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ブルースと黒人音楽の体験を求めて

  私は普段はシアトルエリアに住んでおり、ソフトウエアエンジニアをやっている。一方で自分の音楽的な趣向の最大のものは黒人音楽でありブルースである。特にデルタの香りがするディープなシカゴブルースが大好物だ。

  しかし残念なことにそのような演奏をする本物はほぼ亡くなってるし、自分が知らないだけかもしれないがシアトルエリアではお目にかかれない。だから5年前にアメリカに来てから最も行きたかったところがミシシッピ州。

  特にクラークスデールだった。クラークスデールの付近にデルタと呼ばれる場所があり、自分の大好きなマディウォーターズを始め、自分の大好きなディープな演奏をするブルースマンはほぼほぼこの地域もしくは近くの地域の出身だ。毎年ミシシッピ州に行きたいと言っても大抵の人にはなんで?
  と言われるので1人で行くつもりだったのだが、最近奇特にも一緒に行きたい、ブルースバンドをやりたいという気が狂った友人ができたので、彼と共にミシシッピ州からジャズが好きな彼のためにニューオリンズまで、車で旅行してみた。様々な経験が出来たので、普段のブログと違って誰にも読まれないと思うけど、ここに体験したことを書いておこうと思う。

出発前夜

  会社の同僚に休暇をとってミシシッピに行くと言ったらやはりなんで?と言われた。ブルースが好きやからやという話と、ミシシッピ州はブルースが生まれた場所だからと答えた。ブルースはアフリカの人々がアメリカに連れてこられて綿花つみなどのプランテーションで生まれたワークソングで、アフリカのトラディションの複雑なリズム感覚とシンプルなコード進行、歌詞で構成されている。自分はこの手の音楽が大好きだ。

 私はAmex premiumのカードを持ってるのでAmex travelでホテルを探すのだがない。クラークスデールの周りにはAmex travel ではホテルが一件もない。クラークスデールで行われるサンフラワーブルース、ゴスペルフェスティバルに出た後はジャクソンを経由して、ニューオリンズというコースにしたが、クラークスデールのホテルは無いので取れない。先程の友人の岩崎さんとクラークスデールのInnを探してくれて安いのと高いのと二つしか残ってなかった。安い方を予約しようと思ったら、複数のコメントにベットバグが出ると書いてる。

ブルース過ぎる…

ちなみにベッドバグは暗黒である。もしもちかえってしまったら、自分の家で繁殖するからだ。もう一個のInnは大丈夫だろうか?高いけどもう一つの方にした。少なくともコメントにベットバグが出るとは書いていない。

 会社の仲間にベッドバグの対策を聞くと、いらない服を着て行って捨ててくるとか、最初についたらベットをめくってベッドバグがいないか確認すること、そして、カバンを高いところに置くことを勧められた。
同僚のMathewには、ベッドバグに苦しんだらブルースになるので良いのではと言われた。まぁそうやなw

メンフィス到着

 休暇を取得してくっそ早い飛行機に飛び乗ってメンフィスに到着。

Memphis に到着

    レンタカーを借りたがApple Car playがなかなか繋がらない。岩崎さんは厄年らしい。ちなみにピックした車は走行距離が足りないから、違う車にしろと言われて時間をロスしてしまった。なんかついてない様子だがまずは良いだろう。ちなみにメンフィスでジャンクフードを食べたけどカウンターのにいちゃんはなんも話してくれないし見てもくれないなかなかの塩対応である。ベルリン以来の塩対応やな。

John Hiatt のMemphis in the meantime を聴きながらメンフィスを離れてディープサウスに向かう。ちなみにこの歌はハイワットが、売れ線の中身がない音楽に飽き飽きして、本物の音楽が聞ける街としてメンフィスをメタファーにしてるらしい。本物の音楽が聴ける旅になるのだろうか。

ミシシッピ州に入ってドライブを続ける。何もない。マジ何もない。予想していたことだか、何もない。Nothing but bluesとはこのことだろう。


Nothing but blues

  目的地のクラークスデールまで延々と続く倒れかかった電柱と綿花畑を経て近くまで来たらしい。閉まった案内所があったがボッロボロである。もうすでにブルースを感じるやん。多分昔はここでも演奏してたんだろうか。

既にボロボロでブルースである。

サンフラワーブルースフェスティバル

 サンフラワーフェスティバルは仕事の都合で土曜の夕方からしか参加できなかった。スケジュールを見るとbig Tとbig Aというアーティストがいかにもディープそうな感じを醸し出していたので2人でこれ観ようと話していた。間の白人の人のバンドには悪いけど、ディープなヤツが見たいんや。

