こうはなるまいと思っていた「めんどくさい古参オタク」に自分がなってしまっていた話

私はVTuberが好きだった。

いや、有り体に言えば今もVTuberは好き━━なのだと思う。

私がVTuberというものの存在を知ったのは今から丁度3年前、2017年も終わりに近づく頃だった(と記憶している)。

今やVTuber界の二大巨頭と言っても良いにじ○んじもホロ○イブもまだ発足しておらず、バーチャル四天王を中心として企業勢と個人勢が入り乱れていた時代だった。

私はその世界に目を輝かせていた。

所謂2次元オタクというものを長年続けている人なら分かると思うが、生身の人間である私達がどれだけ推しへの愛を叫ぼうが、創作物に過ぎない推しは私達の愛に応えてくれることはない。その愛は一方通行に過ぎないものだった。

だがバーチャルという概念の登場によりその常識は覆された。

SNSで推しへの愛を叫べば推しがいいねをしてくれるし、配信でコメントをすれば推しが応じてくれる。2次元オタクが夢見た推しとの双方向コミュニケーションが実現したのだ。

それだけではない。バーチャルという概念の登場は、私達に「なりたい自分になる」足掛かりを与えてくれた。

悪を討つため戦う戦士、魔法で人々を救う少女、整ったルックスを持つアイドル━━誰もが一度は憧れた存在。そういったものに誰もがなれる。夢のような時代が来たのだ、真の意味で2.5次元の世界の到来だと、当時の私は心を踊らせた。

夢は覚めるものだと、そう気づかされた。

VTuberという言葉が生まれてから3年、かつての私と同じように夢を見ている人はいるのだろうか。

いや、もしかすると元々、夢を見ていたのは私だけだったのかもしれないが。

黎明期のバーチャル界隈は皆キャラクター性を大事にしていた。喋って動いている以上、所謂「魂」の存在は暗黙の了解ではあったが、それを感じさせない立ち振る舞いをしていた。皆「バーチャル」であろうとしていたのだ。

だが今はどうだろうか。今も「バーチャル」であろうとするVTuberはどれ程いるだろう。

SNSを見れば現実の写真をアップするVTuber、現実の○○に行ってきた、○○を食べたと報告するVTuberが当たり前になっている。酷いものになるとVTuberを名乗っているのに現実の自分の姿を映している人すらいる。

オフコラボという言葉がある。バーチャルにとってのオフとは何だろうか。オンとは何だろうか。私には分からない。

VTuber黎明期の頃、バーチャル○○という言葉が流行っていたのを記憶している人はいるだろうか。バーチャル東京、バーチャル関西、バーチャル遊園地...思えばこれも「バーチャル」であろうとするための創意工夫であったのだと感じる。今では死語になりつつあるが。

今のVTuberに抱いた違和感はそれだけに留まらない。バーチャルであることは「いつでも、誰でも、どこででも」推しに会えることだと思っていた。少なくとも私は。

だがどうだろう。VTuberのイベントは結局のところリアルイベントが殆どだ。現地の様子がweb配信されるイベントもあるが、その映像はあくまで現地の映像でありバーチャルではない。推しはバーチャルではなく両国にいるのだ。豊洲にいるのだ。

かつて2.5次元の究極系だと思っていたVTuberが今や2.8次元くらいになっている。バーチャルでも何でもなくニコ生主とアイドルを足して2で割ったものを2次元キャラでラッピングしたような存在になっていくのではないか。私にはそう思えて仕方ない。

ここまで長々とオタクのクソデカ感情に付き合わせてしまったが(そもそもここまで読む人がいるかも定かではないが)、私は今のVTuber界隈が嫌いになったというわけではない。推しの配信は今でも楽しく観ている。推しとの双方向コミュニケーションが失われたわけではないし、なりたい自分になる足掛かりが失われたわけでもない。

ただ、3年前と今とで大きくパラダイムシフトが起こってしまったVTuber界隈にかつての輝きを見出だせなくなってしまったのだ。

七面倒臭い感性をしていると、我ながら思う。ここまでバーチャルという言葉に拘りを持つ人間もいないだろう。考えを整理するうちにどんどん自分がおかしいのだと感じ始め、気付けばこの記事のタイトルを『バーチャルとは何ぞや、という話』から書き換えてしまっていた。今のVTuber界隈を素直に楽しんでいる人からすれば私は「厄介な古参オタク」にしか見えないだろう。かつてあれほど忌み嫌っていた厄介古参オタクに身を落としてしまっていたことを情けなく思う他ない。

それでもここまで3時間も時間を費やして書いてしまったし、どうせ読んでも20人くらいだろうから公開することにした。

読んだ20人のうちの1人でも「一理ある」程度に考えてくれたら私の3時間は無駄ではなかったと思いつつ筆を置く。

気が向いたら後で追記修正するかも

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