第9回板を踏む

随分と更新が空いてしまいました。
この間にもこのnoteを購入していただいた方がいて、大変有難いです。その想いに応えるためにも更新しなければと思いつつ、時の流れは早いものです。

私自身も子供が産まれたり、シーズンメンバーへのレッスンでトライ&エラーを繰り返し、人間として指導者として、またターンの表現者としても少しは成長してきたような気がします。
ターンの技術としては速いターンを突き詰めていっている所です。

さて今回のお題は速いターンに繋がっていく「板の踏み方」
板を踏むとはどういうことか。その前になんのために板を踏むのか。
板を踏むのは速いターンをするため。板を走らせるため。板にエネルギーを貯めるためです。
その前提に立って話を進めていきましょう。

「板を踏む」
この「踏む」という表現が誤解を生みやすい所です。
「踏む」という言葉には足の筋力や曲げ伸ばしを使った「内力」で板に圧をかけるというイメージがあります。しかしこれでは板は走っていきません。エネルギーは貯まりません。

なぜこれがだめなのか説明しましょう。
「ターン」というのは「谷周り」と「山周り」で構成されていて、その2つを合わせた「ターン」をしている「時間」はミドルターンなら1ターン2秒ほど、ロングターンなら3-4秒ほど。
板を走らせるためにはこの2-3秒の間、踏み「続けて」、圧をかけ「続け」、エネルギーを貯め続けなければいけません。
筋力や足の伸ばしで得られる力の「時間」はせいぜい0.5秒くらい。
ターンの立場に立てば蚊に刺された程度、痛くも痒くもありません。短すぎます。
トランポリンで言えば、飛ばずにその場で足の曲げ伸ばしをしているようなものです。ピョンピョコポン。
もっとズドーンと体ごと重さを乗せて「長ーく」ビヨーーンとトランポリンに力を伝えましょう、ということです。
エネルギーというのは「力」✕「時間」です。
ポイントは最大限の「力」と長ーく伝える「時間」です。

ではまず「力」を最大限に得るにはどうするか。
トランポリンのイメージ同様に「乗る」ことと「伝える」ことが大切です。
「乗る」こと。これはこのnoteで散々言ってきた「重心を板の上に乗せる」ことです。詳しくは「ポジショニングの回」を振り返ってみてください。

板の上に正しく重心がないと、板の上に重さがない訳ですから、トランポリンの端っこで飛んでるようなもの。正しく板がたわまなかったり、重さが板から逃げてしまいます。
そう、まずは正しいポジショニング。

しかし、これだけでは足りません。
トランポリンのど真ん中で飛んでいても腰が曲がっていたり体が丸まっていたらどうなるか。
つまり重さや力を「伝える」ことのできる姿勢や体の使い方が必要になってきます。
では「何を」伝えるのか。

スノーボードのターン中には重力や遠心力など様々な「外力」が体にかかってきます。そしてこの「外力」は、体の筋力を使った「内力」よりも遥かに大きいものです。
この「外力」を最大限に「板に伝える」こと。
それが大事なことです。

そしてそのための方法。それは姿勢と体の使い方が大事です。
それを言葉と文章で伝えることは難しいのですが、まずはイメージしてください。
体の上半身、肩や背中にかかってくる外力という「大きな力」の「流れ」があります。
その「大きな力の流れ」が上半身から体の中心、つまり腰や丹田やおしりを通って、そこから太もも、スネ、足首から足裏を通り、「板」に伝わっていきます。
その流れを漏れ出ないようにすること、流れが途切れないようにすること。それが板を踏むということです。
いいですね、武道っぽくなってきました。
そうです、これが伊東流の奥義の一つ「流力」です。

これをやるための姿勢は色々ありますが
一つには「おんぶの姿勢」であったり
一つには「バーベルスクワット」の形であったり
「デッドリフト」であったり「アメフトのタックル」であったり「相撲のシコ」であったりする訳です。
つまり重いものと、地面と、体との、力のやり取りが滞りなくできていること。
それが「板を踏む」ということです。
なんとなくイメージができたでしょうか?

長くなりましたが、最後に「時間」について言っておきます。
これは簡単です。切り替え直後から次の切り替えまでこの力のやり取りをやり続けること。
それが「力」✕「時間」=「エネルギー」となり最大の「速さ」を生む原動力になっていきます。

残り少ないターンシーズン。ぜひやってみてくださいね。

このnoteを書くにあたり、過去の記事を読み返したんですが、いやーめっちゃ面白かった。


https://sin5.thebase.in/items/41332405

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