  クラークスデールにつくと想像していたよりかなり寂れていてかなりブルースである。

寂れてる…

  YouTube で最近のクラークスデールのドキュメンタリーと何十年か前の山崎まさよしがクラークスデールに訪問した番組で予習して行ったが想像以上だった。ちなみにその番組めっちゃおすすめで、山崎まさよしがハニーボーイやR.L.バーンサイドとジュークジョイントでジャムしたりキングビスケットタイムでラジオに出演して演奏してホストのおっちゃんがめっちゃ喜んだりとても感動的やった。これクリックしたら YouTube で観れます。

 
ただ、そんなボロボロで人口も少なくて、産業も何やってるかわからん寂れた街で、そこここでブルースが演奏されてるのは最高である。これはオースティンに行った時も体験できなかったことだ。黒人の人の割合が非常に高い。

そこここで blues が聞ける

著名なグラウンドゼロブルースクラブのマディの壁画を見ながらデルタブルースミュージアムの会場に向かう。

Ground Zero Blues Club

  出店が出ていて、メインステージがありそこここで黒人のみんなが踊っている。

出店が出てるで
この緑のおばちゃんのダンス凄かった!

  あるビデオで黒人のリズムの感覚は六連を基本としてると黒人の人が解説してたがダンスがめっちゃ複雑なノリでありかっこいい。これが六連の複雑な動作なのだろうか。

 めっちゃ気の良いおっちゃんやおばちゃんに話しかけられながらお目当てのBig Tのステージ。アンプトラブルが多かったが、なかなかディープな演奏で良いがバンドはそこまでは良くなかったし大御所の人のギターが大きすぎるように感じた。

   しかし、最後の一曲でものすごいものを見れた。アンプトラブルで大御所が引っ込んでサイドギターを慎ましやかに弾いていた人が代わりにメインに立ってドラムが変わったのだが、ドラムめっちゃすごいし、その代わりのにいちゃんのプレーがディープで最高だった。

このラグビーやってそうな兄ちゃんディープやった!


  いや、というか最初からお前らやってくれよ!と思ったけど一曲だけだけどディープさ溢れるしかも複雑なリズム感を堪能できる演奏でこれだけでもクラークスデールに来た甲斐があった。ブルースが生まれた本番アメリカに来て5年間、ついに出会えなかったディープさを感じる演奏に一曲だけど大満足だった。

 岩崎さんはドラムはめっちゃ上手いけどブルースは初めてで、これから一緒にブルースのバンドやるし、色々解説したりしてた。

岩崎さんとクラークスデールで

 次のバンドは、自分には物足りなくて良くある白人さんが良くやってるあんましディープさとかリズムの複雑さがない演奏であまりピンとこなかった。
 岩崎さんはこれは上手いけど何でイマイチなのと聞かれてそういう話をしたら自分よりずっとレベルの高いミュージシャンの彼はこの初日ですでにブルースの魅力であるリズムの豊かさとディープなデルタのフィーリングを完全に理解した様子で話が弾んで嬉しかった。

 さてそのバンドの次が観ようと決めていたBig Aだった。後でめっちゃマニアックなブルースショップのマスターが、彼がクラークスデールで1番のブルースマンだと言っていた。

 さて、演奏は、、、最高である。マジ最高。トリオなんだけどディープさがあり、デルタを感じるし、複雑なリズム感覚、歌もカッコいいし、ギタープレイがマジかっこいい。彼はソロも上手いけどバッキングがカッコいい。 

 あんまり彼みたいなタイプは見たことがない。ディープなのにモダンなギターなのだ。めっちゃカッコいい。客を乗せるのもお手のもので、ステージの前では黒人のみんながガンガンに踊り狂ってシャウトして、Hoochie Coochie Manの歌詞の一部のJump’in and shout の状態を生で体験できた。これはシアトルでは絶対体験できない。

Big A最高やがな!



 何曲かのレパートリーをやってその中にGot my mojo working があったけど、この曲は相当に鬼門である。みんなやるし、色んな有名な人がカバーしてるのだがほぼカッコいいバージョンを見たことがない。ほぼオリジナルのMuddy のはスーパーかっこいいが、James CottonとかJimmy Rogers+Kim Wilson のぐらいだろうか?クラプトンやジョニーウインターですらダサいのだ。YouTube を検索してみてもらえは言ってる意味がわかると思う。
でもここで初めてカッコいいMojoを生で見れた。これは人生初体験である。しかもトリオであれやったのはほんま凄いと思う。

個人的な観察と推測だか、Mojoはリズムが良くないとそもそもスタートラインに立てないのと、ギター弾きすぎでロックっぽくなるとダサくなるのだと思う。ギターのソロはいらんし、ドラムはロックっぽかったら単調になってカッコ悪い。先にあげたカッコ悪いバージョンはみんなギターソロがあるけどこの曲はピアノかハープソロの方が曲に合う。

 果たしてこのトリオのバンドはどうしたかというと、ソロはソロなのだがギターソロではなくリズミックなバッキングのようなソロなので曲の雰囲気やグルーブを壊すことなくめっちゃカッコよく決めていた。Big Aまじ有名になってツアーに来て欲しい!

