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お前との約束は守るから


(キャスト紹介)
。佐久間 涼          喧嘩ばかりしてる不良
。木島 聡             涼に興味を持つ転校生
。小林 英治          涼を目の敵にしてる担任
。佐久間 洋子       涼の母親
。木島 京子          聡の母親

(涼)N
俺は佐久間 涼 高校生だ、、つっても学校には
ほとんど顔出さねーし、たまに行けばセンコーに嫌味言われて、センコーの机蹴っとばして教室を飛び出すのが俺のいつものパターンだ。
いつもと同じって分かってるが、お袋が泣いて頼むから仕方なく今日も教室に顔出す訳だが、、
(小林)
これはこれは〜、見慣れないお顔ですが、教室をお間違えではないですか? (笑)
(涼)N
教室の中にセンコーと同級生の大爆笑の声が響き渡る、、コイツらは皆で俺を馬鹿にすれば、またいつものように腹を立てて教室を出て行くのを待ってるんだろう、
コイツらの思うように動くのも胸くそ悪いと思い
黙って自分の机に向かった、
俺の机は窓際の1番後ろだが、そこに俺の机はなかった、、
ふと窓の外を見ると机と椅子が転がっていた
無言で窓の外に出て机と椅子を教室に戻し座った
その日は耳に粘土を詰め、居眠りをして何とか過ごしチラッと腕時計を見て、下校時間を確認し教室を出る、
(小林)
お大臣様のお帰りでーす!
今日もベンツですか? 羨ましいーねー(笑)
(涼)N
いい大人が子供イジって楽しいのかね?
喧嘩1つ出来ねー奴は口だけは達者だからな!
、、腹減ったー、何か食って帰るか
俺はハンバーガー屋に向かい店に入ろうとした時だった、、
(不良)
よ〜お、お前! 俺達にハンバーガー奢ってくれよ!
(涼)
ヤダね、オメーらに奢る金なんかねーよっ
その辺の残飯でも食ってろよ!
(不良)
何だと? 生意気な口ききやがって!
(涼)
お? やんのか、来いよ相手になってやる、こちとらイライラしてんだっ、いいーうっぷん晴らしが出来そうだ(笑)
(涼)N
ハンバーガー屋の前にあったゴミ箱を奴らに投げつけ、1人の襟元を掴み頭突きをかまし、もう1人の腹に足蹴を食らわし、3人目の顔を壁に打ち付けてやった、
俺は日頃のイライラを喧嘩する事で発散していた
気が付けば俺の拳は自分の血だか、相手の血だか分かんねーくらい真っ赤に染まり、それを気にする事もなくハンバーガーを3個買って食べ歩きながら家に帰った。
(洋子)
涼、、お帰り ご飯は?
(涼)
今ハンバーガー食ったからいらねー
(洋子)
喧嘩、、したの? 他に怪我は?
(涼)N
お袋は学校に行かなくても、喧嘩をしても多くを聞いてはこない、
喧嘩してきたと分かれば、そっと救急箱を俺の部屋の前に置いて自分の部屋に戻っていく、
3ヶ月前、喧嘩して帰ってきた時
「涼、、もう喧嘩しないで、真面目に学校行ってくれない?」ってしつこく言われた事に俺は腹を立て、その辺の物を手当り次第に投げつけ、足の踏み場もない程家の中をめちゃくちゃにした、、
俺はすぐに自分の部屋に入りヘッドホンをつけ、
爆音で音楽を聴いていた、
数時間後に喉が乾いて水を飲もうと台所に向かった、そこには必死に片付けをするお袋の姿があった
割れた花瓶の破片を拾いながらお袋が泣いていた
俺はその日から家で暴れなくなった、、
救急箱からカットバンを5〜6枚取り、救急箱をお袋の部屋に持っていった、
(涼)
お袋、、救急箱ここに置いとくぞ
(洋子)
う、うん、涼、ありがとう おやすみ
(涼)
ああ〜
(涼)N
素っ気ない返事をしてそのまま部屋に戻り眠った。

