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栃木県が東北地方の残念
最近、比較的よく売れているシリーズものの小説を読んでいたところ、栃木県が東北地方の県であるというような記載が、文中にありました。
地理について書いた本でもなく、栃木県が東北地方扱いされることが、その先のストーリー展開に影響を与えるわけではありませんが、僕の認識としては、栃木県は関東地方又は首都圏に位置づけられる県であり、新潟県や山梨県、三重県のように、地域のカテゴライズのやり方により、組む相手が変わるような県ではないと思います。
また、福島、栃木両県の県境付近にあり、「みちのくの玄関口」として古代より存在する、白河の関の重みを考えると、そこをまたいで、「広い意味で東北地方だよ」と寛容に考えることも、難しいように思います。
著者にはそこまで思いもなかったのでしょうし、話の流れとしても東北にしておいた方が都合が良かったのかもしれませんが、校正の段階で、ここをどう取り扱ったのかが気になります。
僕は以前、フリーの校正者として活躍されている、牟田都子さんの書いた「文にあたる」という本を読んだことがあります。
https://www.akishobo.com/book/data/1074
牟田さんによると、校正というのは、誤字・脱字を指摘するだけでなく、固有名詞や数字、事実関係についても誤りがないかを確認するため、たとえば、その海域ではアシカはいつ頃まで見ることができて、書かれた文章の時間軸との間に矛盾がないか、といったところまで確認するそうです。
たしかに、明らかな誤字・脱字が続くと、読む気が失せることは確かですが、それは、著者に対してというより、校正が不十分なまま市場に本を出した出版社に対する不満であり、「今後は気をつけてよ」という、リカバリー可能なものです。
ただ、事実関係となると、それがわかる人間にとっては、読んでいて、いきなり冷や水をぶっかけられた思いがします。誤字・脱字と異なり、著者に対する信頼が失われるため、不満というより、興ざめする、といった形で、読む気が失せてしまう。僕自身、この本を途中までいい感じで読み進んでいましたが、「さすがに栃木県は東北地方はないだろう」と思い、中途で読むのをやめてしまいました。
著者も万能ではないわけで、それぐらい目を瞑ってくれよということもあるかもしれませんが、ちょっと、栃木県が東北はいただけない。
ここは、まっとうな校正者が入っていれば、当然指摘したのでしょうが、この本を出している出版社、少し信頼性に欠けるので、もしかして、校正をしっかりやっていなかった、という疑念もわいてきます。
あるいは、ここを変えると、小説の筋を少し変える必要があるから、変えなかったということでしょうか。それとも、この先の伏線として必要なのか、いずれにせよ、読むのをやめてしまったので、わかりませんが。
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