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将来性

 経済活動の再開に伴い、以前より問題視されていたこの国の担い手不足が、様々な職種においてみられるようになっています。よく取り上げられるのは教員の競争試験の倍率が危機的な水準に低下していることですが、最近では防衛力強化の観点から、自衛隊の充足率の低下が取りざたされています。
 また、介護現場や外食産業は恒常的に人手不足のようですし、タクシーやバスの運転手も足りず、人手不足ゆえの営業時間短縮や減便といったことも生じているようです。さらには、国が拡充の方針を打ち出したことで全国で一斉に採用を拡大した児童相談所関係の職員なども、採用に対する応募は非常に少なく、人材確保に苦戦しているようです。
 ただ、人手不足に悩んでいる職種というのは、総じて、将来性に何らかの不安のある職種のように思います。移民政策の大転換により外部から人を呼び込むような国に変貌しない限り、少子化傾向は続きますので、少子化に密接にリンクしている職種は、今は良いけれど、10年、20年先を考えるとそこまでの労働需要がないことが明らかであり、今の待遇が改善されても、先を見据えた選択をするような人材がそうした職種に飛び込んでくることは、損得抜きの強い動機を持った人でない限り、なかなか難しいように思います。介護については、ニーズはあるものの、体力的な問題や、給与水準が上がりにくい職位や賃金の体系の場合が多く、やはり10年、20年先になると生活ができるのかという不安があると思います。運輸業や外食産業についても、似たような理由で人材確保は難しいのではと思います。
 個々のパーソナリティとしては魅力ある人がいる職種や職場であっても、そうした先輩たちが10年、20年後に、どのような生き方をできているのか、不本意に別な道に進んでいたり、当初の理想を見失っている、そんな人が多い職場は、将来性がないし、魅力がない。変化の大きいこの先の時代を見据えると、できれば多様な可能性を切り拓くチャンス、キャリアアップの場が用意されている職種を選択したい、そう考えるのが人情であり、そこに訴えずして人材確保に躍起になっても、なかなか実を結ばないというのが、不都合な真実であるように思います。

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