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『王国の流儀』カタールW杯グループG ブラジル×セルビア 観戦記

 皆様、こんにちは。初めましての方は初めまして。silver_javelinと申します。皆からは『じゃべ』と呼ばれています。本アーカイブ化企画には、欧州最終予選に引き続きお呼ばれしました。至極光栄です。拙いレビューになりますが、皆様が紡ぐ偉大な集合知の一端を担えればと存じます。

試合前の雑感とスタメン確認

 私は先述したアーカイブ化計画にて、セルビアが属していたグループAを担当しました。曲がりなりにも見守ってきた彼らがブラジル相手に何を成せるのか、そんな親心から当カードを選びました。

そして、スタメンがこちらになります。
 ブラジルはCFにリシャルリソンを起用しパケタが中盤の深い位置に入る、攻撃的なメンバーを組みました。クラブのリーグ戦では不完全燃焼が続くも、代表での信頼は厚いリシャルリソン。彼の働きに注目したいところ。
 対するセルビアですが、最終予選と比較した時に目立つのがWBの人選でしょうか。予選で多くの時間を得ていた選手が外れました。特に驚きなのが、高い推進力とキック精度でチームを牽引してきたコスティッチの不在。ジョーカーとしての策略なのか、はたまた予期せぬアクシデントか。その起用法に注目です。

前半

 両チーム共に戦前の予想通りの形で始まった試合、セルビアは5-3-2の形で前から積極的に守る入り。ただ、前から延々と追い続けるわけではなく、ある程度外されると撤退して構える両天秤な守備構造でした。圧倒的なブラジルの攻撃力は当然織り込んでの対応でしょう。
 セルビアのビルドアップは独特で、3CBの両側(通称HV)が大きく開く形を取ります。広くなった最終ラインには、中盤からグデリやルキッチが下がって顔を出して前進を図ります。あえて表記するなら4-1-5のような陣形で、ピッチを幅広く利用したい意図が垣間見えました。大胆な可変フォーメーションには自らバランスを崩すリスクも含んでいるため、セルビアとしては不要なトランジションをどこまで減らせるのかもカギになるかもしれません。
 対するブラジルは、保持率を高め強力なサイドアタッカーを起点に攻撃を探る立ち上がりになりました。セルビアの安定した守備ブロックを前にしてもなお、アウトサイドを独力で切り開ける圧倒的な『個』の力が輝いていました。特に目立っていたのが左WGのヴィニシウスで、徐々にセルビアを侵食しゴールに迫りました。
 こういった具合に攻めるブラジルと固めるセルビアという構図で推移した前半は、スコアレスで折り返すことになります。ブラジルは一瞬も気を抜けない守備を相手に強要し、じわじわと攻め入る時間を増やせていました。このままで問題ないでしょう。対するセルビアですが、当初描いていたであろう幅広い攻撃がイマイチ機能しませんでした。高い位置までWBを押し上げる配置上の仕組みはありましたが、サイドチェンジのスピード感が不足していてブラジルの対応が間に合っていた印象です。ラフィーニャがきちんと戻っていたことも要因だったでしょうか。
 また、個人にフォーカスすると最前線に陣取るミトロヴィッチの状態が心配でした。直近のリーグ戦でも負傷欠場が続いていた大黒柱ですが、従来の存在感は発揮できずにいました。意外と守備貢献やフリーランニングも怠らない選手なのですが、この試合はどうにも覇気が薄かったです。

後半

 両チーム共に選手交代はなく、前半同様の形で後半が始まりました。立ち上がり、1つ目のプレスでいきなりブラジルがチャンスを得ます。明らかにギアを上げた雰囲気のあるブラジルが、ここから一大攻勢に出ます。セルビアはギリギリで高さと強さでボールを掻き出しますが、脱出手段に乏しく無限に押し込まれる時間帯が続きます。セカンドボールの回収を大事にしたいところでしたが、中盤の出足でもブラジルに後れを取ってしまいました。
 そして迎えた63分、問題解決の糸口が見えないままブラジルに先制を許します。左から仕掛けるネイマールとヴィニシウスがずっと止まらず、サイドの深い位置からゴール前のリシャルリソンがワンタッチで沈めました。
 攻め手に欠けるセルビアにとって、これは重い1点となりました。セルビアはセットプレーに全力を注ぎたい展開になりましたが、結果から言うと試行回数を十分に稼ぐことは叶わず。73分には同じく左サイドを破られ、エリア内に生じたエアポケットで輝いたのはリシャルリソン。大会ナンバーワンゴールにもなり得るスーパーなシュートを叩き込み、完全にセルビアの心をへし折りました。試合はこのまま2-0で決着。ブラジルは最後まで攻め手を緩めず、優勝候補の一翼としての実力を如何なく発揮しました。

試合後記

 ソリッドな組織力と前線の個性で最終予選を勝ち抜いたセルビアでしたが、王国が刻むリズムの前に完全敗北を喫することとなりました。時間経過と共に中盤3センターのカバーが間に合わなくなり、ブラジル攻撃陣の進入に対して無力感を露呈。ここで後手を踏むことでWGへの対応が『出てから』になってしまい、それで止められる程ブラジルは甘いレベルではありませんでした。こうして記事をしたためていると、どうしても予選で見ていたよしみでセルビアに肩入れしてしまいます。しかし、ブラジルが披露したクオリティには脱帽しかありません。個人的には事前の優勝候補に挙げたカナリア軍団、この勢いで頂点まで上り詰めるかもしれません。

Pick Up Players
ストラヒニャ・パヴロヴィッチ(21)CB


 ブラジルはもうみんな凄くて有名な選手(ボキャ貧)ばかりなので、あえて敗れたセルビアからの選出となります。パヴロヴィッチは3CBの左として先発し、DFとしての強度と果敢な持ち上がりを兼備していました。所属クラブはオーストリアのザルツブルクということで、将来的なステップアップも期待される才能でしょう。

試合結果

ブラジル 2-0 セルビア
63' 73' リシャルリソン

観戦記事は以上となります。戦術的なエッセンスは控えめですが、両チームの現状が伝われば幸いです。ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございました。普段はせこさん達と喋りながら、プレミアリーグを中心に試合を見ています。よろしければ御贔屓ください。それではまたどこかでお会いしましょう。Have a nice World Cup !!!

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