過度な出費はしていない筈。

 とはいえ

 夫婦揃って、質素倹約からは程遠い数十万円の高級ギターを所有していたりもする。日頃は散財しないものの「これは!」というものを見つけた時には生活に支障をきたさないギリギリの上限まで財布のひもを緩めてしまう可能性はある。
 買い過ぎたのは、ウニかアワビか。びくびくしつつ、けれど、ちょっとワクワクもしつつ、「何買ったの?」と私は尋ねた。
 夫は黙って冷蔵庫を開けた。と同時に私は歓声を上げた。
 冷蔵庫に入っていたのは、塩釜仲卸市場でお馴染みのお刺身の大きなパックがふたつ。しかも、そのうち一つは私の大好物のカナガシラ、もう一つはまだ食べたことの無い太刀魚のお刺身だった。

「太刀魚とカナガシラ、どっちもお刺身があって、選べなかったの。しかも、ふたつとも買っても、1,000円しなかったの。」
 
 家計に配慮しつつ妻の好物をチョイスし、さらに初めてのお魚を選ぶセンス。ごめんなさい不要案件である。むしろ感謝倍増・愛おしさ増し増し。
 この人と一緒になって良かったとあらためて思った。金銭感覚が近いのは本当にありがたい。そして、安くて美味しい魚が身近にある暮らしは幸せだ。

 その夜は、冷蔵庫に残っていた賞味期限間近の鶏むね肉も焼いたので、夫婦二人で食べるにしてはやけに豪勢な食卓になった。

申し訳程度にプチトマトとズッキーニを添えてバランスを取る


 塩釜仲卸市場で買ってきたお刺身二種。まずは、カナガシラから。

塩釜港直送!カナガシラのお刺身

 
 身がとても柔らかい上に骨やウロコが固くて処理に手間がかかるせいか、あまり多く流通してはいない魚だが、煮ても焼いても唐揚げにしても美味しい。もちろん、刺身も。
 ふっくらと柔らかな身が口の中で溶ける。脂っぽさはほぼなく、あっさりとした甘味と旨味がふわりと口の中に広がる。
 美味しさに感激したのは勿論だが、初めてこの魚を知った時に捌く苦労を実体験しているので、あのカナガシラをよくぞお刺身に、と思うと魚市場の方々へのリスペクトの念がわいてきた。

 そして、太刀魚のお刺身。

宮城の新名物!こちらも塩釜港直送・太刀魚のお刺身!!

 刺身ではない太刀魚はスーパーで見かける機会も多く、これまでに何度か購入して塩焼きで美味しくいただいていた。しかしお刺身は今回が初めて。
 食感にビックリ!
 弾力のある皮と柔らかな身が口の中で踊るようで楽しい。
 そして、美味い。噛めば噛むほど上品な甘みが広がる。高級な白身魚のお刺身をいただいているような美味しさ。
 好きなお魚がまた増えた。

 調べてみると、太刀魚の漁獲量は愛媛県が最も多く日本国内の主な産地は瀬戸内海とされている。しかし、近年は温暖化の影響もあって東北での漁獲量も増えてきており、特に宮城・石巻では高値で販売するための取り組みをすすめている漁師さんのことが昨年秋にニュースでも取り上げられていた。
 地元の美味しい魚を手頃な値段でいただけるのはありがたいが、手ごろな値段ばかりでは生産者の方々は生活出来ないのだから、難しいところである。そんな中、様々な取り組みで美味しい海の幸の販路を拡大している漁業関係者の方々は、素直にカッコいいと思う。
 最近はEUへの輸出制限撤廃という嬉しいニュースもあった。
 これから先、東北の海の幸の販路はどんどん拡大されてゆくことだろう。実際、最近は欧米からの観光客の方々が地元の市場や海鮮系の居酒屋で食事を楽しんでいる姿をよく見かける。

 けれど、海外だけでは寂しい。

 東日本大震災の津波による大きな被害、さらにコロナ禍に伴う観光客激減の影響という大波を不屈の精神で乗り越えて来た東北の水産業の方々の凄さとカッコよさ、そして海の幸の美味しさが、もっと日本全国各地に伝われば良いなぁと思う。

 私は漁業関係者ではないただの魚好きの一般人だが、こうして「美味しかった!」と情報発信することで、魚に興味を持つ人が増えたら嬉しい。そして、実際に食べて美味しさを実感する人が一人でも増えたらなお嬉しい。

 個人的に「食べて応援」という言葉はプロの生産者の方々に対して傲慢に感じられて好きではないが、食べて美味しかったものを紹介することが、生産者の方々へのささやかな恩返しになればと思う。

 カナガシラも、太刀魚も、美味しかった。
 おススメです。

 


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