 彼のプレーは全編にわたって大満足の出来で、ほんまクラークスデールまできて良かったと心から思った。それこそ私が見たかったものだ!

  ちなみに自分がシカゴブルースのバンドを始めたのは、黒人の人がやってくれないから見れないからだ。本物がやってくれたら見てるだけで幸せなのだが、多くの人はブルースしてくれない。KebMoとか本気出したらできそうなのにたまにしかやってくれないのは残念である。

 高い金を払って泊まったホテル、というかInnはボロボロでエレベーターのボタンがなくなっていた。幸いなことにベットバグはいなかったので Bed bugs bluesが作曲されることはなかったので良かった。

さて、翌日はライブはあまり無いのでブルースに関するクラークスデールそして周囲の街を巡る旅である。

 クラークスデールを、散歩してると廃線になったと思われる線路があった。サンハウスの録音でギターを弾いてる時に汽車が通る曲があるけど、サンハウスもこんな感じのところで演奏してたのだろうかと思いを寄せる。

ブルースと言えば汽車

ストローバル

 そしてクラークスデールからマディウォーターズの生まれ育ったストローバルに移動した。誰もいない。単に綿花畑があるだけ。

Muddy Waters の生まれ育った場所
ここにあったはず。綿花以外に何もない。


Muddy Waters House ぼっろぼろやろ。
水平線までずっと綿花畑

ChatGPTに写真を見せると綿花だと言っていた。本当に綿花畑のそばにマディの家があった。

綿花はこんなのらしい

道の反対側のすぐそばに小さな池があった。マディの名前の由来は子どもの頃にどろんこになって遊んでいたかららしいが他に泥水がありそうなところはないのできっとここでマディが遊んでいたんだろうと思った。

Muddy は子供の頃きっとここで遊んだのだろう

 お昼ご飯を食べようと街を歩いてるとブルースが聞こえる。見てみるとBlues Breakfast というものがあり生のブルースを聴きながら朝食をいただけるらしい。もう少し歩いていると、向こうからRocket 88を弾き語りしてるのが聴こえる。朝からブギーを聴けるとかおかしいけど最高やな。

Blues N Breakfastなんてあるとは…

お昼を探してるとレストランと間違えてお店に入ったら白人のおっちゃんがやってるブルースの店があった。内容は、、、ディープすぎる。


CAT HEAD


レストランかと思いきや…


ディープ過ぎる店内

 自分が最もエキサイトしたのはなんとMojo が売ってたことである。Mojoばブルースの歌詞に頻繁に出てくるものでHoodooの呪い(まじない)の魔力を持ったアイテムであり、中身の配合によってどんな効果があるのかが変わってくる。とその歌詞でしか見たことない呪いの品がここに売っとるやんけ!速攻で買った。岩崎さんも買った。マジで日本人でMojo持ってるやつなんか100人に満たないのでは?

I got a mojo too.

これで堂々とHoochie Coochie Manがやれるというものだ。Hoochie Coochie ManはMuddy Watersの代表曲で、マディがいかに女のにモテて熱狂させることができるかを自信満々に歌った歌やけど、次のような歌詞がある。その一つMojoを実際に待ってる奴がバンドに2人もいるとかなかなかである。(あとは練習だけだがw)あと二つ手に入れるとコンプリートである。

...Got a black cat bone
got a mojo too,
I got John the Conqueror root,
I'm gonna mess with you...

"Hoochie Coochie Man," Muddy Waters


   ちなみに、私が買ったMojoだが、つくっているところが映像に残っている。Moonshine and Mojo hands というミシシッピーのブルースシリーズという夢のような番組。沢山クラークスデールの様子を見れる。さっきの CAT HEAD の店長がホストやん。Harvey Ellington という人が作っている。ちなみに、番組では Mojo bag といってるが、Mojo Hand とか、Mojo と同じ意味である。


  結局お昼はグレイハウンドバスの発着場だったところでジャンクフードを食べた。ちなみにここら辺にはあまり良いものはなくてジャンクフードっぽいものしか食べるものがなかった。それもブルースである。


