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同志少女よ敵を撃て

 第二次世界大戦の中でも独ソ戦は、両国で絶対的な権力を握る独裁者が、相手国を相入れない存在として敵視したことに加え、捕虜になっても相手国に残酷な方法で殺され、逆に苦境に立たされ戦線離脱しても、今度は裏切り者して味方から射殺たことから、その戦いは全滅するまで戦闘が止まることがない、凄惨を極めた戦いであったと言われています。
 独ソ戦については、数年前に新書が出されて話題になりましたが、この本はその独ソ戦について、ソ連の女性狙撃手の視点から、戦場における極限状態での命の駆け引きを、とてもフィクションとは思えない迫力で描いています。
 全神経を集中し、あらゆる知見を動員して、スコープの中に捉えた敵の将官や狙撃手を、躊躇なく殺すことを課せられた狙撃手のプレッシャーは、僕の想像を遥かに超えています。
 実在したソ連の女性狙撃手のリュドミラ・パヴリチェンコは、戦争中、米国訪問時に大統領から歓待を受け、米国各地で講演するなど、ソ連以外でも英雄扱いを受け、戦後もソ連国内では活躍したようですが、晩年は心の傷からアルコール依存症となったそうです。
 最近は、国際関係が緊迫の度合いを増して、ポスト冷戦の終焉が、外交青書に記載されるなど、次の戦争に向けた戦間期に入るような、不穏な雰囲気になっていますが、戦争が多くの人の未来を奪い、心を奪うことは確かであり、地域間戦争に引きずられて、世界大戦になってしまうことは、国際経済を大きく損ね、再建に向けては長い苦難の道のりを歩むことになります。
 何とか、国際的な枠組みは維持し、現在進行中の事態に対処しつつも、破滅的な事態に陥らないように努力することが、今は求められているように思います。


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