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芝居を見るのもいいけれど、戯曲も読みたい。

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3篇目 『砧』世阿弥

 春秋座恒例の「能と狂言」の会にて、世阿弥の『砧』を観てきた。お能は年に1,2回ぽつぽつ観てきただけなので、ずぶの素人の感想であるが、一考を投じてみよう。  物語の舞台は秋、訴訟のため都に上がってもうすぐ三年になる夫を、ひとり待ち続けている女がいる。その女の元に、夫が京から遣わした侍女の夕霧がやって来て、夫はこの暮れには帰る、と告げる。その言葉に喜びつつも夫への恨めしさばかりが募る女は、投獄された夫のために妻が砧をうつと、その音が遠く離れた夫の耳にまで届いたという中国の故事

    • 2篇目 『子午線の祀り』木下順二

      知盛  われらたまゆらの人間が、永遠なるものと思いを交わしてまぐあいを遂げ得る、それが唯一の時なのだな、影身よ。  ジョージ・スタイナーの『悲劇の死』冒頭における宣言から、テリー・イーグルトンの近著『Tragedy』に至るまで、西洋の演劇論者の見方では、厳密な意味での悲劇とは専ら西洋演劇の専売特許であるというのが相場らしい。西洋における悲劇とは、人間を凌駕する絶対的な運命に英雄的人物が果敢に立ち向かい、そして敗北するという構造によって定義されるのであり、東洋の演劇や文学は含

      • 1篇目 『エヴリマン』作者不明

        このnoteのはじめを飾るのに一番相応しい戯曲というのがあるのかはわからないが、まずは喜志哲雄先生の『英米演劇入門』から、その最初の戯曲を選んだ。 『エヴリマン』は、イギリスでは15世紀中頃に登場した道徳劇と呼ばれるジャンルの代表的な作品である。中世イギリスの演劇としては、13世紀頃から既に奇跡劇が存在していたが、聖書の出来事を下敷きにした奇跡劇に対して、道徳劇はより創作物語としての性格も強く、シェイクスピア戯曲を含むエリザベス朝演劇の重要な源流とされる。なお『エヴリマン』

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