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『去る英雄に贐を』カタールW杯 決勝トーナメント フランス×ポーランド 観戦記

 おはこんばんちは、silver javelinです。本アーカイブ化企画、決勝トーナメントにも参加させて頂いております。抽選の結果、私はフランスの担当執筆者(?)と相成りました。勝てば勝つだけ書く記事が増えるシステムです。レ・ブルーはどこまで上り詰めるのでしょうか。

スタメン確認と試合前雑感


両チームのラインナップ

 フランスはグループステージを1試合残して突破し、3試合目では大幅に選手を入れ替えました。上記のメンバーが今大会の主力と言え、トーナメントでは戻してきました。注目は中盤として躍動するグリーズマン。本来は攻撃的な素養を備える選手ですが、豊富な運動量と正確なキックで中盤としても大きな貢献を続けています。
 相対するポーランドは14人程度のグループでスタメンをやり繰りしているイメージでしょうか。試合毎の大胆な入れ替えは行いません。大会を通じた課題として挙げられるのが、いかにしてレヴァンドフスキまでボールを届けるのかという点です。手堅い試合運びが出来る組織力はあるのですが、前進の手段には乏しいのが苦しい現状でしょうか。守護神スチェスニーの仕事は多くなりそうです。

前半

 フランスは4-2-3-1でポーランドは4-5-1で試合に入りました。フランスが保持して探る中、ポとーランドが1発目のプレスで相手の最終ラインを慌てさせます。これまでハイプレスはあまり志していなかったポーランドによる猫騙しとでも言えるでしょうか。当然プレスを続けることは無理筋であったポーランドは、10分頃にはブロック守備を徹底するように。フランスが支配を継続する中でノックするドアを探していました。攻撃時の大外は両WGに任せ、SBのテオとクンデは組み立てのサポートに重きをおいて進めていました。中央を堅く閉ざすポーランドvs大外から問い掛けるフランスという構図が固まりつつある序盤戦でした。
 ここで、ポーランドの攻撃に目を移しましょう。フランスは控えめなプレスで構える守備を優先しており、ポーランドはジエリンスキやクリホヴィアクが上手くライン間でボールを引き取れば有効な前進もできていました。それと同時にポーランドSBが浮いている場面が多くあり、そこを活用すればより手数が増える雰囲気だったかと思います。25分頃になるとポーランドが上手くフランスと組めたという印象になり、試合は一旦の落ち着きを見せました。
 そうして迎えた29分、この試合最初の決定機がフランスに訪れました。ポーランド側のバックパスミスを奪ったグリーズマンからショートカウンターが発動、右サイドを駆け上がるデンベレに渡ったところから鋭いグラウンダーのクロスがポーランドを襲います。ファーサイドで待ち構えていたジルーが飛び込むも、これは惜しくも届かず。ここまでジリジリとした30分を過ごした両チームでしたが、試合が動き始めます。
 38分にはポーランドに最大のチャンス。ロリスのパスが乱れたところから流れを失ったフランスは、右SBのクンデが抜かれてサイドからマイナスのクロスを入れられます。ドフリーから至近距離でシュートを浴びますが、これは発端となったロリスがナイスセーブ。ポーランドの守備は悪くなかったため、ここでスコアが動いていたら結果に大きく影響していた可能性があります。
 そんなポーランド側からの嘆きも聞こえてきそうな44分、フランスが先制します。左のハーフスペースでグリーズマンが絡み、ポーランドの最終ラインが乱れます。そのギャップから一瞬の駆け引きで抜け出したのはジルー。巧みに腰を回転させ、ダイレクトでファーサイドに蹴り込みました。
 フランスとしてはポーランドの粘りと守備時の曖昧さでやや物足りない内容の前半だっただけに、リードしての折り返しは大きかったと思います。ピンチは上記のシーンくらいでしたし、点さえ入れば問題ない感触だったのではないでしょうか。対するポーランドもタイスコアでの折り返しが見えていただけに、この失点は悔やまれるでしょう。耐えて耐えてワンチャンスをモノにするしかない展開は想定していたはずで、そこを覆されたところからどう反撃に出るのでしょうか。

後半

 両チーム共に、後半開始時点の選手交代は行いませんでした。全体的に前半から陸続きの内容で試合に入り、特にビハインドのポーランドが何かを仕掛けるような雰囲気は無かったです。個人的には前半の立ち上がりに見せたようなハイプレスを再試行しても面白かったように感じていたのですが、そのまま時間が経過します。展開が変わらなかった要因として、双方にとって一定の手応えがある内容だったという理由が考えられます。ポーランドがじっくりと反撃のタイミングを窺うのが1点差でも変わらないのと、リードしているフランスがリスクテイクをする必要がないのと。この合わせ技で膠着が生まれたのではないでしょうか。
 とはいえこのままでは敗退するポーランド、64分にFWミリクの投入で試合の活性化を図ります。全くと言っていいほど良い形でボールに絡めていなかったレヴァンドフスキがサイドに流れまくっていたので(気持ちは分かる)、4-4-2への移行でターゲットを増やす狙いは理に適っていたように思えました。
 しかし現実とは非情なもので、ポーランドが流れを握るどころか待っていたのはエンバペの劇場でした。

リンクにある通り、理不尽極まりない追加点が74分に決まりました。同数カウンターによる有利な場面でしたが、それでもあの場面でニアサイドを堂々と撃ち抜ける豪胆さには脱帽するしかありません。試合終了間際の93分にも2点目を挙げ、この試合の主役に躍り出ました。
 ・・・と本来であればここでレポートが終わる試合でしたが、10分近くあった追加タイムの最終版でポーランドがPKを得ました。蹴るのはもちろん大エースのレヴァンドフスキ。1度は防がれたものの、ロリスがラインから離れていたため蹴り直しに。今度は決めきったレヴァンドフスキはこれで今大会2ゴール目。ほろ苦くも爽やかな表情で大会を去りました。

試合後雑感

 フランスの完勝でした。最後までWGの切れ味が衰えず、サイドからの脅威とカウンターの破壊力は健在でした。ポーランドは泥仕合に持ち込む以外に勝機が見当たらず、自分たちが手綱を握って試合を動かせた場面に乏しかった点が惜しまれます。多くの怪我人を抱えながらも順当に勝ち進んできたフランスですが、ベスト8にて相対するは積年のライバル国家であるイングランドです。共に優勝候補と目されるビッグマッチ、フランスが抱えているプレス強度面の不安がどれだけ改善するのか。それともこのまま豊富なタレントで押し切ってしまうのか。結末から目が離せません。

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