ソーシャルディスタンス


最近、ソーシャルディスタンスという言葉ばかり、言われている気がする。
僕は麻生貴史。33歳の社会人だ。近頃、会えていない友達がいる。今日は、その友達とオンライン通話をするつもりだ。
友達の名前は、馬場洋。
小さい頃のことを思い出す。小学校の頃は、近くの公園で5~6人集まって野球などをしたものだ。母親から、300円くらいを渡され、これでアイスや飲み物でも買いなさいと言われていた。
馬場洋とは仲が良く、僕がガリガリ君を食べていると、俺にも食べさせてと、アイスを交換して一緒に食べた。彼はジャイアントコーンが好きだった。
のどが渇いたときは、ガリガリ君の方が美味しいのになあ・・と僕は思っていた。バニラ系のアイスを食べると、かえって疲れる気がしていた。
あの頃は、ソーシャルディスタンスなんて、何も関係なく遊んでいたなあ・・と思う。近くにゲームボーイを持ってきて、ポケモンをして遊んだり、友達との間はとても近かったように思う。
小学校の時を思い出すと、今こういう状況になっているのが不思議でならない。中国のせいにするのも良いのだが、そうしてしまうと話があまり進まない。100年に一度くらいの、未曾有の事態が、今まさに起こっているのだなあと実感する。
そうして、物思いにふけっていると、馬場洋とのオンライン通話の時間が近づいてきた。今日は、金曜日の20:00から通話をするので、たっぷり話せるだろう。
20:00になった。ネット通話の時間だ。パソコンを立ち上げて、ZOOMを開くと、もう馬場洋は待っていた。
「おう、麻生。元気にしてる?」
「馬場、久しぶり。元気にしてたよ。」
「そっか、何よりだ。実は、俺の父ちゃん、心臓の病気で入院してるんだ。」
「そりゃ大変だな。お互い、若くはないし、健康に気をつけなきゃな。」
そんな話をした。まだ会話は盛り上がっていない。
「近頃は、コロナで大変だな。」
「本当だよ。3人で話してるだけで、『密です』なんて言われるんだからな。」
「在宅ワークばかりで、力も入らないよな。」
「正直、少し楽な部分はあるけどな。」
そう言いあって、少し笑った。
「ワクチンが、日本でも受けられるようになってきているな。」
「俺のところはまだまだだよ。医療従事者に最初に受けさせることになっているんだろう。」
「親父や母親にも、早く接種してもらいたいよな。あまり若くはなくなってきているし。」
「本当だよな。」
と話し合う。
本当にワクチンが広まったら、この事態は収まるのだろうか。緊急事態宣言が解かれ、東京や大阪では、また感染が広まっていると聞く。
このような事態が、自分の一生のうちにあることはないと思っていた。
「もう11時だな。」
「そうだな、もう少し話していたいが、今日はやめにするか。」
「そうだな、また近々電話するよ。」
そう言い合って、電話を切ることにした。
本当に、このコロナは収まるのだろうか。2人の会話も、ちょっと真面目な話になってしまった。
今度話すときは、もっと軽い話題にしたいなと思う僕であった。

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