第四回 「カッコイイ尊敬できる先輩が沢山いる」

 先日、あるプレゼン大会があった。結果は箸にも棒にもかからなかったものの、8か月間の成果を出し切ってきた。前回言及した体調不良がコ□ナだったせいで、治ってはいたが打ち上げには参加できず、一人打ち上げとして、スーパーの弁当を一気に3つ食べた。若いうちにだけ許される蛮行である。それも含めた日ごろの不摂生のせいか、便秘気味になって吐き気も催し、その弁当の具材がトラウマにもなりかけた。これはつ〇りか?コ□ナ後遺症で想像〇娠!?なんていう冗談を考えていたな。今はすっかり治った。
 さて、今回は最近のチャットでの出来事に邪推してしまったことについて書こう。


(以下の文章に、LINEの送り主も含め、誹謗中傷の意図は一切ありません。後にも書きますがすべて私の邪推です。)

LINEは突然に

 私が所属している大学の、ある事務連絡用LINEグループのことだ。そのチャットで、数週間前にこんな感じのLINEが飛んできた。

新入部員勧誘

 ある運動部の勧誘であった。なぜ今更勧誘するのかはわからない、わからずじまいだったのだが、かなり長文の勧誘であった。コ□ナで暇だった私はそれを読み進めていった。

 するとある一文が目に留まった。

「カッコイイ尊敬できる先輩が沢山いる」

 私のようなひねくれ者にはもう嫌な予感がした。

「ビジュアル最強」、「(イケメン俳優)とも比べられないほどかっこよかった。」、「青春するなら○○部」

・・・。

「頑張っている人はかっこいい」

もう、やめてくれよ。

私のライフが0になったところで、最後に大会で賞状片手に撮った集合写真や、流行りのアニメのコスプレ写真などが投下された。

「陽キャの先輩いっぱいいるよ!」

 そういえば、入学したての部活動説明会でも、ある運動部が「陽キャの先輩いっぱいいるよ!」と勧誘していたことがあった。私はそれを聞いて、余計に気後れしてしまった。

「大切なのは陽キャも陰キャも受け入れる包摂性だろ…」
「極端に明るい場所が苦手な人もいるんですよねー…」
「↑そんな人は勧誘対象外なのか…」

そんなことを心の中でつぶやいていた。

 もちろん、陽キャに包摂性がないといっているわけではない。時々、陽キャを語りながら陰キャを迫害するエセ陽キャもいないことはないが、それが大多数であるというのはルサンチマンが生んだ妄想である。部活動の宣伝をしていた二人も、陰キャを傷つける意図などなく、きっと陰陽に関わらず受け入れる気があったことは確かであろう。

 さらに言えば、私のような活動頻度の低い部活動にばかり入り、だらだらと毎日を過ごしている者と、日頃から運動部で練習に励んでいる者、どちらが偉いかといえば、後者になるだろう。私がここまで吐いてきた呪詛も、彼らへの憧れの裏返しなのかもしれない(だって時々、自分がキラキラ運動部に大型新人として入って青春を謳歌する妄想とかするし…)。

 それがわかっていながら、このひねくれ者は何をぼやいているんだ。その理由はつい数日前までわからなかった。

傍から見れば陰の部活

 私は部活動、サークルは3つ入っている。新聞部と文芸サークルは既に話したが、実はもう一つ入っているのだ。今回は活動実態に深入りするので部の名前は伏せておくが、活動日も、熱心な部員もほとんどない、傍から見れば陰の、地味な文化部である。

 その部活に入ったきっかけは、活動、というかその扱っている対象自体に興味があった。今回はそれをAとしよう。怪しいものでは…、ないよな…(法に触れたり、強めの思想があったりするわけではないのでご安心を)。入学前からA部に興味があったものの、前述した入学したての部活動説明会にA部の姿はなかった。その会とは別に、部活動を一挙に紹介していたホームページがあり、幸いにも、そこにはA部の姿があった。そこに書いてあったメールアドレスに入部希望の旨を送り、A部の先輩が実際に会って活動を説明してくれることになった。

