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pomeraの速度

 ロードバイク持っててたまに乗るんですけど。

 バイト代貯めて買った20万円の赤黒のスペシャライズドは、実際に乗り始めてみると街乗りにはあんまり向いていなかった。
 舗装路を高速走行することに特化したフレームは、信号のストップ・アンド・ゴーや、気になる店を探したりとかの散策は得意じゃない。

 気になるものを見つけたり、すぐに止まって確認したり、また走りだしたりするような乗り方で設計されてない。出来なくはないけど。

 でも、乗ると楽しい。買ってから10年を超えるけど、今も楽しい。
 走る場所といえば、不得手な街中だけど。それでも。

 ロードバイクの良さは、日常の移動手段として便利かどうかではない。買い物とか散策に便利、とかそういうのじゃない。
 ロードバイクは、乗って走ってることそのものが楽しい。目的地はどこでもいい。

 「自転車に乗って街を走る」「ペダルを漕ぐ自分と対話する」っていう、それを楽しむ。
 街と自分と自転車。それらが一番ダイレクトにつながる乗り物がロードバイク。

 ペダルを踏む力が、推進力に変換されるときのロスが極端に少ないから、漕いだ分だけ速度がでる。自分の身体能力がそのまま速さになる気持ち良さがある。

 細く硬いタイヤは、まるで万年筆で筆記するとき紙の感触が手に伝わるように、路面の質感をハンドルやサドルに伝えてくる。

 段差を越えるとき、まず前輪が乗り上げるときにハンドルから軽く力を抜き、次に後輪が段差を越えるときはサドルから軽く腰を浮かせたりする。歩いているときなら当たり前にやっているようなことをやれる。

 フレーム形状から極端な前傾姿勢を強制されるけど、それは走っているときに一番無理のない姿勢。だから、自ずと走ることに意識がむく。

 わき目もふらず走り続けていたいという気持ちになる。楽しい、気持ちいい、というのもあるけど、単に走っている状態が一番おさまりがいいからそうなる。
 走ることに対する、ノイズやストレスがすごく少ない。

 だから、仮に目的地があって漕ぎだしたとしても、ちょっと遠回りをしたくなったり、目的地を素通りしてもっと遠くまで行ってしまいたくなる。

 pomeraもそう。

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