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太鼓 de タイムトラベル感想【後編】

 前編はこちら

7.大冒険タツドン/田島勝朗 feat. シックスティーズ・クワイヤーズ

 いい曲ですよね、ホント。
 アニメには全然詳しくないんだけど、聴く度に架空のアニメ『大冒険タツドン』が脳内再生される。タツドンが『鉄腕アトム』的なポーズで宇宙を飛んでいく、みたいな。
 ところで、公式の想定する「タツドン」は、巨大ロボ化した立つドンなのかな?

 キャラクターの声色もそれっぽさあってイイですよね。特に悪役(?)の声。ふんぬぬぬぬぬ!
 主人公くんのビジュアルは『太鼓の達人 アニメば~じょん!』に登場するコタロウ、悪役(?)は『名探偵コナン』の阿笠博士っぽいイメージを勝手に持っている。

 作詞がLindaAI-CUE氏だと判明した時はおどろきました。悪役(?)の声はそれっぽいと思っていたんですけどね。まさか歌詞まで書いていらっしゃったとは!
 宇宙を題材にしたワクワク感あふれる熱いリリックでありながら、太鼓的ワードも欠かさない。
 特に「120フレーム打ち」は『太鼓の達人』最新バージョンであるニジイロを元にしたものなのが良いですね。

 譜面のいいところはなんといっても「120フレーム打ち」の再現部分でしょう。曲自体の話題をそこにぜんぶ持っていかれてる感あるのはアレだけど……。
 ただ、ああいうギミックをとりいれるんだったら、ほかの連打をなくすか、あるいは軽めの風船連打にしてほしかった。
 120フレーム打ち部分で何打打てたのかがわからないのはもったいない。不満な点はそれくらいかな。
 全体的に、複合が程よい複雑さなのがよいと思います。ちょっとした速度変化ギミックも好き。

8.一世風靡/西込加久見

 ダメではない。決してダメではないんだけど、江戸時代を舞台にした画竜点睛シリーズという点では『黒船来航』が個人的に最適解すぎるんですよね。自分の中ではそこを超えられなかったかなあ。
 まあ『黒船来航』はちょっと思い入れのある曲なので、その補正も大いにあると思いますが。

 とはいえ『一世風靡』もいい曲です。アップテンポなサウンドと、江戸っ子風の掛け声でノリノリになれてとても楽しいです。聴くたびに、思わず曲に合わせてクラップしそうになる。あたぼうよ!
 キラキラかつ陽気なメロディでありながらも、どこかクールさや上品さを感じさせるのがよい。『一世風靡』という曲名によく合います。

 最後までノリノリで突き進むのかな?と思いきや、みんな大好き(?)低速地帯もあって最高。
 初めて聴いた時は「キター!」ってなりましたね(なお、直後に加速していく曲と譜面にさんざん振り回された模様)。
 どうでもいいけど、二度と使うことがなさそうな声ネタがふたつもあってわら得てしまう。
 やっぱり画竜点睛シリーズには低速地帯が必要だと思うんですよねえ。『真・画竜点睛』とか、低速地帯がやりたくてプレイしているといってもやや過言。

 譜面は……うーん。私は画竜点睛シリーズには難しさは求めていないんですよ。
「そこそこ骨がありながらも気持ちよく叩ける譜面」を求めているんですよね。その点でいうとこの曲はちょっと難しすぎるかな。
 でも「さぁさぁさぁ!」の風船とか「はい! はい!」の大音符は大好きです。

9.平等院鳳凰ドン vs 鳥獣戯カッ/コバヤシユウヤ(IOSYS) feat. miko

 ついにおふざけを隠さなくなった平安時代。いや『Hold me tight』もふざけてはいたけども。
 IOSYS×日本の歴史のナムオリ曲は『ヤマタイ★ナイトパーティー』や『聖徳たいこの「日いづるまで飛鳥」』があり、どちらも好きな曲なので、曲名のトンチキさもあり楽しみにしていました。

 結果、期待通りのいと可笑しき楽曲で大満足です。パートによってコロコロと変わる曲調が楽しいですね。
 特に好きなのが、平等院鳳凰ドンのパート。BPM低めの荘厳な雰囲気がよい。やっていることは全然荘厳じゃないんですが。「Say 鳳凰」とか小学生みたいなダジャレでホントくだらないですね。最高。

 平等院鳳凰ドンと鳥獣戯カッ、一見トンチキだし実際そうなんですが、『太鼓の達人』の世界って和太鼓とかたこやきが自我を持ってますよね。
 となると、平等院鳳凰堂や鳥獣戯画が動き出してもフシギじゃないのかもしれない。あの世界ではこれが正しい歴史で、60年代には『大冒険タツドン』も放送されていたのかも?

