ゲーム・オブ・ザ・イヤー 2020

毎年この時期になると思ってしまう、「今年一番のゲームは何だろう」と。基本的に一番遊んで楽しかった、印象深かったゲームを選んでいる。今年のゲーム・オブ・ザ・イヤーはちょっと特別な理由も含めて選んだ。もちろんゲームとしてもかなり評価できるが....

Steam版の発売日が最高のタイミングだった...

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Quantic Dreamによって開発されたDetroit: Become Humanである。

実際にはPS4版は2018年5月25日に発売され、PC版(Epic)は2019年の12月12日に発売。そしてPC(Steam版)が2020年6月18日に発売された。自分は(何故か)Steam版が出るのを待っていた。

Detroit: Become Humanの大まかなあらすじ

なるべくネタバレを防ぎたいのでかなり大雑把です。

舞台は2038年のデトロイト。人間そっくりなアンドロイドが普通に生活する世界。外見は人間と全く変わなく意思もあるのに、あくまで人間からは「所有物」として扱われ、人権も自由も無いアンドロイドたち。

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プレイヤーが操作するアンドロイドは3人:

家政婦系のカーラ。所有者は中年男性のトッド。全般的な家事の他にトッドの娘、アリスの面倒を見るのが主な役割。ある日、アリスがトッドから虐待されているのを目撃し、彼女を守るためにトッドの命令に逆らい彼女と共にトッドの家から脱走。

警視総監系アンドロイドのコナー。刑事のハンクと共にアンドロイドが(所有者の命令に逆らう)変異型になった事件を調査。

介護系アンドロイドのマーカス。画家のカールの介護をし、カールから本当の息子の用に扱われている。しかし、ある事件をきっかけに処分対象となり、アンドロイド達の自由を求めるために行動。

ゲームシステムはかなり単純で主に会話や行動の選択肢で物語が変化する、と言う内容。感覚としては「自分の好きなように物語を進められる映画」に近い。些細な選択が後からかなり重要だったり、選択肢によってはキャラの生死が変化など・・・自分の選択肢によって物語がかなり変化する。

感想

一番最初に思ったのが、グラフィックがリアル。キャラクターのモデリングがとても作り込まれてて、些細な表情の変化など含めて、時折実写と区別つかない感じだった。ゲームのシステム的にも「自分で結末を選べる映画」な気分で「遊んでる」ってより「見てる」感じだった。映像作品としてはとても優れている。しかしゲームとしてはどうだろうか?ゲームだからこそ存在する「選択肢」に意味があるのかもしれない。

なお、Detroit: Become Humanで最も重要だったのはストーリー。ゲームのシステム上ストーリーが成り立っていないと意味がない。そしてこういった言い方すると悪いが、メインテーマはアンドロイドと人類の境界線と言った「ありがち」な内容でもある。

主人公3人のストーリーの中で最も引き込まれたのがマーカスのストーリーだった。本編中、マーカスはアンドロイドの人権と自由を求め、革命組織のリーダーとなる。彼が革命行動を平和的に行うか、暴力的に行うかは完全にプレイヤーの選択肢次第である。この選択肢には常に悩まされた。

本作がSteamで配信されたのが2020年の6月中旬だった。自分は初日にSteamで購入し速攻でプレイした。そしてマーカス編に不意打ちを食らった。当時アメリカでは5月25日のジョージ・フロイドの死をきっかけにBlack Lives Matter(BLM)運動が盛んだった。6月1日にはBLM運動が続く緊張状態の中、一部の集団が暴走、放火、強奪などを行い始めた。なお、この暴力集団とBLM運動が関連していたか未だに不明である。

そしてDetroit: Become Human内でマーカス編の「平和か暴力か」の選択肢に迫れるたびにBLM運動を思い出だされていた。毎回、毎日、毎週と見てきたデモ団体の姿が脳内に浮かんだ。みんな平和的にデモ活動していた。また暴動が起きないか不安で見守っていた。マーカスの率いるアンドロイド集団にも似たものを感じていた。

平和か暴力か。ずっと平和活動をしていたら、最終的には舐められて主張を真に受けてもらわれずに終わる不安がある。そして反抗組織の暴力によって活動終わらさられる可能性も十分ある。逆にこっちが暴力で解決しようとすると、「暴力団体」とレッテルを貼られ、主張どころではなくなる。最終的には内戦になりかねない。正直、正しい選択肢など無いと感じ、作品内でのこれらの可能性を現実世界に重ね、毎度迷わされた。

マーカスの革命行動を暴力的に行う、という選択肢は最後まで選ぶ気になれなかった。ここで暴力を選択すると、現実世界の暴力団体の行動も判定してる気がしてしまった。自分の中でそれだけはどうしても譲れなかった。「カールのおじいちゃんも暴力なんて望んでない」って自分に言い聞かせながらなるべく平和主義を貫き通した。

Detroit: Become Humanは偶然にも現実世界の出来事との重なり、物語のテーマをより深く楽しめた作品だった。今年の6月にプレイしたからこそ本当に意味があった作品だった。自分の選択肢が100%正しいとは思ってないし、他の選択肢によって物語のがどう展開するかも気になる。他のプレイヤーたちも「正しい」「自分ならこうしてる」って思った選択肢を選び、自分だけの「物語」を楽しんでほしい。

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