翌日、いつものようにまーた机でも捨てられてんのかと考えながら教室に向かった、
その日は何故か教室がザワついていた、このクラスに転校生が来るらしい、俺には全く関係ねーし
興味もない。
始業のベルが鳴り前のドアがガラっと開き、センコーとその後に大人しそうな、小柄なヤローが入ってきた、 学ランのボタンを第一ボタンまでしっかり止め、丸メガネをかけ真面目を絵に描いたような奴だった。
(小林)
あ〜! 今日からこのクラスに転校してきた、木島 聡君だ、皆んな仲良く頼むぞー!
え〜と、じゃあ木島の席はー
(聡)
あの、、先生! 席自分で選んでいいですか?
(涼)N
教室がザワつき、センコーもキョトンとした顔で
木島を見てる
(小林)
あ、ああ〜、それはいいが何処に座りたいんだ?
(涼)N
木島はニコっと笑って歩きだした。
(聡)
ごめんね、この席譲ってもらえるかな?
ありがとう
(涼)N
こともあろうに、木島は俺の横に座ってた奴を空いてる席へ移動させ、俺の横の席に座った、
そして俺の方を見て 「おはよう」って言った。
俺は「ああ〜」と素っ気ない返事をして窓の外の方へ顔を背けた。
(小林)
木島ー! そんな奴と喋ると頭悪くなっちゃうぞー、 他の皆んなと話してる方が為になるんだから!
(聡)
、、頭悪くなるか、皆んなと話して為になるかは自分で判断しますので、先生は黙ってて下さい!
自分の生徒にそんな事しか言えない先生の方が
ずっと問題ありだと僕は思いますよ、
(涼)N
俺はびっくりしたが、少し気分が良かった、
いつも嫌味を言って俺を笑いものにしてたセンコーが汗をダラダラと流し、赤面した顔を隠そうと黒板の方を向き、チョークを持つ手が震えてるのが見えた。
周りの奴らも、とんでもねー転校生が来たと感じたのか、誰も木島と目を合わさねーようにし、その日からセンコーをはじめ他の奴らも、俺をイジらなくなった。
(聡)
佐久間君! お昼一緒に食べない?
え? 持ってきてないの? そっか、じゃあこれ
食べてよ、僕パン2個あるから、はいっ!
(涼)
いらねーよ! 俺はそろそろフケるんだっ
どっかで適当に食って帰る。
(聡)
ふふっ、もう遅いよ、僕はね1度相手に出した物は
引っ込めない主義なんだ、 だから、これ食べたらフケる理由なくなるでしょ?
(涼)N
頭にくる程じゃないが、何だか木島に上手く乗せられてるような気がして、その日は下校時間まで残って帰ろうとした時だった、
(聡)
佐久間君! さあ帰ろうよ、 僕〇〇病院に行くんだけど、道分かんないから教えてよ!
(涼)
あ? 何で俺がそんな事!
(聡)
お昼のパンの貸し、病院への案内でチャラってのはどう?
(涼)
あれは、お前が勝手に、、
(聡)
いいのいいの! はい、レッツゴー!
(涼)N
初日にも関わらず、木島と話してるとどうも調子が狂う、、だが、不思議と怒る気にもならない。
(涼)
ほら、あれが〇〇病院だ! もう1人で行けるだろ?
(聡)
佐久間君ありがとう、助かったー
あっ! 改めてヨロシクね、明日また学校でね!
(涼)N
手を振りながら病院へ向かう木島を見て、俺は思わず笑みがこぼれた、、
その時俺はふと思った、、この俺に笑って手を振る奴は木島が初めてだった、とても不思議な気持ちになった。
翌日もまた次の日も木島は俺と昼食を食い、教室移動も一緒にし、気が付けば下校時間になり俺は途中でフケる事がなくなっていった。
そんな学校生活が3ヶ月続いたある日の朝、俺はいつものように学校へ行き、自分の席に座り始業ベルが鳴るのを待っていた、、 が、
いつまで経っても木島がやって来ない、その日は
「木島、風邪でも引いたのか?」と思いながら過ごし帰った。
木島が学校に来なくなり一週間、流石な気になった俺はセンコーに木島の家を教えてもらい訪ねて行った。
木島の家の前で俺は、乱れた学ランを整えチャイムを鳴らした、 中から木島のお袋さんが出て来て
俺の顔を見てニッコリと笑ってこう言った。
(京子)
佐久間君でしょ? 来てくれてありがとう!
心配かけてごめんなさいね、、聡から話をいつも聞いていたから、すぐ分かったわ、、
仲良くしてくれて本当にありがとう。
(涼)N
その後、家の中で詳しく話をしてもらい、木島は体調を崩し入院してるとの事だった、
木島が俺に会いたがってると聞いて、翌日お見舞いに行く事にした。

