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スズキエスクードハイブリッドを体験

スズキのハイブリッドおさらい

スズキのハイブリッドといえばマイルドハイブリッド。ちょっとバカにされていたのも事実だが、ヨーロッパ勢が手軽に電動化できるアイテムとして数多く採用し、以前より悪く言う人は少なくなった。軽自動車に関してはマイルドハイブリッドが適している。大きなバッテリーが不要だから少ないスペースを犠牲にしないし、ライバルと比較しても価格は同等にできている。その上、小排気量のためISGの効果を実感しやすい。乗ってみると確かにモーターがアシストしてくれているな! とわかる。しかし、小型車になると話は違う。1.2Lエンジンに軽自動車と同じISGを追加しても存在感は薄い。利点はアイドリングストップからの再始動がスムーズで静かなくらいだ。数値を見ても燃費はほとんど向上していない。私は正直これなら追加を払ってまで欲しくないと思うのだが、電動化を推進しているアピールも重要な現代において、どんなものであろうが一応ハイブリッドが用意されているカタチが大事なのだろう。

ただ、そのことはスズキも理解していて、なんとかハイブリッドらしい車を出したいという思いで、2016年にはソリオとスイフトにフルハイブリッド
を設定してみた。13.6PSというEV走行もできるモーターを採用したのだが、ミッションには5速MTをベースにクラッチ操作を自動化した5AGSを採用していた。クラッチを切ってつなぐ間が不評だったAGSだが、そこをモーターがアシストして息継ぎを少なくしたということだったが、それでも違和感は残った。また、フルハイブリッドにしてはモーターが非力だったため、完全に速度が乗ってエンジン停止、EV走行といった限定的なもので、マイルドハイブリッドよりはハイブリッドしていたとはいえ、毛の生えたようなもので、しかも価格が20万円も高かったので、まったく売れずに終わった・・・(失礼、まだスイフトで細々と販売中)。


ようやく登場したハイブリッドらしい車

エスクード 1.5 (ハイブリッドモデル)

スズキにとって悲願であるハイブリッドらしい車がやっと登場したと言えるのが新しいエスクードである。スズキはトヨタからハイブリッドシステムの提供を受ける予定となっているので、それまでフルハイブリッドは出て来ないと思われていたのだが、これで終われないと思ったのか、さらに改良を重ね、モーターも33.4PSまでパワーアップ。トルクも6.1kg-mを減速機で増幅させるので、排気量1.5Lエンジンに、軽のNAエンジンが上乗せされるくらいのイメージである。

<試乗の感想はここから↓>

ボタンを押すと普通にセルモーターでエンジン始動。ソリオのイメージがあったので、まったく期待することなく試乗コースに出たのだが、ありゃ? 意外にハイブリッドしてるというのが第一印象。

トヨタやホンダほどパワフルなモーターを搭載していないので、出足は必ずエンジンと一緒にモーターが動くが、それでも30km/h以上になると、積極的にエンジンを停止させて、モーターのみで走行する。加速する時にはエンジンのパワーが必要になるが、一定の速度で走行している時には、エンジンを停止させたり、発電のため動かしたりを頻繁に繰り返しながら、なるべくモーターで走行しようとしていた。バッテリーが十分にある場合は、かなり長い時間のEV走行ができる。30型プリウスに乗っていた私から見ても、EV走行けっこう長いと思う。そして、この車はしっかりハイブリッドだね!! と太鼓判を押せる。ブレーキを踏んだ時の回生感もプリウスのような音がした。久しぶりで懐かしい。

気になるところは、6速になったAGSだが、速度を落としてから再加速するときと、アクセルをグッと踏み込んだ時にはモタつくことがあった。また、バックに入れた時に現れる少しの間もATに慣れた人にとっては気になるところかもしれない。AGSの一番の弱点は1速から2速への変速。これはかなり良くなったが、エスクードでも気になることがあった。ただ、2速からの変速はメーターを見ずに走っていると、ほとんどわからないレベルまで来た。通常の6速ATと同等と言っていいと思う。少なくともソリオ、スイフトの時よりも万人におすすめできるようになっただろう。

エスクードハイブリッドのエンジンルーム


パワーは不足しているのか?

エスクードはスイフトスポーツと同じ1.4Lターボエンジンを搭載。このクラスでは珍しい走りのSUVを売りにしていた。実際、エスクードの1.4ターボは136PSで、210Nmという太いトルクを2,000回転以下で発生。数値上は2.0L並みだが、乗った感じは2.4Lくらいの余裕を感じることができたし、アクセルを踏めば速いね!!と思えるくらいの鋭さもあった。しかし、ハイブリッド化で1.5L自然吸気へ変更。直噴やアトキンソンサイクルでもないのに圧縮比13.0というのはすごいが、パワーは101PS。トルクは132Nmと大幅にダウンした。しかし乗ると、そこまで非力さは感じなかった。モーターがそれなりにアシストしてくれるので市街地なら回転を上げなくてもトルクがわいてくるターボっぽい加速をしたが、高速道路ではもう少し力が欲しくなった。とはいえ、昔あった1.6Lよりはよく走る印象で、簡単に言えば1.8Lくらいの走りと言えばいいのだろうか。それよりも、ターボに比べてガッチリとした足回りが丸められているように感じたことと、ステアリングのふらつきが出ていたことが気になった、タイヤのせいという気もしたが、見たところコンチネンタルのまま。ただ、銘柄がエコなものに変わったかもしれない。

エスクードのハイブリッドは買いか?

このクラスのハイブリッドSUVは、シティ派のモデルが中心で本格的な4WDのにおいのする車が少ない。そういう意味でエスクードは本格派の雰囲気を残していて、なおかつALLGLIPという4WDシステムで、ライバルよりも走破性はいいように考えられる。そうした隙間を狙った企画はスズキらしく、独創的なハイブリッドシステムも含めて好事家には好まれる1台になるだろうと思う。

ただ、一番は価格が297万円というところ。せめて1.4ターボとほとんど同じ価格だったらよかったのだが、20万円程度上がってしまった。この価格だとトヨタならカローラクロス、ホンダならヴェゼル。日産ならノートオーラが買える。いずれもハイブリッド4WDが選べる。もともと、エスクードは1.6Lでスタートして当時の価格が216万円からだった。そういう造りの車がいろいろ追加されて300万円級になったのだから、ちょっと分が悪い。内装の質感も外観も250万円くらいの車といったところだから、正直大半の人はカローラクロスやヴェゼルを買うと思う。ただ、ハイブリッドシステムの熟成も進み、内容的には悪くない車なので、300万円で売ることを前提に作られた次期モデルがグッとよくなれば、販売も伸びるかもしれない。

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