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新型ムーヴキャンバスが登場

期待を裏切らないモデルチェンジ

新型ムーヴキャンバス


ムーヴキャンバスがフルモデルチェンジした。見た通り"守り"の改良となった。しかし、中身は全面的に刷新されている。新世代プラットフォーム「DNGA」の採用。「DNGA」は小さな車しか作らないと決めたダイハツならではの基本骨格で、これ1つで軽自動車からBセグメントまで作ろうというものである。数が出る軽と共用することで、小型車の開発コストを下げられるし、軽にとっては普通車にも使えるプラットフォームを使うことになるので、これまでのダイハツ車に比べて、格段に走りの質やしっかり感が上がったのだ。

エンジンはタントから搭載されている最新「KF型」。圧縮比が11.5のタイプとなる。このエンジンは低速トルクが厚くなって日常で使いやすく、燃費も向上している。変速機はベルトとギアを組み合わせて、広い変速幅を持った「D-CVT」になった。これにより、燃費は2WDのNA車で22.9km/Lとなった。スズキに比べると1割くらい届かないが、技術の差というより、お金をかけていないため。スズキは10年前に新開発したエンジンをもう新設計しているが、ダイハツはそこまでしていない。それより、電動化で差をつけるつもりなのだろう。

ムーヴキャンバスにはターボモデルの設定があるのもポイント。ライバルとなるワゴンRスマイルにはない。スズキは小型車に力を入れている手前、軽にターボを設定したがらないようだが、ターボしか考えていない人は確実にいるから、営業サイドとしては売りやすいはず。ワゴンRの5MT車でも言えるはずだが、これしかないって他メーカーを見に行かれないから、本当に売りやすいのだ。

今回のキャンバスのグレードは「X」「G」の2つで、「G」にターボモデルがある。「X」でも両側パワースライドドアなどの基本装備はそろっているが「G」になると、LEDヘッドランプ、電動パーキングブレーキ、置きラクボックス、純正ナビ装着用のカメラパッケージなどが付く。ボディカラーによってシリーズが違っているのもキャンバスらしく、モノトーンカラーが「セオリー」。2トーンカラーが「ストライプス」となっている。「セオリー」はブラウンのインパネとネイビーのシート、メッキパーツなどを使って上質感を与えている。反面キャンバスらしい2トーンカラーを採用するのは「ストライプス」。内装も明るめのグレーとなっている。ともに価格は同じ。期待を裏切らないモデルチェンジで、これは引き続き売れると思う。

迷走の果てに・・・

車のヒット作って難しいが、わかりやすいのはライバルが出てくることだと思う。キャンバスはスズキからライバル車が出て来た。正真正銘の成功モデルとなったのだが、それまでの道のりは険しかった。

初代とも言える「ムーヴラテ」


ムーヴの派生車種といえば、最初が2004年の「ムーヴラテ」。3代目ムーヴ派生だが、よくよく見るとボディパネルはまったく異なっており、単なる丸顔モデルではない。なんと車台も強化されていたそうで、けっこうな力作だったのだが、まったく違った車に見えなかったせいか、ダイハツが期待した成功にならなかったようだ。ただ、今見てもいいデザイン。これはこれでよかったと思うのに・・・。

カクカクシカジカだったムーヴコンテ

続いて2008年にコロッと変わってデビューしたのが「ムーヴコンテ」。今度は四角でいこうということで、このカタチは男性にも一定の評価を得ていた。そういえばデビュー当時の"売り"がパワーシートだったことを思い出す。スライドのみ電動なのだが、エンジンを切ると後ろにスライド、かけると元に戻るエントリー機能まで付いていた。パワーシートといい、パノラマルーフ(タフト)といい、なんでも採用してみるところはダイハツのいいところ。しかし、いつの間にかパワーエントリーシートは消滅していた。個人的にはコンテのデザインなかなか好きだったのに、何が気に入らなかったのだろう。これまた1代限りで終了してしまう。


三度めの正直となったムーヴキャンバス

思った以上にモデルライフが長くなったムーヴコンテだが、そのままのコンセプトで行くか、まったく新しいものにするのか、社内でもまとまらなかったような空気を感じる。そんな中で、突然変異的な感じで出来たのがキャンバスだったというのは完全に憶測である。ヒット曲を作った作曲家が「実はこの曲1時間で作ったんだよ」なんていうように、案外ヒット作ってそんなものだったりする。ノリとか遊びで書いていたアイデアが、これいいねとなって、本気で形にしてみたというような勢いを感じるムーヴキャンバスは、デビューした時から、ヒットする予感満載の車だった。

このサイズにスライドドアという発想もよかったけど、やはりデザインがとてもよかった。男である私ですら、興味を持ったほど。実際買うにはちょっと勇気がいるけれど、ターボがなくてもよく走ったし、のんびりとしたいい雰囲気と性格を持った車で、今の時代に合う癒しの車であった。

苦節18年の下積み生活はこうして実を結び、晴れて2代目がデビューするに至った。とはいえ、ダイハツはスズキに比べて失敗作も多い。ミラトコットは風前の灯火だし、軽の新しいジャンルを開くと意気込んだウェイクも近々生産終了とか。ただ、このチャレンジ精神がダイハツのいいところ。これからも尖った軽自動車を出して欲しいものだ。

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