チキンウイングの店は、Greyhound Bus の発着場やった

さて、お昼食べてから歩いていると、暑いのでコーヒーショップで涼むことにした。

ディープ過ぎる出会い

 クラークスデールではフェスティバルでも日本人どころか、アジア系も我々だけでめっちゃレアキャラだったのだか、なんか日本人ぽい人がいて、私と違って陽キャの岩崎さんが声をかけてくれた。その人はジャズが好きな白人の人と一緒に来てたしゃうこさんという人でブルースが好きとのことだった。私がブルース好きで、岩崎さんがジャズ好きなので同じ組み合わせだなと思った。


Willie Dixon の言葉と共に

 ちなみにしょうこさんはわたしより100倍ぐらいディープなブルース好きでこのサンフラワーフェスティバルに30年前から来たかったがついにこれたと話してくれた。R.L.バーンサイドとかにも実際に会ったことがあるらしくめっちゃ羨ましかった。わたしがデルタ系のディープなブルースが好きだと聞いてジュニアキンブローと、ジェシーメイを勧めてくれた。おおおお、知らんかったけどめっちゃディープやがな。こんな人が2000年付近まで生きてたとか観れなかったのが残念すぎる!


 ちなみにしょうこさんはジェシーメイにプライベートで演奏してもらったことがあるらしく最高すぎたらしい。そんなんやってもらったら蕩けるわ。どっかにこのレベルのディープな人、生きてないやろか?ちなみに、しょうこさんもデルタのディープなブルースを求めてクラークスデールに来たみたい。わかる。

 他にもイタリアから来たギタリストとテレキャス最高という話をしたり普段できないレベルの話が出来てとても貴重な体験だった。ちなみにそのお店ではMuddy Waterというコーヒーが売ってたので当然即買いした。

デルタブルースミュージアム

  昼の後には最高に良いことがあった。当日は日曜で1番見たかったものの一つのデルタブルースミュージアムが本来日曜で休みとクラークスデールに来てからわかって岩崎さんとめっちゃがっかりしていた。

空いてるがな!Delta Blues Museum


 外からだけでも観ようとミュージアムに行くと、きったない紙で、何故か一時からオープンすると書いてあったのだ。もうスーパー興奮である。もう、Mojo の魔力としか言いようがない!さすがである。

めっちゃ良かった!

撮影禁止なので、写真は残念ながらシェアできない。

  デルタブルースミュージアムでは、いろいろなアーティストの生ギターとか置いてあった。ロバートジョンソンの展示も多くて、どこの店で殺されたかとか、死亡証明書も展示されていた。死んだ現場にいたハニーボーイによると、店の嫁に手を出して店主に毒殺されたらしい。

 他にもジョンリーフッカーのギターの展示、サニーボーイのハーモニカなど物凄いものが沢山ある。ちなみにサンフラワーブルースフェスティバルにはLed Zeppelinのロバートプラントも来てたらしい。

  ハイライトで、1番見たかったものがMuddy Waters cabin。午前中にストローバルで見たところに実際に立ってたマディの育った掘建小屋がここに移動していた。めっちゃちっさい。これが綿花畑のそばのあそこにあってマティは育った。ちなみにマディが後年に使っていた赤いテレキャスターが見当たらなかった。
 後でわかったのだが、伝記を読むとマディが癌で亡くなった時に一緒に埋められたらしい。マディと一緒に天国に行ったのだろう。

 実は昨日のサンフラワーブルースフェスティバルの主催の1人はデルタブルースミューシアムの館長さんらしくそのおばちゃんとおしゃべり。ジュークジョイントフェスティバルが良いよとか、私たちがキングフィッシュのライブに行くよと言ったら、彼はここのデルタブルースミュージアムで練習して(わしが育てたんや的な感じ)で微笑ましかった。ちなみに、デルタブルースミュージアムでは子供にブルース教えてるらしくて、グラミーを取ったキングフィッシュもその1人だったらしい。


クロスロード

その後はロバートジョンソンのクラスロードに。子供の頃に映画のクロスロードを見て以来、とても行きたかった場所である。ちなみに地図を検索すると三つぐらいクロスロードがある。もちろんどれが本当かとかわからないし、本当かもわからない。

 彼より年長のサンハウスによると、彼は全然大したことない腕前だったのにたった一年半で物凄いギターテクニックを身につけていたので、クロスロードで悪魔と契約したと言われている。クロスロードでギターを弾いていると悪魔がチューニングして魂と引き換えにギターテクニックに与える。


  サンハウスのディープでシンプルなギターと比べるとロバートのは相当に洗練されている。後のデルタの文法になったようなギタープレイはそれ以前には存在しないものだったのでサンハウスは相当びっくりしただろう。

