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カオルギター Rush Deluxe

中島馨(なかしまかおる)氏の手によるKaoru Acoustic Craft、通称「カオルギター」。

2005年に大屋ギターをメインとするまでは、私の代名詞はカオルギターでした。
マーチンOM-45をモデルとした『Sterling Avalon OM』(2000年製)。私にとっては、ファクトリー製ではない、初めての個人製作のスティール弦ギター。

カオルギターSterlingに出会い、最も驚愕したのは音の立ち上がりの鋭さでした。タッチに敏感に反応し、音楽がリアルになる感覚。開放弦と押弦との差も気にならない。精密な、0コンマ何秒も無いほどの違いが、音色のみならず演奏性の高さにも効いてきます。そこに、マーチンなどのファクトリー製とルシアー製との違いを強く感じたのを覚えています。

その出会いから20年ほど経ちましたが、今回久しぶりにカオルギターと出会ってしまいました。
幻の名器マーク・ホワイトブックを研究したドレッドノート「Rush」のデラックスモデルです。

Rushというモデル自体はもう10年以上前からカオルギターの看板となっていますが、今回色々なタイミングが重なり、改めて対峙する機会を得ることができました。
馨さんはここ近年ジェームス・オルソンの研究もされているらしいと友人から聞き、彼の所有するカオルギター・オルソン・レプリカを弾かせてもらったのが大きなきっかけでした。

左:友人のオルソン・レプリカ  右:Rush Deluxe    どちらもシダー・トップです。



このオルソンレプリカその名も「カオルソン」は本当に素晴らしい楽器でした。本家オルソンの持つ太い朗々とした音像に加え、特筆すべきは抜群のキレ。密度を感じさせる音色は弾き手にどんどん音を引き出すよう促してきます。

ホワイトブックもオルソンも、表面板はスプルースではなくシダー材をよく使用します。

しかし私は今まで、表面板に関してはスプルース「一択」でした。

シダートップの特長は何かというと、立ち上がりの速さとボリューム感のある響き。パンっと立ち上がり、香り立つような豊かな響きがその場を包み込む、そんな良さがあります。反面、遠達性や和音の分離はスプルーストップには及ばない。
私にとってはそこが不満でした。演奏する側の意識としては、常に実音で何かを表現しようとするので、シダーのふわっとした豊かさがややもするとバランスの悪さにも繋がるような感覚を得てしまうのです。


しかし、このRushを弾いてみて、驚きました。

めちゃくちゃ驚いた!


鋭い立ち上がりから豊かに広がる音響はシダーならではですが、問題なのは次の瞬間です。私のイメージするシダートップは、豊かな響きが若干(本当にわずかな時間ですが)実音を「食ってしまう」のですが、それが皆無なのです。豊かなのに少しの濁りも感じずに、むしろ実音の透明感すら感じる。ここまで分離の良いシダートップのギターは初めてでした。思わず唸ってしまいました。

ドレッドノート・ボディ特有の堂々とした鳴りと、この精密な表面板のコントロール。私の直感では、遠達性も今後どんどん発揮されてくると思います。

やばいです。

唸ったところで、今回のnoteはおしまいです。
最後までお読みくださった皆さん、ありがとうございました!

伊藤賢一
https://kenichi-ito.com/


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