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ギブソン

隠れギブソン好きです。
ちなみに隠れオベーション好き、隠れラリビー好き、隠れギルド好き、隠れラミレス好き、でもあります。

自分の好きなプレイや音でいえば
ビートルズのJ-160EやJ-200、ジョン・レンボーンのJ-50、グレッグ・レイクのJ-200などなど、ギブソンのギターは強い印象を残すプレイを生み出した例が多いですね。

しかし
グレッグ・レイクの音に憧れてJ-200を買ったのは大失敗でした。グレッグ・レイクの”あの音”が出ないだけでなく、いつまで経っても鳴ってこない。音質はとても良かったのですがびっくりするほど反応が悪いギターでした。あの風貌で音が小さいというのは・・・
いつか良い感じになると信じてましたが、3年ほどで我慢できなくなり、ギルドとトレードしました。

要するに「"J-200は"良いギターだ」と思ったのが大きな間違いでした。
いや「ギブソンは良いギターだ」と思ったのが大きな間違いでした。
そう。ギブソンは個体差が激しいのです。ここまで激しいメーカーを私は知りません。(以前の私のような)素人がJTなどに憧れて「J-50をください」と楽器屋に行くとかなりの確率で失敗するでしょう。

失敗を何度も重ねて得た教訓は
「ギブソンは耳と足で探せ」
ということですね。これは家訓にしても良いです。

良い個体はめちゃくちゃ良いので、それを粘り強く探すべきです
ギブソンを買う以上、”そこそこ満足”というレベルで手を打つのは勿体ない気がします。
また私の体感では”そこそこ満足”というギブソン自体がすごく少ないんですよね・・・・

また年式によってコロコロ仕様が変わるのもいかんともしがたいです。
特にネック周りの変更が・・
細くなったり薄くなったりかなり迷走感があります。

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(このニヤけ顔)

私は現在1958年のJ-50を使っています。
低音から高音まで奇跡的なバランスを持ち、強いタッチにも素直に応えて伸びてくれます。
そしてネックは何故か1959年のタイプが搭載されており、これがまた感触が良いです。

これを入手するまでに20本以上試奏して回りました。ジョリジョリしたやつとか、スッキリしたやつとか、5フレットまでなら最高なやつとか、色々ありました。というか本当に同じモデルなの?全部が全部、音違いすぎでしょ。
これは「モデル」とか「年式」とかで特徴を括るのは危険だと思いましたね。そんな繊細な棲み分け絶対してないでしょこれ。

とはいえ幸運にも極上のやつを無事入手できたので幸せです。

ただ一点。
アジャスタブル・サドルだけが不満でした。
これはサドル両端のネジを操作すれば、弦高を自由に調節できるという画期的な仕組みです。これを一刻も早く普通のサドルに改造したいと考えていました。

よく「セラミック素材のアジャスタブルサドルが特有の歯切れの良さを生む」とか言われますが、そのような都市伝説は全く信じてません。サドルが上下する構造ということはサドルの底面がブリッジに常に当たっていないという事であり、それが音に良い効果などあろうはずが無いのです。
なのでアジャスタブルサドルを外してノーマルなサドルを装着する改造をお願いしたところ、衝撃の写真が。

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わかりますでしょうか。
これはサドルを外したところなのですが、ブリッジを貫通して表面板が見えているのです。これを見た瞬間は20秒ほど絶句しました。

通常のギターの設計では、弦振動がサドル〜ブリッジで受けられ、表面板に行き渡るわけです。そのためにサドルの底面がきっちりブリッジと接着していることが求められます。
しかしこの写真の構造だと、その音の経路が分断される事になり、否定されます。そもそもこれだけ大きな穴の開いたブリッジだと表面板への情報伝達にかなりの悪影響がありそうです。このブリッジがサウンドメイクにどれだけ寄与できるのだろうか…

逆にいうと、
ブリッジ本来の働きが望めないこの構造で、何によって弦振動を表面板に伝達しているのか?

そうです。
表面板とサドルを繋ぐ「ネジ穴」。
写真でも2つのネジ穴を確認できると思います。
この部分は少なくともサドルで受けた弦振動をダイレクトに表面板に伝えていそうです。もしかしたらブリッジよりも影響力は大きいかも?

その証拠に、アジャスタブルサドルを操作すると「音自体が変化する」のです。
こんな恐ろしいことありますか?
私も一度ネジをいじって音が変わってしまい、相当焦りました。元に戻らない!
それからというもの、自分の耳を頼りに0.1ミリ単位で左右のネジを追い込み、なんとか元のニュアンスを3日ほどかけて再現させました。
それ以来ネジは触ってません。アジャスタブルどころかアンタッチャブルです。

それにしても、表面板を振動させて音を作っていく意識で数十年やってきた者としては、
おいおいネジなのかよ…
というのが正直な感想です。

というわけで、ギブソンと付き合うと普通のギターではあり得ない体験をたくさんすることになるでしょう。
私のJ-50が良いギターなのは事実ですが、何故ここまで良いのかは結局謎です。まあここまでくると、良いギブソンというのは偶然のような気がしてきました。

「当たりギブソンのネジは回すな」
ことわざとして後世に残したいですね。

伊藤賢一
https://kenichi-ito.com/

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