  ちなみにロバートもクロスロードという曲を歌ってるし、ヘルハウンドドッグに追われる歌、悪魔と歩く歌とか書いてるのが謎めいていて良い。

  ちなみに近年ロバートジョンソンの音源はチューニングが高いのだが、あれは回転数が早くなってるからという話があり、回転数をアジャストしたものが出回ってる。確かにこちらの方が自然で自分はこっちを聴きたい。

 どれかわからないし、岩崎さんが調べてくれて、映画の撮影場所になったと言われてるところでギターを弾いてみた。17歳でみて憧れたあの場所に立ってるのは不思議な気分だ。Mojoもあるのでこれでシアトルに戻ると相当ディープなギターを六連を感じながら弾けるようになるだろうか?

Standing at the crossroads

 このクロスロードの後はあまり知らなかったけど伝説的なDockery Farmへ。これは何?と思うけど、ここでブルースが生まれたと呼ばれる場所らしい。ブルースの祖と言われるチャーリーパットンがここにいたし、サンハウス、ロバートジョンソンもここら辺にいた様子。このドッカリーファームでパットンが演奏していたらしい。


Dockery farms


ここでチャーリーパットンが演奏してたらしい


 綿花畑、サトウキビと、未舗装の道、そして倒れかかった電柱を見ながらロングドライブをしてジャクソンの街へ。ホテルにはマディやプリンスのギターが展示されていた。


Muddy のギター。安っすいやつや。


B.B. King のルシール


プリンスのギター

 米国で1番犯罪の件数が多いらしので出あるかず、おとなしく一泊。単にニューオリンズが遠いからジャクソンに泊まっただけなので目的地はない。最高のブルースピアニストとわたしが思ってるオーティススパンはここの出身らしい。

Down to New Orleans


 朝食をカフェで取った後ニューオリンズに向かう。またロングドライブ。途中食堂的なところで念願のキャットフィシュを食べた。

Catfish意外と美味い!


 ジャンクフードである。なぜ食べたかったかというと、ブルースの歌であるからきっとミシシッピの人が普段食べてるものだと思ったから。泥臭い味かと思ったけど意外に美味しかった!クラークスデールも含めてミシシッピではジャンクフード的なものしか選択肢がなかった。これもブルースを感じる。

 ミシシッピからルイジアナに移動して生のバイユーを見る。多分アリゲーター沢山おるんやろな。今まで、ジョンリーフッカーとかロバートジョンソンや、サンハウスをかけてたのをネビルブラザーズとかに変えてブルースな気分からニューオリンズ気分に。

  自分はブルース好きでブラックミュージック好きだが、岩崎さんがジャズ好きなのでニューオリンズに来たので自分には特に愛着もない。ただ、ガチの濃いブラックミュージックは絶対見たいと思っていた。ここからは折角Amex Premiumのベネフィットが使える良いホテルで美味しいご飯が食べられるはずなので期待大!


噂のバイユー?

  クラークスデールで出会ったイタリアから来たミュージシャンの人に実はTipを聴いていた。実は自分にとってブルースの旅はこれが初めてではない。初めてのはS.R.V.も好きなのでテキサスのオースティンに去年行った。ホテルの前は伝説的なライブハウスのアントンズで、大興奮、しかも毎晩のようにブルースのライブをやってる6thストリートというのがあって最高やん!思ってたけど、実際行ってみるとバンドののレベルがあれ?って感じで、結局S.R.V.が出てたライブハウスを探して行ってそこそこの演奏を見て帰ってきた残念な思い出がある。


オースティンの思い出。これは良かってんけどな。


熱かった。

しかも当日アントンズはブルースではなくハウスが演奏されていて流石に見に行かなかった。残念すぎよ、、、下調べ重要。

なんで、ハウスやってるねん、、、Antonsよ。。。

地元の人が行くライブハウスを見つける方法

 そんなことがあったのでそのミュージャンに観光客用では無く地元の人が行く店をどうやって知るかと聞いたらシンプルな答えをくれた。

ホテルのコンシェルジュに観光客向けじゃ無くて地元の人が行くライブハウスを教えて欲しいと聞けば良いよ

イタリアのミュージシャン

と。陽キャの岩崎さんはすぐ人に話しかけられて素晴らしい。早速ホテルのコンシェルジュに聴いていた。

今日だと、ネビルブラザーズに関係があるシャーマインネビルのバンドが良いよ!ちなみに著名なバーボンストリートではなく、ハズレにあるフレンチマンストリートが良いらしい。

