映画鑑賞日記「マーウェン」


ロバート・ゼメキス監督と言えばバックトゥザフューチャーという世代にとってはたまらない小ネタが盛りだくさん。
まるでポーラーエクスプレスを見ているような錯覚に陥るフィギュアの質感やフォレストガンプで魅せた意外とタフな銃撃戦や戦闘シーンを架空の町の中で繰り広げる。

ある写真家が5人の男に集団リンチされ生死の境をさまよいPTSDを患い3年がが経過したところから物語は始まる。

この映画には重要な要素が3つある
・個人的趣味
・裁判という不条理さ
・薬への依存

一つ目の要素である「個人的趣味」は何を隠そう異常に女性が履くハイヒールが好きな事。
その収集数はなんと287(笑)
「女性の本質に触れられる気がする」という意味不明な理由なのだが恐らく女性に敬遠され続けた人生であろう彼にとってはそんな接し方しかできなかったのかもしれないと思えてきます。

そして二つ目の要素は「裁判」
女性がレイプされた場合その女性ががセカンドレイプとならぬようやっと配慮されるようにはなりましたが、男性が集団リンチされた場合も精神的なダメージというのは全く同じなのだという事をもっと主張してほしかったですね。
被害者が出廷しない限り被告人の刑が確定しないというルールそのものがあまりに酷です。
「同じ部屋にいることが出来ない」
という彼の震えながらの叫びは多くの暴力被害者が感じることでしょう。

そして最後は「薬への依存」
これはもう観ていれば何が一番悪い作用を及ぼしているのかは一目瞭然なのでネタバレにもならないでしょう。
ダイアン・クルーガーというドイツ系の女優を使っていることからも一目瞭然ですね。

お伽の国を作り上げざる得無いのには理由がある。
現実の悲劇とおとぎ話の間を演じられるのはスティーブ・カレル以外ありえなかったと思わせてくれる名演でした。
ふざけた童貞男役からシリアスなフォックスキャッチャーで演じた男までを網羅したような一人の写真家を違和感なく演じています。

男性恐怖症ともいえる症状に陥った彼の身の回りで世話を焼く女性陣の充実差にやや嫉妬する男もいそうな気もしますが(笑)
深刻な現実の世界から目をそらせることも悪くない・・・そんなカラフルな映画。

「苦しい現実から逃れたい」という人はこんな手もあるんだという一筋の光になるような映画だと思います。



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