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夜と雪と情景模型と

それなりに雪が降る土地と馬鹿みたいに雪が降る土地で育ちましたが、冬という季節は大好きです。その中でも雪の夜。音もなく降る雪と、その向こうの景色、全てが薄く青みがかって見える夜が大好きです。

そんな夜と雪の情景をいくつか作ってきました。実を言えば上に書いたような自分の嗜好みたいなものはこう言った模型を作っていくうえで思い出していったような気がします。

これが最初に作った夜と雪の情景です。忠臣蔵討ち入りの夜、吉良上野介邸の表門。

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「元禄十五年十二月 本所堅川一ツ目 吉良上野介邸 表門」

これに関してはそもそもの忠臣蔵というモチーフが夜、そして雪なんですが、これを作ったことで一つシチュエーションの嗜好が開いた感じです。

好きなシチュエーションであるという事に加えて、作りこんだアイテムに雪をかけたときの何とも言えない表現の面白さに魅了されて作ったのがこの第二作目です。雪を降らせるのって作業的に面白いんです。

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「浅草キッド」

昭和の浅草、相棒とともに家路を急ぐ若き日のビートたけし氏。
テーマのシチュエーションとしては冬である必要性はないんですが、とにかく雪を降らせたくてこういう完成形になりました。

そして三作目、というかまだ製作途中の情景がやっぱり夜と雪。これに関しては本当にまず雪と夜というシチュエーションありきでした。

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アメリカのバックヤードスケートリンク。
田舎で滑った野良スケートリンクの思い出がベースになっています。

少し時間が空いたのでこれを進めようと思ったんですが、同じシチュエーションテーマでちょっと作りたいものが出てきました。

それは「落語」。

落語をテーマにして一度情景を作りたかったんですが、落語でも特に好きなのが冬の噺なんです。
そこに絞っても作りたい噺、というかシーンですね。それはもう文七元結の吾妻橋とか二番煎じの番屋とか色々あるんですが、頭に浮かぶシーンとして一番やりたいのが「夢金」です。

夢金のストーリーはこちらでご確認を。

夢金で作りたいのは、雪の夜の隅田川をゆっくり下っていく屋根船とそれを漕ぐ船頭。それだけのシーンですが、光景を模型的に俯瞰で想像すると何とも良いのです。

タールのように真っ黒な川面にわずかな航跡を引きずって浮かぶ屋根船。座敷からは障子越しに光が揺れて、川面と後ろで凍えながら櫓をこぐ船頭がほのかに照らされている。

夢金は割とくだらない噺として紹介されますが、聴くと何か筋の文字面だけではないドロドロとした暗さみたいなものを感じます。特にこのシーンは妙に悪夢的でゾクゾクします、大好きな下りです。

これを1/72~1/80スケールくらいの小品として仕上げたいなと思い、まずはほぼ主役と言える「屋根船」の参考資料として童友社の「屋形船」を組みました。何しろ和船の形状をよく知らないので。

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1/30屋形船。古いキットと侮ってましたが、妙に出来がいい。

夢金に出てくる「屋根船」は日よけ程度の屋根がついた小型船。対するこのキットである「屋形船」は大小さまざまなサイズがあったようですが、基本的には屋根船よりももっと大型の船になります。

ただこの童友社の屋形船、なんだか座敷のサイズが小さい感じなんですね、高さもだいぶ低い。
これはむしろ「屋根船はね、足の方からへえるんですよ」と噺で語られる通り、座敷が非常に低い屋根船に近い感じがします。
また、櫓のサイズから類推すると人物はスケール的に1/24位が妥当な雰囲気が。これってもしかして屋形船ではなく求めていた屋根船なのではないかという疑問がちょっと湧いてきます。

ここでWWIIの戦闘機あたりなら世界の傑作機あたりを買ってくるところですが、和船はそんなに資料が潤沢なわけもなく。こんなものを探して買ってきました。

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1900~1910年の海外製ポストカード。はっきり「YANEBUNE」って書いてありますね。船体に対しての座敷の比率が童友社の屋形船に近い感じに見えます。

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写真と模型を重ねるとかなり近い比率に見えます。人物サイズを確認するとキットサイズに対して1/25スケール位。厳密には分かりませんが、おそらくこのキット、限りなく屋根船に近いものがベースとなっている感じです。なので形状的にはこれをベースとしてサイズダウンして問題なさそうです。

まずは1/80スケールの屋根船をスクラッチしつつ、ベースを考えていきたいと思います。早く屋根船に雪を降らせたいですね。

それでは。

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