 また、「CM」というワードからして曲中の出来事はテレビやラジオの企画であることがうかがえる。『聖徳たいこの「日いづるまで飛鳥」』からわかるように、飛鳥時代には既にラジオが存在したようだ。
 この世界では科学が著しく発展しているのかもしれない。『太鼓の達人 ドンダフルフェスティバル』のオミコシティにあるドンドコタウンの発展具合も納得です。

 そういえば、ナムコには2000年代にもなっていないのにレールガン兵器が実用化されているような、凄まじく科学が発展した世界観があったような?
 この曲は、そして『太鼓の達人』はもしかしたらSFなのかもしれない……タイムトラベルしてる時点でSFか。

 譜面は難易度が控えめですが、それゆえに、曲中のナレーションをプレイ中にもしっかり楽しめるのが良い。
 こういうのがあはれなんですよね、何でも音取ればいいってもんじゃないです。
 平等院鳳凰ドンパートはドン、鳥獣戯カッパートはカッだけで構成されているのも、ベタですが、よいアソビ心。

10.たいこの2000/LindaAI-CUE

 ここで、満を持しての2000シリーズ登場。20周年生放送で、2000シリーズらしき曲の存在がほのめかされた際はキャッキャしていました。
 当時は、ヒントが「BCxxxx」だけで、アーティストも「NAMCO SOUNDS」以外伏せられていたんですよね。なのにみんな2000シリーズってわかったの、よく考えたら正気じゃないな。

『≠MM』的重圧感と、2000シリーズ的ヘンテコ感の融合が良い。
 2000シリーズにしては真面目な曲なんだけど、『クレイジービューティー』とかと比べるとやっぱりヘンテコ感があるんだよな。

『ドンカマ2000』や『わら得る2000』もそうだけど、Linda氏はやはり声の表現がスゴい。『たいこの2000』では、野生感あふれるパワフルなボイスが魅力的です。

 どんな法を制定しようが、ヒトはただの野生動物なので、和解なんてできるわけないんだよな。B.C.2000年から進歩してないね。
 2000シリーズって、ヒトのロクでもなさを主題にした曲が多いじゃないですか。労働系とか『スーハー2000』とか。この曲もそうなのかなと勝手に思っている。

 紀元前をテーマにした曲であるにもかかわらず、終盤であからさまに電子音が鳴っているのが気になるところ。
 目立つところだし、絶対に意識して入れていると思うんだけど、どんな意図なんだろうか。

 もしかしたら電子音は「現代」の象徴で、「お前らもコレと大差ないからな」的なメッセージなのかもしれない。
 ちょうどその辺りで「Japan is still in the Jomon Period」のモールス信号がありますしね。
 あるいは、この世界は時代に対して科学が異様に発展を遂げており以下略。
 ところで、4,000年前といえば、小説版『ゼビウス』でムーとイブがゼビウスにたどり着いた頃(強制終了)。まあなんにせよ、電子音のミスマッチ感イイですよね。

 この曲は、公式ブログでのLinda氏のメッセージが、なぜかほぼ『大冒険タツドン』の話だったせいで情報が少ないんですよね。もっと何か話してくださらないかなあ。楽曲紹介亡き今、これ以上の情報は絶望的カッ……。
 Linda氏って「曲の解釈は聴き手にすべて委ねる」的スタンスなので、自分の曲に関して語りたがらないところがある気がします。

 譜面については単体で999コンボを超えたことはとても、すごく、たいへん気に入らないんですが、それ以外はまあ悪くないと思います。
 ドカカカドカドで「ここさいたまだ!」ってわかるの、冷静に考えると頭おかしいよなあ。
 それをいうなら『万戈イム-一ノ十』の冒頭でさいたまを感じられるのもまあまあおかしいんですが。

11.The Future of the 太鼓ドラム/かめりあ

 楽曲レビュー記事で、該当の楽曲を聴いたことがありませんなんてこと、まさかないと思うじゃないですか。あるんだな、それが。
 しかもかめりあ氏の曲はほぼ聴いたことがないので、マジで語ることがない。これも聴いたらちゃんと書き直します、たぶん。

(追記:こっちもちゃんと聴きましたが記述はこのままで。いい曲でした。タイムトラベル地帯、最高!)