Charmaine Neville Band だと…

食事はなかなかカッコいいジャズバンドが見れるカフェで食事をして、岩崎さんからジャズの複雑なリズムについて教えてもらう。

岩崎さんがこの度で唯一仕事をしないといけない1時間をそのバーで過ごしたがライブを聴いて、歌の歌詞を覚えることに充てたので有意義であった。科学的根拠に基づく最高の勉強法を読んでから暗記が楽になったものよ。

シャーマインネビルバンド

 大昔にネビルブラザーズが名古屋の近くに来ていてライブを観に行ったことがあって、あの時凄い演奏をしていたので、ネビルの血縁者の人の演奏がこんな小さな箱で観れるのえぐいんちゃうか?という期待と、シャーマイン自体は聴いたことなかったのでしょぼかったらどうしようという弱気を、いや、おれMojoあるから大丈夫やろと思い直す。さすがMojoの効果である。結論から言うとこの旅で見た最も最高の演奏だった。人生の中でも確実に5本の指に入るレベルだった。

こんな凄いバンドをこの箱で見れるとか最高すぎる

 もう何が凄いってリズム隊。グルーブがえげつないし、コロコロリズムが変わるのに本人たちは余裕でメンバー間のインタラクションを楽しんでる様子。もうマジで気持ち良い。ピアノとアコーディオンを弾ける音楽知識が豊かそうで面白いおじいちゃん、そしてシャーマイン本人もめっちゃ良いパフォーマーでえげつないリズム隊と同レベルのリズム感がエグいのに本人楽勝で面白く楽しい載せ方をしていて、バンドが個人のインタラクションで生き物のように反応する姿は最高の一言。

この人の凄さよ…

さらに、シャーマインが客席に黒人のおっちゃんを見つけて演奏しろと言って、白人のおじいちゃんに、お前クビ。とか言ってピアノ交代。

そしたらそのピアノマジでエグい。強烈なニューオリンズのピアノうねるようなグルーブ、誰か知らんけど絶対有名な人やと思う。もう凄い演奏やった。

 そのピアノのおっちゃん含めて、なんか若い娘さんが出てきて、シャーマインが若い世代にバトンを渡さなかあんやろとか言ってヴォーカルをその若い子に任せて自分はパーカッションに。その子もチュニジアの夜を歌ってめっちゃ良かったけど初々しくて多分初めてなんだろうけど本当に嬉しそうだ。

こうやって Neville の伝統が継承されるのだろうか

こんな有名な箱で、物凄い実力のヴォーカリストからヴォーカル譲ってもらってあんなにえげつないレベルのミュージシャンをバックに歌えたら最高だろう。シャーマインもきっと先代からこんな感じでネビルの伝統を受け継いでいるのだろう。あまりにカッコよかったので、Spotifyでお気に入りにした。本人もミュージシャンも本当に気さくな人だった。

 もう無茶苦茶満足して帰ろうとすると、あるバーからブルースが聞こえた。しかも相当ディープな演奏だ。観るしかないと思って入ってみると若い子がヴォーカルで、キーボードとドラムの構成でいろんな曲をやってて楽しめた。キーボードは器用でベースも一緒に弾いていたがとても良いグループだった。シアトルではこんなにゴリゴリに真っ黒な演奏を聴けることは無いのでブラックミュージック好きとしては信じられないぐらい最高体験だった。

ディープな演奏で満足!

 翌日は実質音楽を聴ける最後の日で、ジャズを観に行ったけどなぜかやってない。近くのバーで演奏してる人がいたので観ていた。感想的には黒人やからと言って練習しなかったらあかんねやなと言う学びになった。

コンゴスクエア

 ミュージアムでジャズの歴史に触れた後にサニーランドレスの曲で知ったコンゴスクエアに行って来た。彼の曲でVoodooの人々が集う場所とかMojo emotionと歌われていたので気になっていた。


Voodoo people gather
ここで人々が集まってダンスしたり歌ったりしていたのだろう。
コンゴスクエアはルイアームストロング公園の一部にある


 コンゴスクエアは奴隷として連れてこられた人が、フランスからスペインへなどの統治の変更を経て、監視が若干緩まったタイミングで奴隷の人々がそこに集まって踊ったり歌ったりしていた場所のようだ。その後またそれが問題になったりもするようだか。

奴隷はニューオリンズがハブになってたのでアフリカの人が沢山いたと思われる。ブルースの歌詞でも、Mojoを手に入れるのはルイジアナとのお約束なので多分文化の濃いところだったのだろう。

Going down to Louisiana to get me a mojo hand
Going down to Louisiana to get me a mojo hand
I'm going to have all you women, getcha under my command

Got my mojo working

 岩崎さんが、Hoodoo の怪しい店を見つけてくれたので店に入る。

Witchcraft & Hoodoo shop! 怪しすぎる!