(聡)
やあ! 佐久間君、来てくれたの?
、、ごめんね 心配かけちゃったね
(涼)
まあ、、急にお前が来なくなって心配って言うか
気になってさ、まさか入院してるなんて思わなかったからさ!
(聡)
嬉しいよ、佐久間君の顔見たら元気出てきたよ、
早く治してまた一緒にお昼食べたいよ。
(涼)N
そう言って笑う木島の身体には沢山のチューブが繋がれ、目を背けたくなるような痛々しい姿だった、、 目頭が熱くなるのを必死に堪え、木島の話に耳を傾けた。
(聡)
ねえ、佐久間君、前から思ってたんだけど、
佐久間君の事、涼って呼んでもいいかな?
ずっとそう呼びたかったんだー。
(涼)
ハハッ! いいよっ、じゃあ俺は聡って呼ぶぞ!
(涼)N
俺は嬉しかった、俺が誰かに本当の友達として認められた! そんな気がして、聡も今までに見た事もない顔で笑った。
(聡)
ねえ、涼! 僕1日でも早く学校に戻れるように
頑張るから、それで、、これは僕の勝手なお願いなんだけど、涼に1つお願いがあるんだ、、
(涼)
何だ? 何でも言ってみろよ!
(聡)
う、うん、、あのね、 僕が戻るまで涼、ちゃんと毎日学校に行って、皆んなや先生に何言われても
喧嘩しないで欲しくて、、ダメかな?
(涼)
ダメ、、じゃないけど、正直難しいかも、
俺すぐ頭にきて教室飛び出して、暴れるし、、
んー、でも聡のお願いだったら俺やるよ!
聡も頑張るんだから、俺だけ何も出来ないんじゃ
格好悪いしなっ!
男同士の約束だ! 一緒に頑張ろうなっ!
(涼)N
それから3ヶ月が経ち、俺は聡との約束を守って
毎日学校へ行きセンコーの嫌味も聞き流し、ただの
1度も喧嘩をしなかった。
そして今日、聡が学校に戻ってくる、椅子に座ってるが貧乏ゆすりが止まらない、始業ベルが鳴る5分前に教室の後ろのドアがガラっと開き、そっちを
向くとそこには少し顔がふっくらとした聡が立っていた。
俺は聡に駆け寄り周りの事など気にもせず、聡に抱きついた!
教室に響き渡る大声で 「バンザーイ!バンザーイ!」と叫んだ!

聡が戻って来てからはまたいつもの、2人の楽しい学校生活に戻り、2人は胸を張って卒業式を迎えた。

俺と聡は共に地元で就職し、別々の会社で働いているが、時間を見つけては一緒に飯を食いに行ったりカラオケに行ったりと、楽しい日々を送っている。

俺は聡に助けられた、聡との約束がなかったら
俺は今どうなっていたかと、ゾッとする。

聡、、お前は最高の相棒だよ
これからも、ヨロシクなっ!

END


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