金融緩和の先の崖

 日銀が金融緩和の継続を決定しました。黒田総裁は利上げについて全くないと明言し、市場は好感して株価が上昇したようです。
 とはいえ、世界の主要な中央銀行が金融緩和を終了し、利上げに転じる中で、いつまでも金融緩和を続けることは難しいと思います。為替は円安方向へのトレンドを進むことになりますし、それは国内における輸入物価やエネルギー価格の上昇を一段と底上げし、企業や家計を圧迫しますし、日本の通貨が対外的に弱くなることで、海外への留学や旅行の費用が膨らみ、日本人が海外に行きにくい環境をつくり出してしまいます。
 一方で、金融緩和の手段としての、市場に流通する国債を日銀が実質指値で買い取り、金利を低位で固定させることが、コストを気にせず政府が各種経済対策を打つことを可能にしており、事実上、国の財政運営の自由度を確保するためには、当面は金融緩和を継続せざるを得ない、とはいえ、そんなことを表立って理由とすることはできないので、日銀としても物価上昇は一時的なもので、政策変更するところには至っていないと強弁するしかないのでしょう。
 このへん、経済評論家とか多くの関係者は認識していると思いますし、総論として日銀の金融緩和の終了も視野に入れるべきと言及はしていますが、インフレを抑制しつつ財政のファイナンスの自由度を確保するような金融政策の解はないため、なんとなく問題点は指摘しつつ、深入りはしない、そういう論調に終始しているように思います。このへん、金融緩和の先にある崖が見えるようで、怖さを感じます。
 輸入価格の上昇で貿易赤字も拡大しており、とはいえ外貨準備高はまだ十分にあるようですので、いきなりスリランカのように危機に陥ることはないと思いますが、経常収支全体の赤字幅が拡大し、それが恒常化してしまうと、外貨は減少し、中長期的には国の信用リスクが高まっていくことになります。
 この先、この国の数十年の人口減少は、既に起こっている未来であり、一人一人が今より多くの付加価値を生み出さないと、国全体の経済力が大きく落ち込み、海外からの調達コストも膨らんで、国民経済が窮乏化します。この問題を次世代にすべて押し付けず、まずは自分が変わっていく、付加価値を生み出す努力をしていく、今のところで指折り数えて息をひそめて安寧を貪るのではなく、自らが後進にとっての手本となる、なかなか大胆な宣言ですが、そうした気持ちで自分を変えていきたいと思います。
 

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