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#33 シーザチャンではなく、テイカチャンでよかった。

【33日目】シンガポールは基本がイギリス英語なので、アメリカ英語の日本人には、簡単な単語でも見慣れないものがある。特に店先の「Q」という看板が「ここに並んでください」の意だとは、辞書を引くまでわからなかった。「queue」(=line)の略である。【本帰国まであと67日】

 シンガポール人が話す英語は「シングリッシュ」と呼ばれるもので、耳慣れない人にとっては、よくわからない言葉である。

 私ををたずねてシンガポールへ遊びに来た友人は、生粋の日本人ではあるが、純英語圏の大学を修了したゴリゴリの英語スピーカーだ。

 しかし彼女は、美術館の案内係である中華系シンガポール人の言うことを、まったく理解できなかった。

「英語なら任せて! 駐妻Aに宿借りの恩返しができるよ。」と喜んでいた友人の心を公共施設の係員がへし折るとは、恐るべしシングリッシュである。 

 そして、書き言葉となると、イギリス英語であるので、街の看板がよくわからなかったりする。

 

 お店のレジのあたりによく「Q」と書かれたボードがある。

 Q...? なんか質問する場所? と最初は思ったが、

これは「queue」の略で、並んで下さいという意味である。

 日本人が中高で学ぶのはアメリカ英語なので、こんなに簡単な生活英語でも、わからないこともあるのだ。

 

 また、シングリッシュとはいえ、ベースはイギリス英語なので、日本人のアメリカ英語に突っ込まれることもある。

 ある日、"take a chance"という、なんということもない言い回しに、それはシンガポールでは使わないと突っ込まれた。

 オーチャードのシャネルショップには、"take a chance!"というキャッチコピーがデカデカと掲げられているというのに...

 では、どう言うのか?

 そのシンガポール人が言うには "seize a chance"だそうで、他にもいい方はあるが、とにかくtakeは使わないそうである。

 私は思った。

 もし、日本におけるブレイクダンスの生き神、風見しんご神の名曲「涙のtake a chance」が「涙のseize a chance」だったら、日本の歌謡界の歴史が変わっていたに違いないと。

 ナインティナインの岡村隆史氏はブレイクダンスに興味を持たず、オカザイルはもちろん、EXILEだって生まれていない可能性がある。

 やはり、日本はアメリカ英語で大正解だったと、しみじみ思った。


 シンガポール人はハリウッド映画が大好きなので、アメリカ英語が通じなくて困るということはない。

 あと、アメリカ英語使いには、絶対的にいいことがある。

 それは、同じアメリカ英語使いのフィリピン人と仲良くなれるという特典が付いてくることだ。

 フィリピン人は社交的で、好奇心旺盛、性格も明るい人が多く、話していて楽しい。

 英会話スクールの欧米人講師たちも、フィリピン人の生徒たちが大好きだ。彼らのふるまいには、多くを学ばせてもらった。

 実際、英語がうまいかどうかよりも、その人と一緒にいて楽しいかどうかが大事だったりする。

 英語が中途半端にうまくなるよりも、その場にいて、感謝されるような人になるためにお金と時間を使う方がいいと思う。

 そうすれば、信じられないようなチャンスがやってくる。

 シンガポールは年齢経歴問わず、チャンスにありつける場所だ。

 三十歳過ぎたらBBA扱い、子どもを産んでいなかったら非国民扱いの日本国とは、違う星に来たかのようなポジティブな価値観がある。


 怖れず、勇気を持って、シーザチャン、いやテイカチャン。 

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