見出し画像

"普通"の"しあわせ" #怪物

監督:是枝裕和
脚本:坂元裕二
音楽:坂本龍一

🌿ネタバレあり感想🌿

前置き

正直、映画館で観るか迷っていた。

坂元裕二さんの脚本だいすきだけど、是枝監督の
作品は自分の中で敷居が高くて、毎回、映画館で
みるかどうか謎の葛藤がある。

カンヌのこととかいろいろ見てて、これはもう
やっぱり今行くしかない………となった。

観終わったあとの、この何とも言えない哀しさを
自分なりに噛み砕いて咀嚼するために、数ヶ月間
更新してなかったnoteを久々に開いた……

まだあんまり飲み込めてないから、
思いついたことから書いて行こうと思う…!
お付き合い頂ける物好きな方がいらっしゃったら
駄文どうぞご覧下さい。の気持ちです。

怪物とはだれだったのか

真実と事実

それぞれの視点から同じ時系列が繰り返されて
少しずつ補完されながら時間が流れていく。

母、堀先生、みなと、校長先生…

以前他作品の中のセリフで、
「真実は人の捉え方によって変わる、だから
真実は人の数だけあるけれどそのことが起こった
という事実はひとつしかない」というのがあって
この言葉はとてもすきで覚えているんだけど、
まさにそんな感じだ………と思った。

主観が存在する以上、そこからその人がみたものが
その人の真実になる。

大事な息子のために学校に通う母も
モンスターペアレントになるし、
真摯に児童と向き合おうとした先生も
新聞に載る問題教師になる  

自分は普通の幸せを手に入れることが出来ないと
いったひとりの子供の前で、
「誰もが手に入れられないものは幸せじゃない」
と返した校長先生は、
マニュアルを死んだ目で読む組織の長ではなく
紛れもなく一人の人間と対等に向き合う、先に生まれて長く生きている"先生"だった


頭がおかしくなったんじゃないかと思われた夜のトンネルで叫んでいる「怪物だーれだ!」
泥水の入った水筒、教室で暴れた理由、息子の部屋にあった奇妙なカードたち、作文の鑑文字、火傷の跡。


様々な視点でそれぞれの真実が紡がれていって
そして回収されるタイトル。
誰もが"怪物"たりえる。

それぞれの視点で語られて初めて結びつく点と点それから出来上がった物語が重くて、
エンドロールで思わず深い深呼吸……

個人的に、こういう感じのやつで作中で1番、
「ぉぉ…」てなったのは、
校長先生がスーパーで走り回る子供に
足を引っ掛けて転ばせたところ

母視点でみたときは、やっぱりあの人は……と
なったけど、終わってから改めて考えると、
走り回っている子供を誰も注意しなかったし
親も追いつけてなかったから、
子供を止めて親を追いつかせる意味で
足を出したんじゃ……?とか。
解釈厨だから深読みなのかもわからんけど、
ここにも解釈の余地が…!と思ったり。

普通のしあわせ

「白線からはみ出したら地獄だよ」
なんてことないセリフだったはずなのに、
観終わったあとに聞くと、頭を抱えてしまう。

普通に結婚して家庭を持つまでは頑張るよ、
の後に「僕はお父さんみたいにはなれない」が
返答されたり
好きな子がいる、の後に「普通に幸せになれないから誰にも言えない」が続いたり

「白線からはみ出したら地獄だよ」
「普通からはみ出したらしあわせになれない」

ここが対になってる?!?と思って震えた…

世界観と描写

是枝監督と坂元脚本、めちゃくちゃ噛み合っているな………………と思った。観てる方が苦しくなるくらい。

今考えると、"遊び"が一切無くないか……?!
遊びがなくても120分画面から目を離させない
圧倒的自信…拍手

「大学どこ?」て一発目から聞くお父さんとか、
めちゃくちゃ良い味出してる……

面談中に飴を口に入れるのも、上からも目の前の親からも児童からも圧された彼の「適当に力抜いてやりなよ」て言われた彼女の言葉を思い出してなんとか耐えていたのかもしれない。

堀先生が屋上に立ったときに聞こえる楽器の音は
"誰にも言えない秘密"が力いっぱい乗った音
その中には、堀先生に嘘をついて悪者にしてしまったことへの罪悪感もきっと入ってる。

小学生の解像度も高すぎる……………………
小学生があまりにも小学生すぎてしんどかった。

閉鎖的な学校という空間を抜け出して、秘密基地という2人だけの世界で、生まれ変わる準備をするふたり

ちょっとずつ縮まる距離感とか、変わってく空気感とか気持ちとか、秘密の共有とか。
繊細すぎてこっちが苦しくなる………

ここで、作品のサブタイトルの、作中での
「怪物 だーれだ」が回収される
だれも予想出来んかったやろこれは……

性の多様性が叫ばれるこの時代で、題材として
扱う作品は色々出てきているけれど、
この作品はそれを「舞台装置」として特別に扱っている感じがしないところが、すごいなって

(不快に思われる方がいたら、わたしの語彙力ないせいで言葉選びが間違っていますごめんなさい)

彼らは、秘密基地から出て、陽が降り注ぐ明るい新世界にたどり着いた。
新しい世界でもふたり一緒に辿り着けたことが観ているこちら側への救いなのかなと。

ここで流れ始めるエンドロール、深い深呼吸…

是枝作品はどれも役者さんがほんとすごいなと
毎回思うけれど、今回もすごかった…

個人的に1番うわ……!てなったのは
瑛太さんの背中の演技
何回も、背中からの画角があったけど、
すごかったな………

終わりに

なんか、まだ頭の中が整理できてないから
うまく言語化出来てないけど思ったことが
いっぱいあるから、気が向いたら
また追加で描いてこうかなと

みなとがよりの家に入ったとき、よりが
お風呂でダウンしてたシーンの描写の意味が
どういう状況なのか理解が及ばなかったから
他の方の感想も覗いてみようかなとか。


変わらず月2以上は映画館に通ってるのに、
1年ほど感想noteを更新していなかった人間が
これは文字に言語化したい!と思うくらいには
すごく力のある作品だったなと…

制作に関わった全ての方に感謝

2023.06.02

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?