『GO ON ~未来へ~』がお披露目された際、流れ出しと同時に「これが噂の未来太鼓かあ、キレイなメロディーだな~」ってなってました。ドンだー失格である。

 かめりあ氏といえば高難易度のイメージがある。あとななひら氏との電波曲。『The Future of 太鼓ドラム』はどうなんだろうか、最難関クラスなのかな?
 難易度に興味がないので、どの星10が特に難しいとか、その辺の事情はよくわからないんですよね。ちゅーか最近(にはじまったことじゃないんでしょうが)星10ナムオリ増えすぎです。
 氏に関して「工事現場」という単語をちょくちょく見かけるので、『BPM=RT』みたいな曲も作られているんだろうか?

 1:17~のパートがいちばん好きです。
 曲の全体的な構成がちょっと『もぺもぺ』感ありますよね。

 この曲、スマホ太鼓のプレビュー部分を聴く限りでは太鼓の音が鳴っていないんですよね。そして曲名はざっくりいうと「太鼓の未来」。
 これはつまり、2765年の未来において「太鼓」というものはなくなっていると、かめりあ氏はお考えなのかもしれない。

 今の日本において、跡継ぎがなく消えてしまう危機にある文化は少なからず存在する。実際に消えたものも、数えきれないほどあるのだろう。数百年後の未来において、太鼓がそうなっていないという保証はない。
 この曲には「太鼓という文化を大切にしよう」というメッセージが暗に込められているのかもしれない。
 他のパートに太鼓の音が入っていたら、この文章は完全にギャグなので、笑って流してください。

12.GO ON ~未来へ~/steμ respecting タイムトラベラーズ

 別に悪くはないんですよ。全然キライじゃないし、太鼓やった帰りのバスで聴いてボロ泣きしたことがある程度には好きです。
 ただ、自分って「太鼓 de タイムトラベル」という企画に対する思い入れがけっこう強いみたいなんですよね(2曲聴いてないだろというツッコミはNG)。それゆえに、ちょっと気に入らないところがいろいろと目に(耳に?)ついてしまう。

 なんかもうお気持ち表明だけで記事ひとつできそうなレベルになってしまったんですが、この曲はまったくキライではありません(大事なことなので2回言いました)。「太鼓トラベルに狂わされた縄文人がなんか言ってんな~」と思いながらページを閉じていただけると幸いです。

 自分が『GO ON ~未来へ~』に関して「うーん……」と思うのは以下の4点。

① 昔から『太鼓の達人』に携わってきたコンポーザーを呼んでほしかった
② もっとオリジナリティのある曲が欲しかった
③ 各楽曲の個性が無くなっている
④『パラレルロリポップ』に何の恨みが?

① 昔から『太鼓の達人』に携わってきたコンポーザーを呼んでほしかった
 決してsteμ氏がキライというワケではない。『Blessed Bouquet Buskers』とか『轟け!太鼓の達人』とか大好きだし。

 ただね、20周年記念企画のラストといったらもっと呼ぶべき人がいるんじゃないか?と思う。
 たとえば『エンジェル ドリーム』でお馴染み岡部啓一氏。deシリーズの矢野義人氏。初代から名曲ナムオリを多数手がけられているみすみゆり氏。
 この辺りの方々が書いてくださったら、もっと嬉しかったなあ。

② もっとオリジナリティのある曲が欲しかった
 メドレー形式もタイムトラベル感あっていいんだけど、やっぱりオリジナルの曲が欲しかった。
 メドレーにするにしても『タイコロール』みたいな感じにできなかったんだろうか?

