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私のお友達(7)林慶文

林慶文(レコーディング・マスタリング・エンジニア)

林慶文さん主宰の「Red Iguana Studio」は、ギター製作家大屋建さんの工房から車で3分ほどのところにあります。
大屋さんと出会ったその日に、林さんとも出会いました。この日から私の人生が変わり、一生が決まったと言っても過言ではありません。


その時期、私はセルフレコーディングに挑戦しようとしていて、機材や方法論などを色々と調べていた最中でした。
それを知った大屋さんが、
「一度本格的なスタジオでの録音をテストしてみるといい」
とアドバイス下さり、林さんと引き合わせてくれたのです。

スタジオに入り、最上クラスの機材群に圧倒されたのも束の間、本当に圧倒されたのは、林さんのエンジニアワークでした。

まずマイクの決め方。
まずマイク1本の状態で色々と録り、次に2本(ステレオ)で録り、距離を決めていく作業をしました。
ソロギターの録音の場合、質の高いギターであるほどマイクは(オンマイクは)ステレオ録りが必須になります。これは良し悪しの問題でなく、それだけギターという楽器のレンジが広いという事実からのセオリーなのだと知りました。
言い換えると1本録りでは、録っただけの段階ではかなりどこかの帯域にフォーカスしたものになる。その後のミックスでかなり詰めの作業が必要となるわけです。

そしてマイクの機種選定も、素晴らしいラインナップから何種類もテストしながら検討できる。マイクだけではありません、プリアンプもエフェクターも様々なパターンをテストしながら、自分の好みの世界観を作り上げていく…こんな面白い事があるのか!自分の中の扉がひとつ、こじ開けられた思いでした。


自前で機材を揃え、自分で経験して積み重ねれば良いではないか?と思うかも知れませんが、私はすぐに悟りました。真のプロフェッショナルと一緒の作業だから、ここまで面白く感じるのだと。

ステレオマイクのセッティングはミリ単位の作業




林さんは作業のひとつひとつを、プレイヤーと共に音楽を作り上げる立場として説明してくれるのです。

「もちろんマイク1本でも悪くはないんだけどさー、ギター自体の広いレンジはなかなか1本じゃカバーしづらいもんでさー、2本立てとくとミックス以降の作業も決まりやすいんだよねー、やっぱ録ってないもんを後から足すのはできないからさー」

少しも威圧的にならず、解説的にもならず、何して遊ぼうか?くらいの響きでこちらに投げかけてくれるのです。
そうしたやり取りを進めながら進むセッションは、とても心地良いものでした。

この時から林さんとのレコーディング人生が始まり、「海流」「かざぐるま」「Tree Of Life」「Another Frame」「Little Letter」などのソロアルバム、Indigo Noteやtri tonicaなど私の関わるユニットのアルバム、その他雑誌の仕事やプライヴェート録音などなど、多くのセッションを重ねてきました。

林さんと共に、自分の「アコースティックギター・サウンド」を作り上げている事を誇りに思います。


そして、セッションのほとんどを大屋建さんにも同行していただき、的確かつ大胆な提案やアドバイスをいただいています。
3人でお昼ご飯を楽しく食べてからブース入りし、音決めをしていく瞬間の高揚感。最も楽しい時間のひとつです。

名付けて「物欲トリオ」

林さんに投げかける言葉はただ一つ。
今後とも末長くお世話になります!

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