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【プロレスエッセイ】趣味が重なり過ぎて歯止めがきかなくなっている夫婦の風景

 2月20日、X(旧Twitter)を見ていた夫がおおっと声を上げた。

 「なした?(北海道弁で「どうしたの?」の意味)」

 私が尋ねると、夫が嬉しそうにスマホを差し出す。
 そこに表示されていたのは、DDTプロレスリングの仙台大会のお知らせだった。

半年ぶりに夢メッセみやぎ西館ホール大会開催!

【大会名】DRAMATIC DREAM TOUR 2024 in MIYAGI
【日時】2024年5月12日(日) 開場 15:00 開始 16:00
【会場】宮城・夢メッセみやぎ西館ホール
【席種】特別リングサイド 7,500円(当日8,000円)、指定席 5,500円(当日6,000円)、U-18チケット 1,000円(当日のみ/要身分証)、中学生以下無料チケット 0円(当日のみ/要身分証)
※車椅子をご利用の方はお手数ですが ddt@ddtpro.co.jp までご連絡をお願いします。
【販売場所】公式チケット購入フォーム、チケットぴあ、ローソンチケット、e+ほか
※UNIVERSE会員先行&LINEメンバーシップ先行受付=2月22日(木)12:00~2月26日(月)12:00、一般販売=3月9日(土)~。

DDT公式サイトより


 「席、どっちにする?」

 私が即座に尋ねると、夫は噴き出した。

 「行くかどうかは確認しないのか!」
 「いや確認するまでも無いでしょ。行くしょ?」
 「そりゃ行くけど。」

 笑いながら、夫がしみじみと言う。

 「しーちゃん、もうすっかりDDTにハマったねー。」

 確かに。
 数年前まではノアと大日本ばかり見ていた私だが、今では一番多く見ているプロレス団体がDDTになっている。
 幸せなプロレス沼を拡大してくれた夫に感謝である。

 そんな我々夫婦、これまで会場で観戦してきたDDTの試合は福島大会、両国国技館大会と遠征観戦ばかりだった。また、大きな会場でチケット代もそれなりに高額だったので、リングから離れた安い席での観戦だった。
 しかし、今回は私が北海道から宮城に移住してきて夫婦となってから初の、地元観戦。しかも会場は程よい広さの夢メッセみやぎである。

 「特リン(特別リングサイド席のこと)でも普通の指定席と2,000円しか違わないんだったら、特リンで良くね?」
 「じゃあ会員先行始まったら予約しておくね。(ちなみに我が家は夫がサムライTV加入中、妻がレッスルユニバース会員となり配信視聴を互いにカバーしあっている。役割分担、大事。)」
 「ありがとー!」

 と、予約する席種を確認した後、夫がやや真顔になって私に言った。

 「俺、もし前の方とかの席だったら、ディーノさんの入場の時、手、上げていい?」

 ディーノさん、とは、言わずと知れたDDTプロレスリングの男色ディーノ選手のことである。


 私も夫も大好きな選手。2/14新宿FACE大会でのチャンピオン上野優希選手とのタイトルマッチは夫婦で配信観戦し、二人揃ってディーノ選手の闘いに感動してボロ泣きした。敗れたけど最高だった。自分も頑張ろう、って力をもらえた試合だった。
 先日のタイトル戦は特別だったけれど、普段のプロレスの試合では必ず楽しませてくれるのが男色ディーノ選手。しかも最近では読み応えのあるnoteを頻繁に更新してくださっているのも嬉しい。
 そんな男色ディーノ選手は、客席にお気に入りの男性客を見つけるとリップロック(早い話がキスです)をかけるのが入場時のお約束。
 しかし、コロナ禍以降は多様性の時代を尊重し、男色ディーノ選手からキスされても良いという男性客は入場時に挙手をするのが習わしとなっている

 「もちろんっ!なんなら写真撮ってあげる!!」

 夫の決意、いやケツ意に大喜びする妻。
 そんな妻の姿に安堵の表情になり、そしてまたすぐ若干不安そうな表情を見せる夫。

 「でも、断られたら傷つくなー。」

 そう。男色ディーノ選手、挙手した全てのファンにリップロックをかますわけではない。そんな時間も無いし。

 「ディーノさん、結構イケメンだし、若い子好きそうだし。」

 いつになく弱気な夫。
 しかし

 「断られないよっ!うちの夫はイケメンだよっ!!還暦でも見た目が若いから大丈夫っ!!

 夫の不安を払拭しようと必死で励ます妻。
 そう、励ましているのだ。
 決して夫を生贄にしようとしているのではない、と思う。多分。

 とはいえ、後ろの方や通路から離れた席であれば、そもそも男色ディーノ選手が入場時に近くに来る可能性自体、低い。
 どうなるかねぇなどと冗談交じりに話しつつその日は会話を終え、その2日後の2/22、レッスルユニバースの先行予約が始まるとすぐに私はチケットを2枚申し込んだ。

 そして、

 本日。

 チケット予約完了のメールを受けて、私は仕事の昼休みに会社近くのファミリーマートでチケットを引き替えてきた。


 発券された座席は、


 最前列だった。


 楽しみだ。


 続きは大会後にnoteに書こうと思う。



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