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自分の茶室に相手を講じ入れる

 このところ、仕事の関係で、第三者委員会や訴訟支援をお願いしている弁護士や大学教授、国の法案作成に携わる法務の専門職といったような、若いころ法律の世界に入り、長きにわたって法律を武器や防具として使いこなしてきた人たちと、意見交換をする機会が増えてきています。

 僕なりに、面談相手のことについて、これまで発表してきた論文とか、どういう分野の法制度に通暁しているか、これまでどのような経歴を歩んできたのか、といったことを下調べして、意見交換には臨むのですが、
当然ながら、法務の知見においては、先方がはるかに上であり、入り口は礼儀として、相手のフィールドで話をはじめるにしても、そのフィールドにとどまっているかぎり、相手の意見を拝聴するにとどまり、こちらの色を出すことができません。

 まあ、それでも意見交換としては成り立つのですが、相手のフィールドで話していると、会話は基本的に一方向になり、せいぜい、付け焼刃の知識で打ち返すぐらいが精いっぱい、当然ながら、そんな打ち返しは相手にしてみれば既知の話なので、あまり話は盛り上がらずに終わってしまいますし、相手の印象にも残らない対談となります。

 もともと、相手の方が立場が上にあり、さらに相手のフィールドで行儀よく応対していれば、完全にアウェイでこちらとしては不如意でなため、相手に礼を失しない程度に毒にも薬にもならない顔合わせをすることで、とりあえず及第点の役回りをして頃合いをみて退く、これでも僕の役目としては及第点ではあると思います。

 ただ、それだとつまんないですよね。
 
 せっかく相手も多忙な中、時間を確保して面談に応じてもらえるわけで、できればこちらから相手の興味を引く話題を振り込みたい。そこで、一通り相手のフィールドでさや当てをして、アイスブレイクしてから、自分のフィールドに呼び込み、話をしてみることにしました。

 僕のフィールドであれば、あちこちに隠れた引き出しがあり、相手の反応に応じて、引き出しを開け、僕の現場の知見を交えつつ、先方の知らない世界を見せることができます。

 特に合意形成の試行錯誤とか、実務的なグレーゾーンでの対応、法律の決めはないところで相手との貸し借りの中で、どういう落としどころに持ち込むかといった、双方の期待値コントロールしながらの折衝は、先方としても欲しいところであり、時間を使った価値があったと思ってもらえることになります。

 ここで価値提供を意識し、儀礼的な面談以上の価値をお渡ししたところで、僕自身のビジネスに直結して対価が入るようなことはありませんが、今後は直接のコンタクトを取りやすくなり、インナーサークルに入り込むことができれば、入手できる情報の質が上がり、僕自身のストックができて、それをてこにさらに人のつながりを多角的に深化させることができるようになります。

 今後も、相手を調べてまずは仮説を立て、入り口部分でのアイスブレイクを無難に進めて後、こちらの茶室に講じ入れ、茶室の中の僕のフィールドで、できるだけのもてなしをさせていただく、一期一会の機会を逃さず、最大限の価値提供をすることを、今後も心掛けたいと思います。

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