【アーカイブ】日本最初のアイドル、松井須磨子とももクロ~5色のペンライトはいかにして「日本文学盛衰史」に登場したのか 青年団第79回公演「日本文学盛衰史」@吉祥寺シアター(2回目)
日本最初のアイドル、松井須磨子とももクロ~5色のペンライトはいかにして「日本文学盛衰史」に登場したのか
「日本文学盛衰史」は平田オリザ作品としては珍しい4場の構成となっており、明治を代表する4人の文学者(北村透谷、正岡子規、二葉亭四迷、夏目漱石)の葬儀が取り上げられている。
今回の舞台「日本文学盛衰史」では平田オリザいわく全部で80近くの小ネタが散りばめられているということなのだが、その中のひとつでモノノフ(ももクロのファン)をざわつかせているのが登場する文学者たちが5色のペンライトを振る演出である。
映画と舞台の「幕が上がる」や平田自身も行政側に働きかけた埼玉県富士見市での「ももクロ春の一大事2017 in 富士見市」の開催など平田オリザとももクロ陣営には浅からぬ縁があるということもありはするけれど、なんにも理由がなくて突然ここでペンライトが登場したわけではないのである。
実はこのシーンではこの前に島村抱月が登場して、芸術座を旗揚げし、『復活』(トルストイ原作、抱月訳)が大ヒットしたことなどが話題にされる。あからさまに語られることはなくても「復活」でヒロインを演じたのが松井須磨子で、劇中で歌った主題歌『カチューシャの唄(復活唱歌)』(抱月作詞・中山晋平作曲)のレコードも当時2万枚以上を売り上げる大ヒットとなった。
つまり、女優ではあるけれど松井須磨子は今でいえばアイドルといってもいい存在であって、日本のアイドル第1号とでもいってよい人物なのだ。
そういう背景があって劇中で登場人物ら皆によって唱和される「カチューシャの唄」に合わせて、アイドルの象徴ともいえるペンライトが振られるという一連の意味的なつながりがあるのだ。
もっともそれが5色のペンライトであるということからもしかもそのうち緑のペンライトが途中でそっと消されることからしてもただ「アイドル」というだけでなく、ももクロであるということに意味を込めていることも確かで、それはももクロが女優として平田オリザと出会い、元祖アイドルの松井須磨子も女優にして歌手(アイドル)だったからなのであろう。
実はただアイドルというだけなら、最近総選挙で1位となった人が松井だからそちらと関連づけてもおかしくないはずだが、松井須磨子は愛人である島村抱月の後追い自殺をしてしまったスキャンダルがあるから、これはイメージ的にもまずいか。あれ? だったら本当はももクロもだめじゃんか。
平田オリザ自身はアフタートークで「色と配置は考えたが、配役には特段の意味はない」と話しているようであるが、「源氏物語」(紫式部作)を現代語訳した与謝野晶子が紫、宮本百合子らと交友があった野上弥生子が赤、永井荷風がピンクならコメントしにくいだけで意味はたぶんあるんじゃないかと思う。黄色(北原白秋)はよく分からないけれど、高村光太郎=緑は二刀流を捨てたということなんだろうな。劇中で「詩作はやめて、彫塑に専念する」と宣言しているんだけど実際の高村光太郎は最後まで詩作はやめないんだよね。ただの妄想かもしれないがももクロを卒業した有安杏果へのエールだと感じてしまう
7月1日「日本文学盛衰史」に出演中の河村竜也、大竹直をゲストに三鷹SCOOLでレクチャー「セミネール」を開催。同日「日本文学盛衰史」昼公演観劇とのはしごも可能です。予約申し込みお願いします。
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