 レジの人に Hoochie Coochie Man の歌詞の残りの二つを聞く。「John the Conquerorありますか?」とあるはずないやろと思いながら聞くと、「残念ながらないわ」と一件目で言われた。普通にコンピュータで在庫調べるのがシュールである。私は一件目で、Mojo hand を購入。なぜかキティちゃんの袋に入っていてありがたみが無い。これは自分に自信が持てるようになるものだった。

Going down Louisiana to get me a mojo hand


 二件目は相当怪しい感じだった。濃厚なHoodooの香りがする。店員さんに聞くと「John the Conqeror」が普通においてあった。障害を取り除いてくれる効果があるらしい。もちろん即買いした。

John the Conquerorの本物

 ちなみに、John the conqueror はある木の根っこなのだが、由来は、黒人のフォルクローレで、昔アフリカの王子だった人が、奴隷として売られるんだけど、王子としてのスピリットを忘れずに、黒人のヒーローになるという話があるらしく、それの名前がついているとの事だ。ちなみに、Mojo の材料にも使われることがあるらしい。

...Got a black cat bone
got a mojo too,
I got John the Conqueror root,
I'm gonna mess with you...

I'm your Hoochie Coochie man

じゃぁ、ということで、勇気をもって、「Black cat bone ありますか?」「ごめん無いわ~」と言われてしまったが普通に分かっている感じであった。クラークスデールから、ブルースの歌詞で多く歌われるように、ルイジアナに下って、そこで怪しいお店で Mojo hand と John the Conqueror を手に入れた。ほんま歌詞のまんまを実践している。

Black Cat Bone の作り方

 後でホテルに帰ってから分かったのが、何故「Black cat bone」が売られていないか。それは次の Wiki に詳しかった。

  この Wiki が最高に詳しいが、私のように Black Cat Bone を手に入れたい人のために作り方を日本語で解説しようと思う。

Chat GPT に作ってもらった Black Cat Bone.

Black Cat Bone を作るためには、黒猫を用意して、真夜中に生きたまま熱湯で茹でる。かわいそうすぎる。あと骨が沢山あるから、それが Black Cat Bone と思ったら違うらしく、黒猫1匹から、Black Cat Bone は特別な骨なので1つしか取れないらしい。3つぐらいの違う方法があって、それで Black Cat Bone を見つけるらしい。一つ目の方法は、呪術師が、一つ一つ骨をかじって、苦いのがあったらそれが、Black Cat Bone。二つめの方法は、鏡で骨を一つ一つ映すと一つだけ映らないものがある。それが Black Cat Bone。3つ目の方法は、水に投げ入れて、浮き上がってきたものが Black Cat Bone。

 ちなみに、効果は、不可視になること、幸運、Black Magic からの保護、死後の復活、そして、ロマンティック面での成功らしい。そら Muddy モテまくるわな。ちなみに、Black Cat Bone は売っていることもあるが、それは鶏の骨とかで偽物ばかりらしい。この作り方やと無理ないな。作り方わかったけど、猫かわいそうすぎるので、今回はあきらめよう。

 ちなみにVoodoo と Hoodooという表現があるがこれは意味が違うらしい。Voodooは宗教であり、Hoodooは個人的なものらしい。MojoはHoodooの呪いアイテムなので、マディや、John Lee Hooker の歌にあるルイジアナに下ってMojo hand を怪しい人から手に入れるのはHoodooだからということになる。(組織的な宗教では無い) ジミヘンのVoodoo chileは宗教の方だろう。


ニューオリンズ飯は美味い!

 大変美味しい地元のイタリアンでザリガニとかスイカの美味しいのを食べた後はまたフレンチマンストリートで音楽をエンジョイする。

謎のスイカ料理美味い!

最初はインスト、ソウル系のバンドをエンジョイして、セットが入れ替わってしばらく楽しんだ後、dba というバーに入る。

ライブが聞けるバーがそこここに
中々のバンドだった。

ツインドラムのバンドがファンキーな演奏をしている。ギターは明らかにあーこの人ブルース絶対好きやわという演奏でとても良い演奏をしている。
 あれ日本人ちゃう?という顔つき。途中ラップの人が飛び入りしてカッコいいラップをかましたり、ヴォーカルの人が一曲ごとにお客さんに酒を飲ませたりした後に、ブルースが聴きたいかー!とか言い出して、案の定ブルース好きそうなギターの人がガンガンにブルースをエンジョイしてる。

ツインドラムのファンキーなバンド。ん?右端日本人?