 Aについてより深い話を聞いてみると、Aにより興味が湧いてきた。しかしA部については、コロナで部活動がほとんど行えなくなっていたり、学内の専門家を呼んだAについての講習会が予算の都合上できなくなったり、話を熱心に聞いていると「君ほど熱心な人は初めて見た」、と言われたりで、早速暗雲が立ち込めていた。おまけに「うちのような部活は物で釣るしかないから」などということを自嘲気味に言われ、大学の購買で好きなものを一つ奢ってもらった(お茶おいしかったな)。

 Aに興味を持っている人は私以外にも数人いて、同じ学年で他に2人入部した。しかし嫌な予感が的中したのか、なかなか活動が行われなかった。3人とも、他の部活動を掛け持ちしていたり、勉強、趣味など、やることはあったりしたので、途轍もなく暇にはならなかった。そのためか、顔を合わせれば「活動したいねー」と言いながら、A部の活動がないことが鉄板ネタかのようになっていた。

 そんな状況に業を煮やして、10月末、私は11月中にA部の活動をしたい、という旨を750文字にまとめて、例の先輩に送った。ある友人からは小レポート並だねと突っ込まれながらも、その文章が功を奏したのか、LINEの返信で先輩にも活動をしたい気持ちが残っていることがわかった。

 しかし先輩はご多忙なようで、それ以降音沙汰がないまま11月が終わった。部の友人からは、もう私が主体になるしかない、とまで言われた。諦めのムードが漂っていたその時だった。

「A部今年初の活動日程についてのお知らせです。」

 ついに来た。そこからは割とトントン拍子に事が進んだ。先輩からAに関する教科書をもらい、勉強会の日程が決まった。

悲願の食事会

 待ちに待った勉強会、一年生は3人中2人が参加した。そこでは「物で釣るしかないから」と言っていた姿からは想像できない、Aについて楽しそうに、熱心に語る先輩がいた。ああ、先輩の中にはAに対する情熱も、愛もこんなにあったんだ。その熱意と快活さに触れて、一年生二人も真剣に、楽しく活動していた。「こんな勉強会なのにそんな真剣な活動になるんだ…」そんな自嘲をこぼした先輩の姿も、もはや愛らしかった。

 Aについてさらに興味が湧いた中、続いてAに関する食事会が行われた。一年生二人と、例の先輩と、先輩の同級生2人、男子5人での会。おいしい料理に舌鼓を打ちつつ、いろんな話題で話に花が咲かせていた。愉快な時間はすぐに過ぎ去り、解散の挨拶で、この食事会がコロナで活動ができなかったA部の悲願であったことを知った。

 締めの一丁締めの後も、私はドンキへ向かったあの先輩についていった。特に買うものもなかったが、辻褄合わせの為にジュースを一本買った。買い物の後、帰る方向が同じであったので先輩と一緒に歩いた。黄色のイルミネーションがきれいな夜だった。

 帰り道のこと、先輩は来年度、まだ卒業はしないもののますます忙しくなってしまうらしく、私は来年度の新入生歓迎と、部長代理を託された。先輩から受け継いだこの活動を、もっともっと盛り上げたい。そう思った。

これぞ私の「青春」

 そうか、私はこの「青春」を、否定したくなかったんだ。やっと前述した勧誘に対するモヤモヤの理由が分かった。

 キラキラした部活動、青春ほどかっこよく見えなくても、そこにいる人は確かに何かに情熱を持っていて、彼らなりの「青春」を謳歌している。中学、高校、大学と専ら活動の緩い文化部に入っていた私や、そこの仲間たちは、キラキラとした部活動の部員とはまた違うところで笑い合ったり、真剣に活動したり、悩んだり、それを乗り越えたりしていたのだ。そこにはかっこいいところも、かっこ悪いところも受け入れてくれる「包摂性」が、確かにあった。

 私は例の「頑張っている人はかっこいい」とか、「陽キャの先輩いっぱいいるよ!」とかいった勧誘から邪推して、それらに絶対的な価値を認めてしまうと、自分や仲間たちの過去が否定されるように感じていたんだ。

 やっと腑に落ちた。

そして…

 しかし、このまま終わってしまっていいのか。誰か、キラキラ部活動から、この記事へのコメントを書いてくれよ。陰の部活動の主張だけじゃ、互いに理解し合って真の「包摂性」を実現することはできないからさ。(もちろんそうでない部活動からのコメントも大歓迎だ)。
 いつか、キラキラとした部活動に所属する人と、わかり合える日を願って。

 今回は少し長くなりすぎたな。ここで終わりにしよう。

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