第8回前後の荷重方法

滑走中、僕は常に板に接する足の裏から頭のてっぺんまで体を貫く一本の「柱」のイメージを持っています。「軸」とも呼ばれるものでしょうか。みなさんはどうですか?

さて、前後の荷重の配分についての話です。
前後とは、前足と後ろ足です。ノーズとテールですね。どちらを強くすれば良いか、はたまたどうやって強くすれば良いか。

答えは3Dです。

その前に。
一般的に前足と後ろ足、どちらに乗ったほうが良いか、どちらを強くすれば良いか、と聞かれたらそれは「後ろ足」と答えます。
「前足」に乗ることは一概に悪いということではないですが、リスクを伴います。「前足」に乗るということは「後ろ足」が軽くなるということ。後ろ足が軽くなるということはテールがずれやすく、板がズルズルけつを振るような動きになってしまったり、スッポ抜けて転んでしまったり、ということが多くなります。
逆に、「後ろ足」に多く乗った場合は、板が動かしづらいデメリットはありますが、基本的にはテールがしっかりグリップして抜けづらい、つまり転んだりするリスクが減ります。

カービングにおいてはズレたり、抜けたり、ということが最大のリスクなので、基本的には「後ろ」にいれば間違いがないということです。

しかし「前足」に乗ることでノーズをたわませて早く曲がり始める、などメリットもあるので、上手な人達はこう言う訳です。
「ターン前半は前、ターン後半は後ろ」だよ、と。
確かに、理論的です。

でも、ですよ。
「前に」行った後に、ターンの最中に「後ろ」に戻ってくることってできますか??

この時の前後の重心移動って、ノーズ方向テール方向への「水平」移動なんです。
体の「重心」が腰付近にあるとした時に、この「重心」がノーズテール方向に「スライド」するイメージです。「水平移動」です。しかし、ターン中は斜面の下方向、落下する方向へ重力は働いていて、特にターン中盤の板が下へ向いている瞬間は体がノーズ方向へ落とされて(引っ張られて)いきます。自ずと「前足」寄りに重心が移動する訳です。
ただでさえ、重力で前足寄りに引っ張られた状態で、さらに自分から「前」へと重心を移動した場合、「ターン後半で後ろ」へ戻ってくることってできますか?
僕はこの動きは現実的に難しいだろうと考えます。というか、緩斜面や低速ではできますが、斜度が上がって高速になると間に合わないし、斜度が上がるほど前に引っ張られる力は強くなりますから、さらにはスピードも上がりますから、かなり厳しい。

じゃあ、どうするか。
大丈夫です。上手くいきます。やり方が違うだけです。

問題は重心を「水平移動」していることです。

足の裏から頭まで、一本の柱をイメージしてください(やっと冒頭の話に繋がります)。板に対して垂直の柱です。この垂直の柱が今までのイメージでは、垂直のまま前足方向に「移動」していました。つまり「2D」の動きです。
これに対して、足から頭までの一本の柱を「移動させる」のではなく、前足方向に「倒して」ください。
分かりますか?
「移動」させずに、足から根っこを生やしたまま、柱を前足方向ノーズ方向へ「倒して」ください。これが「3D」の動きです。

ゲームのコントローラをイメージしてください。
ファミコンが「十字キー」の「2D」だったのに対して、プレステなどの次世代ゲーム機の「スティック」グリグリは「3D」の動きですよね。昭和と平成の分かれ目でもあります。旧世代と次世代。

次世代で行きましょう。

この体の柱を「3D」でイメージできれば「前へ」行っても、ちゃんと後ろに戻ってこれます。
いや「戻って」くるのとは違いますね。「後ろ」に居ながらにして「前へ」イケるという感覚です。つまり「後ろ足」から頭の先まで一本の柱のイメージを作りつつ、その柱を「前へ」「倒す」。「移動」はしない。
そうです。最初に足の裏から頭のてっぺんまでの柱のイメージといいましたが、正確には「後ろ足の裏から腰を通って頭のてっぺんまで」です。

「3D」のイメージであれば「倒れた」柱はいつでも「戻す」ことができます。
この柱を倒す「角度」によって前足と後ろ足の荷重の配分を調整します。
ただでさえ、斜面を滑っていく競技ですから、斜度に合わせて「柱」を倒して行かなければいけません。急斜面ほど、斜度に合わせて、もしくはそれ以上に「前へ」「斜面下へ」柱を、軸を倒していかないとどんどん遅れてしまいます。
よく言われる「後傾」。これは後ろ足の上に重心があることではなく、柱の傾きが斜面に対して遅れている、倒れていない、ということです。
この違い、分かりますでしょうか?

この「倒す」イメージは荷重配分だけでなく、もう1つ大切な役割を担ってくれます。

それは「板より先に(前に)居るイメージ」ができることです。
板に対して身体が遅れないってことです。
板が自分より後ろにある感覚
これがあると決して板に遅れず慌てず、板を自分のコントロール下に置くことができます。余裕が生まれます。


まとめてみましょう。
まず、足裏から頭のてっぺんまで体を通る一本の柱をイメージします。その柱は「後ろ足」から頭のてっぺんまでズドンと通してください。そしてその柱を斜面の傾きに合わせて前足方向に倒してあげてください。3Dです。板を立てる動き、つまり「内傾」もこの柱をターンの内側に「倒す」イメージでやってください。

そうすると自ずと、ポジションが外れずに「前へ」行きつつ「内傾」も最大限とれるはずです。

正しく「前へ」行きましょう。イッツ晃平スタイル。


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