 日本人って音楽的に不利やと思っていたけど、この人の演奏を聞いてると日本人はより繊細で表現豊かな演奏ができるんちゃうかと希望が持てる。何よりめっちゃ楽しそう!あれ、ヴォーカルの人ギターの人を山岸って言ってない?

山岸…さん?

途中でもしかしてと思った。私は名前は存じ上げているが残念ながら聴いたことないけどめっちゃ著名なブルースギタリストで今ニューオリンズに住んでるとかもしかして、、、

マジで山岸潤史さんやん

 と思ったらやっぱり山岸潤史さんやん、、、後で調べたら凄いキャリアやなぁ。ブルースのTシャツ着ててあんな有名やのにめっちゃ良い人で気さくな人やった。そんで何より演奏を楽しんでてむっちゃブルース好きやった。もっと話したかったけどもう12時ぐらいやから急いで帰ってはった。

ちなみに、山岸さんはこの教則ビデオで、「通用するとか、そんなことはどうでも良くて人を楽しませて、自分も楽しむのが重要なんだよ」って楽しそうに言っていた。彼の演奏から本当にそれを感じた。やっぱ楽しむのが一番なんやな。

ちなみに山岸さんは他にもバンドやってて、また明後日やるねんけどなぁと言っていた。次回またNew Orleans 来るときは連絡とってやるバンドを教えてもらおう!

奴隷の歴史

 最終日シアトルに戻る飛行機に乗るまでには、ニューオリンズの奴隷と抑圧の歴史をミュージアムで学ぶ。なんともひどい話で、奴隷制度が終わった後も、権力者が労働力を手に入れるために、無理やり刑務所に入れて働かせるというルールを作って強制労働させられるため、塀の中で一生を終える人が物凄く多かったらしい。ちなみに、奴隷が逃げるとどうなるかというと、Punish が待っていて、手首を切られたり、足を切られたり、むち打ち引き回しだったりととんでもない話である。昨日のコンゴスクエアのことを思い出す。そんな状況で、悲しい感じがブルースになり、その中でも楽しみを見出してジャズになっていったのだろうか。

酷い話である。


 この旅行の間で読み終えた Muddy の伝記にも書いてあったが、Muddy は字が読めなかったため、契約は相当適当だったようで、彼が、「ロイヤリティ」というものがあると知ったのは、彼の晩年に The band のラストワルツに出演した時らしい。つまり、Chess レコードの時も、イギリスから招待されて世界でツアーしていた時も、彼はそれをもらってないという事になる。

 まだ、Chess の時はそんなひどい扱いではあるが、ファミリー的な付き合いだったので、Muddy が病気になれば病院代はもってくれたり、キャデラックなどの車を与えてくれるので Muddy はそれで満足していたし、Chess 兄弟のことは友達と思っている様子だったけど、伝記を読んでいても、どんなにヒットしてもリッチになった記述がなかったのでなんでやろうと思うとそういう事らしい。やっぱりいつの時代も誰かに働かせてピンハネして良い思いをする人が居るのだろう。恐ろしいことにその法律が廃止されたのは2018年らしい。最近やん!


廃止が2018年ってマジっすか…



 日本に居ると、Black Lives Matter とかの時、アジア人も差別されてるやん!という意見があったが、こんな感じでレベルが違うので全く別もんだと思う。そら自分がその立場やったらそんなことをしてくる人と仲良くなれるだろうか。

 最後はこのブログを書きながらシアトルに戻り日常が始まる。ずっと行きたかったミシシッピそして、ニューオリンズに行って濃厚な音楽の体験をして最高やった。多分地球上でこれを体験できるのはここだけだろう。

楽しい日々は一瞬で過行く

 来年はまたクラークスデールにいって、Juke Joint Festival に参加して、ガチのジュークジョイントでディープなミュージシャンに出会いたいものだ。ジュークジョイントフェスティバルの主催の一人は、クラークスデールで、Mojo を売ってた店主さんやった。こんな素晴らしいブルースの街が滅びないように是非寄付をしていきたいと思う。

 今年は、もう何十年ぶりかだけど、ブルース、しかもシカゴスタイルのバンドをやる予定になってて、めっちゃめちゃ楽しみである。Big A や、 Muddy も演奏していたローズウッドのシングルコイルのテレキャスを買おうと思っている。クラークスデール、そしてニューオリンズで体験したことと、Mojoもあるし、楽しんで、そしてむっちゃくちゃディープな演奏を追求するで!

 ちなみに、このブログはそもそも読む人がほぼおらんと思うけど、一応自分の本の案内もつけておこう。おかげさまで9万部売れたので、あと6000部ぐらいで10万部らしい。多分 Mojo (Good Luck & Confidence) と John the conqueror (remove the obstacle) があるのでそら楽勝やろ。


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