③ 各楽曲の個性が無くなっている
 これが個人的にいちばん気に入らないところ。
 元の曲の良さが残っているのは『たいこの2000』と『一世風靡』だけで、その他の曲はすべて曲全体の空気感に飲み込まれてしまっている印象。
 そりゃ『〆ドレー2000』並のゴチャゴチャを持ってこられても反応に困るけど、せっかく個性豊かな曲が揃っているのにもったいないなあと思う。

 平ドンとかもはや別の曲では?ってレベルで面影無くなってるよね。ドントダウトは雰囲気の再現度はまあまあ高いけど、メロディーもリズムもだいぶ違うし。ほみたいもそんなキレイなだけの曲じゃなかっただろ……。

④『パラレルロリポップ』に何の恨みが?
 コレどこで流れてるの? 轟けの裏で流れてるんだろうなというのはわかるんだけど、それっぽい音がどこにも見当たらない。迷子の子どもを探している気分です。未だに迷子。
 轟けパートに入るまでに、せめて2秒でいいからパラロリの見せ場をくれよ……。

 長々と文句を書き連ねましたが私はこの曲好きですからね(3回目)。
 steμ氏とは根本的に考えが合わないんだろうなあ。『タイコロール』を聴いた時も引用楽曲が考え合わないなあと思ったんですよね。当時ちょうど太鼓の曲に触れ始めたばかりでバナパスすら持っていなかったのに。

 で、譜面作成に携わっていらっしゃるすえP氏とも太鼓トラベルに関しては考えが合わない。パラロリはあんなに音取らなくてもよかっただろうと思うし、たいこのは1000コンボ超えてほしくなかったし。『千鼓千鼓』や『Comona』は好きなんですけどね。

 この曲に関しては『万戈イム-一ノ十』みたいな感じで、各楽曲のエッセンスが感じられる譜面を期待していたんですよね。でも、そういうのがほとんどなかったのが残念。
 タツドン地帯で120フレーム打ちを出すとか、轟け地帯にカカカカカカカ……入れるとか、その程度でもいいからやってほしかったなあ。

 特に60's~80'sのどうしてそうなった感がスゴい。ドンタイムのサビの連打とかめちゃくちゃ良かったのに消しちゃダメだろ……。

 文句ばかり書くのもアレなので、好きなところも書く。

 楽曲の好きなところは、メドレーの順番です。収録順とは逆の順番にすることで、轟けが最後に来るのが良い。
 各年代を振り返りつつ、最後には現代に帰ってきたぞ!という感動や安心感があります。2010年代どこ……。
「未来へ」といいつついちばん初めが未来じゃねえかというツッコミどころはあるけども。
 壊れたタイムマシンを未来で直してもらい、各年代での思い出を回顧しながら現代に帰る、みたいなストーリーが思い浮かぶ。

 譜面はやはり最初の小節線がSF感あって良いですね。小節線ギミックも近年ではベタな表現になってきた気がするが、使い方さえよければよかろうなのだ。
 あと平ドン地帯は、平等院鳳凰ドンと鳥獣戯カッが仲良くしてる感あって好き。

まとめ


 ニジイロVer.から始めた自分としては、『太鼓の達人』の多くの企画や楽曲シリーズは過去のものだった。
 そのため、好きなコンポーザーの新曲を心待ちにしながら毎日を過ごしたり、新たな2000シリーズの発表に立ち会えたのはとても嬉しかった。
 そういう意味でも太鼓 de タイムトラベルという企画には強い思い入れがあります。

『太鼓の達人』には本当にいろいろなジャンルの音楽がある。
 それらはただ音ゲー的にカッコイイというものではなく、音ゲーマーから見れば魅力的に思えないものも多いだろう。
 でも自分はこのゲームのそういうところが好きだ。太鼓 de タイムトラベルは、そんな『太鼓の達人』だからこそできた企画だと思う。

 また、『太鼓の達人』の楽曲の幅広さは、我々をまだ知らない場所に導いてくれることもある。たとえば自分は収録曲の『Lightning Dance』がきっかけで湾岸マキシをはじめたし、最近はミカシリーズがきっかけでプログレに触れ始めている。

 そして、過去の邦楽に興味をもったのは間違いなくこの太鼓 de タイムトラベルの影響だ。
 音楽番組の昔の人気曲特集でなんとなく知っていただけの曲も、しっかりと聴いてみるといろいろな発見があったりする。

 ボーカルのメロディーだけなんとなく覚えてたんですが、こんなカッコイイ曲だったんですねえ。

 とても“良い”……!

 てっきりスキーの曲かと思い込んでいたが、ちゃんと聴いたらそうじゃなかった。
 性格良ければいいっていうのは私も嘘だと思います。

 公式動画、3分の2くらい前奏じゃねえか!

 20年を通過点としてドンドコ邁進を続ける『太鼓の達人』。これからの展開も楽しみにしています。
 そして、太鼓 de タイムトラベルのような素敵な企画にまた立ち会えることを願います。

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