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運輸業界の人手不足と車を避ける若者

 国内では、トラック、バス、タクシーといった運輸業界の人手不足が課題となっており、その背景に、長時間勤務や低い賃金水準といった労働条件があることから、2024年には、この運輸業界の労働環境改善のために、厚生労働省が「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)」を改正し、まずは長時間勤務の改善を事業者に求めていくようです。
 改善基準告示は法律ではなく、 違反した場合に罰則はありません 。 しかし、改善基準告示に違反した場合、国土交通省により行政処分が下される可能性があり、重い場合、一定期間の事業停止となることもあるようです。
 ただ、こうした改善基準告示に対応した、労働環境改善は、人材確保につながる面もありますが、多くの業種で人手不足になっている現状を考えると、やはり賃金水準の引き上げとセットでないと、効果は薄いように思います。
 また、労働環境改善は、短期的には現状の人手不足を一層深刻化させるものであり、現実に、改正を見据え、バス路線については都市部であっても、大幅な減便が行われているケースがあるようです。
 そもそも、少子化により運転免許取得者数は、若い世代ほど実数としては減少しており、若い人の取得率は言われているほど顕著に下がってはいないようですが、免許は持っていても自動車を保有せず、運転したことがないという人、これは若い世代に増えているようです。
 実際、僕の職場も、ある程度、車の運転ができることを前提に、地方の営業所や出張所に一定数配属する必要がありますが、若い人の多くは運転に不慣れなため、小さな事故は増えているようです。また、車を運転して事故を起こすと、大したことなくても、手続きとしては大変面倒なことになるため、車を運転する職場に配属されることを警戒し、仕事の運転不可を異動希望で出す人も少なくないようです。
 日本社会はクルマ社会となって生活圏は広がり、それに応じて商業施設は集約化され、公共交通は減少してきましたが、ここに来て、そもそも車を運転できる人が減っている状況になり、公共交通も運転手不足で人繰りに苦労する中、人の乗っていない田舎ほど減便されています。
 数十年のスパンでは、各地域の人を呼び込む努力とは関係なく、長期の人口推計に近いかたちで、地方の人口減少は急速に進み、減少した総人口は都市部に集約が進むのだと思いますが、そこまで移行する過程での、地方圏でのサービス維持をどう担っていくのか、社会全体の生産性を考えると、運輸業界に人を多く貼り付けるのは、国の成長にとっては得策ではなく、自動運転などの技術革新を急ぐしかないのかもしれません。

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